ニュースレター

2002年10月01日

 

ストーリー 環境自治体をめざして

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JFS ニュースレター No.1 (2002年9月号)

日本では、多くの県や市町村が「環境立県」「環境首都」宣言をしています。住民にもっとも近い自治体として、環境問題への取り組みは不可欠との認識が広がっており、さまざまな分野で先進的な取り組みをしている自治体も増えてきました。

その中で、自治体の取り組みを環境面から比較し、「日本のフライブルク」と呼べる自治体を市民とともに選ぶことによって、自治体の環境への取り組みと交流を促そう、という目的のもと「環境首都コンテスト」が2001年11月に、環境NGOによって行われました。

ここでは、(財)地球・人間環境フォーラム発行の「グローバル・ネット2002年5月号」より抜粋して、このコンテストおよび上位にランキングされた自治体の先進的事例のいくつかをご紹介します。

「日本にも環境首都を」

本コンテストは、主催者である私たちNGOが作成した質問票に、参加意志のある自治体が自主的に回答し、それにあらかじめ決めた点数を与え、その合計点で評価するシステムとした。

質問票はアジェンダ21、環境基本計画、マネジメントシステム、情報公開、エコオフィス、施設のエコ化、自治体交流、市民力の向上、環境学習、自然環境、水、景観と公園、交通、エネルギー、廃棄物、産業と16項目79問で構成されている。現時点の自治体行政を、環境という側面から全面的にカバーしたものになっている。

93市区町の参加を得た今回のコンテストにおいては、「日本の環境首都」の称号を贈る自治体は残念ながら存在しないという結論に達した。首都の得点ラインである、満点(400点)の70%(280点)を超える自治体がなかったからである。

総合順位(上位10位)は以下の通り。
第1位 名古屋市 
第2位 福岡市 
第3位 仙台市 
第4位 北九州市 
第5位 熊本市
第6位 尼崎市 
第7位 板橋区 
第8位 多治見市 
第9位 宇部市 藤沢市


総合順位ベスト3都市の先進事例

・ゴミ23%減量を達成した名古屋市
名古屋市は、環境基本計画の実行においては、部局横断的な取り組みがなされている。環境基本計画に掲げる事業について、他局が予算要求する際には環境局がバックアップし、連帯して確実に実行できるようにしているのだ。とくに重要で先導的な施策を「リーディングプロジェクト」として位置付け、積極的に支援している。関係する局は、総務局、市民経済局、環境局、健康福祉局、緑政土木局、上下水道局、交通局、教育委員会と多岐にわたっている。

藤前干潟の埋め立てを断念したあと、名古屋市は、ゴミ非常事態宣言と合わせて、20万tのゴミ減量目標を掲げ、必死に施策を展開。びん、缶回収の全市拡大、ゴミ指定袋制の導入、コンテナボックスの廃止、プラスチックと紙の容器包装の資源収集などを実施した。とくに容器包装の分別収集については、短い準備期間でスタートさせたため、開始当時、市民は混乱して大騒ぎ。名古屋市が開設したホットラインは終日鳴りっぱなしだった。開始前の町内会単位の地域説明会は、職員総出で約2300回。周囲の「ほんとに減らせるの!?」という期待や不安の中、当初の混乱を克服し、多くの市民が熱心に取り組んだ結果、2年間で23%のゴミ減量成果を上げた。

さらに、マイカー通勤の抑制のため、同額であった通勤手当を、自転車利用の場合は倍に、自動車利用の場合は半分にしたり、各部署で購入している事務用品を、庁内LANを活用して瞬時に実績把握できるようにするなど、大小さまざまな取り組みがなされている。

・福岡市の自転車施策と仙台市の環境白書
第2位の福岡市や第3位の仙台市でも、先進事例は多い。福岡市のユニークな事例としては、例えば自転車施策。市営地下鉄と市営有料駐輪場の共通定期券「乗っチャリパス」や、引き取り手のない放置自転車の一部を職員向け共用自転車「ちゃりエコ」として活用している。また、「チャリ・エンジェルズ」を結成し、天神地区を巡回しながら適正駐輪を呼びかけている。

仙台市の事例でぜひ多くの自治体に取り組んでもらいたいのが、住民にとってわかりやすい「環境白書」および「環境報告書」を出していること。他の自治体の白書等がほとんど住民という読み手を想定していないのに、仙台市のものは環境基本計画や環境マネジメントの進行状況と評価、今後の課題をわかりやすく記述し、住民の意見を求めるものとなっている。

その他の自治体の先進事例:抜粋

・自販機を撤去・設置禁止-豊田市(愛知県)
豊田市は、1999年から全庁舎・施設から飲料用の自動販売機を撤去・設置禁止している。業界や設置団体からの抵抗を押し切って実施したと聞いているが、現在も設置の圧力があるそうだ。1台で家1軒分の電力を消費するともいわれる自販機の撤去は、省エネとゴミ減量に貢献している。庁舎内のゴミ箱も撤去し、事業ゴミ減量にも成功している。

また水道水源保全基金は、水道水源の森林保全のため水道料金にトン当たり1円上乗せし、上流域の自治体が実施する水源保全事業に資金を提供している。それにより、水源となっている上流の森林の保水力アップと山崩れ防止など、町村と共同して、荒れた人工林を手入れし水源かん養機能を高める事業を行っている。

・レンタサイクルを促進-高松市(香川県)
高松市では、高松駅と商店街の瓦町にレンタサイクルのステーションを設置し、高松市を訪れた人や市民に好評である。2001年5月から土木部交通安全対策課が始めたこの事業は、どのステーションで借りても都合の良いステーションに返却できる、利用者に便利なシステムとなっていることが特徴である。

高松市には出張で訪れる人や、瀬戸内の島に住んでいる人が買い物などで訪れることが多く、レンタサイクル事業はとても好評となっている。料金は1日(24時間)100円。他に1ヶ月、3ヶ月の定期利用もでき、学割もある。今後JR栗林駅や商店街にも増設する予定で、公共交通の利用にもつながるものと期待されている。

・風力発電と森林保全-梼原町(高知県)
檮原町は、人口4,800人の山に囲まれた林業の町。その林業が衰退する中、山に吹き上げる風を発電に利用し、森林の保全に生かしている。

四国カルスト高原に設置した風力発電は2基。それにより年間約4,000万円が売電されており、その約半分を森林保全に交付している。しかし、それには条件があり、FSC(森林管理協議会)による"森林の環境認証"を取得している森林の間伐などが対象でなければならない。

FSCによる森林認証は、環境に配慮し、適切な管理を進めている森林を認証するもので、檮原町では、山に囲まれた地域の特性と環境保全の観点から、FSC森林認証が地域の活性化につながるとして、取得する森林を広げるねらいがこの交付金にはある。

(グローバルネット2002年5月号特集 執筆陣:すぎ本育生、坂本和昭、平田勇 夫、井上和彦、吉橋久美子、内田洋子、原育美、掲載順・敬称略)

本コンテストの詳細は、NPO法人環境市民のHPに掲載されています。
http://www.kankyoshimin.org/jp/mission/ecocity/ecocap/index.html
(財)地球・人間環境フォーラム
http://www.gef.or.jp/
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http://www.gef.or.jp/activity/publication/globalnet/index.html

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