ニュースレター

2003年03月01日

 

経営トップが汗を流し、NGOと対話する - 環境を考える経済人の会21

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.6 (2003年2月号)
シリーズ:ユニークな日本のNGO 第3回 
http://www.zeroemission.co.jp/B-LIFE/

1997年1月に設立された「環境を考える経済人の会21」(B-LIFE21)は、産業界を代表する経営者で結成している経済人の環境NGOです。

「持続可能な経済を構築するためには、経済活動の中心を占める企業が真っ先に変わる必要があります。とりわけヒト、モノ、カネに余裕のある大企業が先兵にならなければなりません。企業が変わるためには,企業トップが変わることが大切です」と訴えるB-LIFE21は、環境に関心を抱く経済人が自由意思で参加している非政府組織です。

現在、安西邦夫東京ガス代表取締役会長、飯田亮セコム取締役最高顧問、岡部敬一郎コスモ石油代表取締役会長兼社長、小林陽太郎富士ゼロックス代表取締役会長、豊田章一郎トヨタ自動車取締役名誉会長、福地茂雄アサヒビール代表取締役会長、松田昌士東日本旅客鉄道取締役会長など、18人が参加しています。

設立者であり事務局長でもある三橋規宏氏(千葉商科大学政策情報学部教授)は、JFSの理事のひとりでもあります。三橋氏は、日本経済新聞社で論説委員を務めていた時代、1995年元旦から合計31回に及ぶ連載社説「環境の世紀への提案」のデスクを担当し、環境経営の重要性を強調し、産業界に大きな影響を与えました。国連大学が提唱したゼロエミッション運動を日本で大きく推進した功労者の一人でもあります。

B-LIFE21の目的は二つあります。ひとつは、環境NGOとの対話促進です。多くの企業が、利潤の追求をその目的としています。戦後企業は、企業益を求めて事業を拡大させることで、国民生活の向上に貢献してきました。しかし地球の限界に直面した21世紀には、地球益という視点が重要になってきます。地球益とは、地球の利益、つまり自然環境をこれ以上悪化させず、破壊から守っていくことを優先しようとする考え方です。

多くの環境NGOやNPOの考え方,行動原理は、地球益を出発点にしています。これからの企業経営に当たっては、企業益の中に地球益を反映させていくことが大切であり、そのためには経済人が進んで環境NGOと対話し、学んでいく姿勢が必要だと考えています。

この目的のもと、環境NGO代表を招いてのシンポジウムや、環境NG0代表者をゲストに迎えての月次朝食会などを開催しています。環境NGOからの情報や率直な意見・提案に、経営者が耳を傾け、お互いに議論をするほか、企業とNGOとのコラボレーションのきっかけづくりの場ともなっています。

もう一つの目的は、「環境のために自ら汗を流す」ことです。経済人の目的は企業益の追求にありますが、地球の限界に直面した今、1年のうちの何日か,何時間かは環境のことを考え,環境のために汗を流すことが必要です。そうすることによって、環境問題が抱える多面的な問題を肌身で感じ、環境のために何ができるかを考え、経営の中に必要な対策を取り組んでいくきっかけになるからです。

このために、B-LIFE21では、大学に寄付講座を設け、経済人を講師とする授業を行っています。B-LIFE21のメンバーを中心とする経済人が直接教壇に立ち(メンバーは代理を立てることは許されず、どんなに多忙でも自分で教壇に立ちます)、企業の環境対策、問題点、将来への抱負などを語ります。これによって、学生は企業の環境マインドを知り、社会人になってからもその企業の行動を見つめる生き証人になります。一方、企業もトップが語りかけた環境への取り組みを後退させることはできません。環境経営に一段とはずみがつきます。

これまで、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(1998年度通年、1999年度秋学期)、立命館大学衣笠キャンパス(2000年度秋学期)、早稲田大学西早稲田キャンパス(2002年度通年)で開設しています。寄付講座の内容は、HPに掲載して広く活用してもらうほか、『地球環境と日本経済』『地球環境と企業経営』(東洋経済新報社)として出版されています。前書は英文版も出版されました。

日本では、これまでの社会制度その他の影響で、NGOの活動は欧米ほど盛んではありません。日本最大の環境NGOといわれる「日本野鳥の会」でも会員数は55,000人ほどで、何十万人の会員を抱え、資金的にも潤沢でさまざまな影響力を行使して活動する欧米のような大規模NGOはありません。

それでも、これまでの社会・経済のしくみが抱える問題が目に付くようになってきた頃から、NGOの数も増えてきましたし、活動も増大してきました。今後は、欧米のNGOのように、会議で政府や産業界と同等の立場で扱われ、社会に対する影響力をもっと持つようになるでしょう。

B-LIFE21は、産業界の大多数がNGOをまだ過小評価していた頃から、NGOと経営者の対話や、経営者と学生との直接対話の場を設営するなど、独自の実践活動を続けています。日本の産業界のリーダーたちが、環境NGOと膝を交えて議論し、学生たちに熱く語りかける--日本のトップ企業の経営者が個人として参加し、活動しているユニークな環境NGOなのです。

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