ニュースレター

2003年09月01日

 

日本企業の環境への取り組み

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JFS ニュースレター No.12 (2003年8月号)

環境省は91年から毎年「環境にやさしい企業行動調査」を実施しています。8月8日に、2002年度の結果が発表されました。 
http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=4277

今回は、この結果から、日本企業の環境への取り組みや意識、今後の方向をお伝えしたいと思います。

この調査では、上場企業2,655社、従業員500人以上の非上場企業3,735社にアンケートを送付し、46.4%にあたる2,967社から有効回答がありました。

環境への取り組みと企業活動については、「社会貢献である」(40.3%)というとらえ方が多いですが、「業績を左右する重要な要素のひとつ」(29.9%)や「企業の最も重要な戦略のひとつとして位置づけている」(22.0%)という積極的にとらえている企業も多く、その割合は、過去に比べて増えてきています。

環境に関する考え方については、環境に関する具体的な目標を設定していると回答した企業が、平成13年度調査の59.2%から62.7%と3.5ポイント増加し、目標を達成するための具体的な行動計画を策定している企業数も平成13年度調査の76.0%から81.7%へ5.7ポイントと着実に増加しています。

環境保全活動については、約98%の企業が取り組んでおり、多いのは、「省エネ」(86.8%)、「オフィス廃棄物の削減」(83.6%)、「印刷等の削減」(83.5%)、「産業廃棄物の削減」(72.5%)、「環境管理体制の整備」(66.0%)、「グリーン購入推進」(62.9%)など。

社内に環境問題に取り組む部署や専任の担当者を置いているところは49.7%。社員に対する環境教育は「定期的に実施」(40.1%)、「不定期に実施」(31.9%)をあわせると、7割以上の企業で実施しています。

環境格付けについては、「環境格付けによって新たな企業ブランドが確立しうるので必要」という回答が25.7%、「諸外国では社会的責任投資の実施に伴い環境や社会面からの企業選別が実施されており日本でも必要」との回答が36.9%となっており、関心の高さがうかがえます。

「地域社会の一員として、事業所の立地地域で環境に関する社会貢献活動をおこなっているか」には、58.7%「行っている」と回答。活動として多いのは、「清掃活動」(80.7%)、「施設見学の受け入れ」(40.6%)、「工場周辺の緑化」(34.8%)などです。連携先は「行政」(54.4%)、「他企業」(41.6%)などが多く、「市民団体」と答えたのは、上場企業40.8%、非上場企業29.3%と差が出ています。

ISO14001については、取得済みまたは取得予定・準備中の企業は、62.5%。取得済み企業にその効果を聞くと、「環境への意識の向上」(86.5%)、「環境負荷低減」(78.8%)、「コストの削減」(60.7%)などが多く挙げられています。

「子会社(出資比率50%超)に対し、自社の環境方針と合致するような環境への取り組みを指導・要請しているか」に対しては、「行っている」(29.5%)、「主要な子会社のみ」(10.1%)と、まだ行っていない企業が多く、今後の取り組みの広がりが期待されます。

「請負業者や納入業者の選定にあたって、環境に配慮した事業活動をおこなっているかどうかを考慮しているか」には、「ISO14001の認証取得を条件に選定している」が6.5%、「基準はないが考慮している」が48.8%と、半数以上の企業が取引先の選定の際に環境側面を考慮しています。また、国外の取引先については、その数字は32.1%です。

グリーン購入については、「ガイドラインや購入リストを作成して取引先を選定している」が7.1%、「ガイドラインやリストはないが考慮している」が18.8%。さらに「考慮する予定」が21.5%と、企業でもグリーン購入の動きが進展していることがわかります。

環境に関する情報の公開については、「一般向けに情報を公開している」企業は平成13年度の31.3%から35.9%へと4.6ポイント増加しています。公開情報の内容は、「環境経営方針」(86.4%)、「取り組み状況」(60.4%)、「環境目標」(57.7%)などに対し、「廃棄物の発生量」(51.6%)、「CO2排出量(39.3%)、「事業活動に伴う環境負荷」(30.7%)、「化学物質の使用量」(24.4%)などは低めで、今後実際のパフォーマンスに関するいっそうの情報公開が望まれます。

環境報告書を作成している企業数は平成14年度には作成公表している企業が21.9%、650社となっています。さらに、251社が来年度作成予定としており、今後の増加も見込まれます。 また、7割近い企業がホームページで情報提供をしています。

環境・社会・経済のいわゆる「トリプルボトムライン」を網羅した持続可能性報告書を「作成している」企業は、3.1%、「可能な範囲で記載」は25.7%、「記載を検討中」が45.7%と、関心と取り組みが広がっていることがわかります。

環境会計については、「導入している」が19.3%、「導入を検討している」が15.5%となっています。

環境ビジネスについては、「既に事業展開をしている」企業が32.3%、「今後事業展開をする予定がある」が5.9%、「今後取り組みたい」が28.0%となっており、関心の高さがうかがえます。

地球温暖化防止対策については、何らかの取り組みを行っている企業が67.7%となっており、平成13年度調査の62.6%から5.1ポイント増加しているなど、企業における地球温暖化対策が進展しつつあることがわかります。

地球温暖化防止のための炭素税の導入については、「わからない」と回答した企業は26.3%でしたが、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合わせると33.6%が賛成しています。

国内排出量取引制度の導入については、「内容が不明なので賛成でも反対でもない」という回答が39.4%と最も高くなっているものの、「内容次第で賛成」と「企業の裁量が認められる場合に賛成」を合わせた割合は39.2%です。

開発途上地域で海外事業展開を行っている企業に、海外での環境配慮について聞いたところ、「特に取り組みを実施していない」が31.6%と約3分の1。取り組んでいる企業の内容としては「技術支援」(37.5%)、「経営方針や環境方針に海外事業展開にあたっての環境配慮を明記」(28.9%)、「事業展開先から環境配慮の状況について報告を求めている」(25.2%)などが多く、「本社が直接調査を実施」(14.3%)、「環境配慮のための手続き、基準等を定めている」(14.3%)などはまだ少ないことがわかります。

また、海外事業展開にあたっての環境配慮の取り組みの公表については、「環境報告書に記載」(14.1%)、「問い合わせに応じて」(12.0%)などにくらべて、「公表していない」(66.8%)が多いです。

全般的に、企業の環境意識および取り組みが広がっていることがわかります。取り組みのための組織の強化や情報開示などにも力を入れています。今後はそうしたフレームワークを活かして、実際の環境パフォーマンスの改善でより成果が出ることが望まれます。またビジネスのグローバル化に伴い、取引先や海外事業展開先など、サプライチェーンでの環境負荷削減にどれだけ寄与できるかも問われています。

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