ニュースレター

2003年08月01日

 

日本の再生可能エネルギーの現状(中小水力発電、波力・海洋温度差発電、バイオマス、地熱)

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JFS ニュースレター No.11 (2003年7月号)

先月号のニュースレターで、再生可能エネルギーのうち、太陽熱、太陽光、風力の日本の現状についてお知らせしました。今回は「日本の再生可能エネルギーの現状」の後編として、中小水力発電、波力・海洋温度差発電、バイオマス、地熱に関して、足利工業大学の牛山泉教授の論文よりご紹介します。


(4)中小水力

日本の水力資源は、国産エネルギーとしては最大のものです。理論包蔵水力(電力量)は、約2700億kWhと推定されています。一方、旧通産省(現経済産業省)の第5次包蔵水力調査によれば、日本の未開発地点は約2700地点、最大出力1300万kW、電力量は約500億kWhとなっています。

これに既設・建設中のものを含めたわが国の包蔵水力は、それぞれ約4100地点、3300万kW、1350億kWh。したがって、最大出力で見た場合、わが国の包蔵水力のうち、1世紀近い水力開発の歴史の中で約60%が開発され、約40%が未開発ということになります。

これまでに開発しやすいサイトはほとんど開発しつくされているので、残されているのは中小水力発電が主体となります。ちなみに、旧通産省(現経済産業省)が算定している日本の未開発の包蔵水力(最大出力)は、あと1200万kW程度。その中で、2010年までに出力1万kW以下、建設費が300万円/kW以下程度の中小水力発電所を約1000箇所、550万kWを開発する「水力新世紀計画」が立てられています。

さらに、開発対象を広げて、出力規模100kW程度以下の容量のマイクロ水力発電まで含めれば、上記の包蔵水力は20%程度は大きくなるでしょう。

(5)波力、海洋温度差

日本の海岸線は、延べ32,000kmあります。ピーク値では14億kWもの波力エネルギーがあると計算されています。しかし、実際に利用できる海岸は160km程度という控えめな見方もあり、この場合には、年平均390万kW の波力エネルギーが発電に利用でき、年平均130万kWの発電が見込めます。

現状では、波力発電の設備費は500万円/kW程度とかなり高く、発電原価を算定すると、40円/kWh程度となります。しかし、すでにブイや灯台、防波灯標など小規模のもので特殊な用途向けに、波力発電は実用化されています。

一方、海洋温度差発電は、太陽で暖められた海表面と冷たい深層水との温度差を利用するものです。熱帯、亜熱帯の表層水温は27-30℃、深度500mの冷海水は7-8℃で、この程度の温度差があれば十分に発電ができるとされています。

問題は海水の汲み上げに要するポンプ動力が大きいことで、この所内電力を差し引くと正味出力は発電出力の15%程度にとどまってしまいます。発電原価を試算した例では19-23円/kWhでした。

また、日本の200カイリ経済水域内では、少なくとも3000万kWの海洋熱による電力を得ることができるといわれています。

(6)バイオマス

科学技術庁資源調査所の調査結果によれば、日本のバイオマス資源の現存量は約15億トンで、その94%を林地です。また、わが国の森林のバイオマスが持つ潜在的なエネルギーは、1995年における国内の森林成長量が、幹材のみを対象としても約9000万立方メートルであることから、仮に、この1/3をバイオマス発電用の燃料に利用した場合を計算すると、年間約207-311億kWhの電力を供給することができます。これはわが国の発電電力量の3%程度に相当します。

(7)地熱

日本は火山国であり、火山が65、これを含めた地熱地帯が200箇所あるとされています。したがって、地熱利用の可能性は大きいと考えられています。しかしながら、現在のところ実用化されているのは、地下2000mぐらいまでの比較的浅い部分の地熱資源で、これまでに建設された地熱発電所は、合計55万kWとあまり大きな量ではありません。

平成4年6月、国の長期エネルギー需給見通しが全面的に改訂されましたが、国の地熱エネルギーの開発目標は発電のみで2000年度までに100万kW、2010年までに350万kWとされました。

なお、日本の場合、地下から出てくる流体は熱水が主体であり、蒸気タービンの傷みも早いため、効率も低くならざるを得ない特徴があります。また、熱水中の公害物質を再度地中に戻すため、生産井と還元井を2本ずつ掘らねばならぬため、コスト高となるのも欠点といわれています。

このため、経産省では、地熱資源の探査・開発や、発電効率を高めるためのバイナリ--サイクル(作動流体に代替フロンとイソブタンなどの2種類の流体を組み合わせる)の開発、地下の高温岩体に地上から水を注入して蒸気や熱水を作り出す高温岩体発電などの研究を進めています。

牛山教授の論文から、日本の再生エネルギーの現状を2回に分けてお届けしました。日本でも、再生可能エネルギーの開発・活用の動きが広がっています。JFSでは今後もこの分野の新しい情報をお届けしていきます。

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