ニュースレター

2003年07月01日

 

「モノの販売」から「機能・サービスの提供」へ

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JFS ニュースレター No.10 (2003年6月号)

有限な地球環境を損なうことなく経済成長を続けるためには、これまでのように「たくさん作って、たくさん売る」ことが、企業や経済の成長を支える20世紀型のモデルから脱却しなくてはなりません。

なぜならば、このモデルでは、製品の寿命を短くして、買い替えを促し、消費者の使い捨てを永遠に促進しつづけないと成長できないため、資源やエネルギー、廃棄物などの観点から持続可能でないことが明らかだからです。

そのため、これまでは「物理的なモノ」を作り、売っていたが、消費者が求めているのは「モノ」自体ではなく、たまたまその「モノ」が提供している機能やサービスなのだ、という認識から、製品ではなく、「製品が提供しているサービスや機能」を提供する新しいビジネスモデルを事業展開する日本企業が増えています。

近年施行されたリサイクル関係の法律(家電リサイクル法など)も、新しい事業モデルというビジネスチャンスを生み出す背景になっています。
http://b.hatena.ne.jp/japanfs/%e7%92%b0%e5%a2%83%e6%b3%95/%e5%bb%83%e6%a3%84%e7%89%a9/

同時に、日本の消費者の意識が変わってきたことも、要因の一つです。つまり、地球環境問題やごみ問題に懸念を深める消費者が増えていること、物質的な面ではすでにかなり満たされていることや、長引く不況から、「所有」と「幸せ」を切り離して考える(たくさん持つこと=幸せ ではない)人が増えているのです。

また、かつては「所有」することがステイタスでしたが、いまでは、もっと身軽にあっさりと、そのとき・その場で本当に使いたいものを使える(そして不要になったモノに煩わされない)ことが便利でトレンディだと考える消費者も増えてきているようです。持ち家志向が減少傾向も、ひとつにはこのような背景があるのかもしれません。

このような事業の代表格がレンタル・ビジネスです。レンタル・ビジネスの"老舗"ダスキンは、1963年に、日本で初めて「水を使わない拭き掃除用品」を誕生させ、同時に、多くの人が手軽に経済的に使えるようにと、レンタルサービスという新しい流通システムを作り出しました。
http://www.100100.co.jp/index.html

以来、一般家庭やオフィスに、掃除用のモップやマットなどをレンタルし、使用したモップやマットは回収し、きれいに洗浄して再びお客様のもとへ届けます。それぞれの人が所有し、使って捨てることに比べて、環境負荷を低減できるうえ、同社では「モップやマットは、工場でまとめて洗濯するので、個別に洗濯するのと比べて、水や洗剤、電気が約20分の1ですみます。(ダスキンの試算による)」と説明しています。

また、小型の掃除機のレンタルもあります。モップとのセットなら、月に150円で小型掃除機を使うことができます。

富山の日本海ガスは、2年前から「ガスファンヒーターではなく、暖かさを売る」事業を開始し、顧客から好評を得ています。
記事はこちら→http://www.japanfs.org/db/120-j

東芝テクノネットワークは、学生や単身赴任者向けに家電レンタルパック始め、この1-2年、利用者が急増しているといいます。
記事はこちら→http://www.japanfs.org/db/164-j

大手スーパー・チェーンのイトーヨーカドーは、2003年2月に、単身者向けに加えて、ファミリー向けにも家電のレンタルパックを始めました。
http://www.itoyokado.co.jp/company/news/spcl/030205.html

また、家具等も含めたレンタル・サービスの提供も増えています。一方で、松下電器は、一般消費者向けではなく工場やオフィスビルを対象に、「あかり」を提供する「あかり安心サービス」事業を昨年春から始めています。
記事はこちら→http://www.japanfs.org/db/84-j


このようなレンタル・サービスでは、顧客はそのモノ(たとえば、蛍光灯や冷蔵庫)を買うのではなく、機能(たとえば、照らす、冷やす)だけを利用し、毎月定額のサービス料金を払います。不要になったら返却するだけですから、廃棄時の手間も費用も発生しません。

また、モノの所有権は顧客に移らず、サービス提供企業にあることから、企業にとっては、製品の寿命を長くしよう、回収・再生しやすい製品設計や流通を考えよう、というインセンティブにもなります。

松下電器では、「ハード(機器)単体のビジネスモデルは、20世紀で終焉した」と述べていますが、このような先進的な21世紀型ビジネスモデルが今後もさまざまな分野で台頭してきそうです。JFSは今後もこのような動きをウォッチし、お伝えしていきます。ぜひお見逃しなく!

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