ニュースレター

2008年07月01日

 

太陽光発電 - 日本での普及への歩み

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JFS ニュースレター No.70 (2008年6月号)

今回は、持続可能な社会の新しいエネルギーとして、大いに期待されている太陽光発電の日本における歩み、普及への施策と状況をご紹介します。

日本での太陽光発電の歩み

1954年にアメリカで発明された太陽電池ですが、日本では1955年に太陽電池の試作品が作られ、1958年に東北電力信夫(しのぶ)山無線中継所に日本初の太陽光発電システムとなる70Wの太陽電池が設置されました。1959年にはシャープが太陽光発電の研究開発を始め、1963年に量産をスタート、1976年に太陽電池付電卓を発売しました。

1978年より既存の電力系統と太陽光発電システムを連携させる研究がスタートし、1990-1992年にかけ、小型太陽光発電システムを住宅などに設置しやすくし、電力会社が住宅などの余剰電力を買い上げるための法整備がなされました。そして1992年に三洋電機が個人住宅での逆潮流ありの太陽光発電システム、つまり個人宅の太陽電池で作られた余剰分の電気を電力会社に送るシステムの実用を開始しました。その後1999年に太陽電池生産量で日本は世界1位となったのです。

太陽光発電の累積導入量では、2004年までは日本は113万kWで、世界最大の導入国でしたが、ドイツの導入が進み、2005年のドイツの累積導入量は143万kWに達し、142万kWの日本は、世界第2位となりました。しかしながら、2005年の日本の太陽電池生産量は82万kWで世界トップの地位にあり、世界の5割近くを日本企業が生産しています。

太陽光発電の普及にはコストダウンが不可欠です。技術開発により、1994年に設置コスト1kWあたり200万円、発電コスト140円/kWhだったものが、2005年には設置コスト1kWあたり66.5万円、発電コストは45円/kWhまで下がってきました。http://www.enecho.meti.go.jp/energy/newenergy/newene02.htm

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2004年に発表した「2030年に向けた太陽光発電ロードマップ(PV2030)」によると、発電コストを2010年には一般家庭と同レベルの23円/kWh 、2020年には業務用電力料金並みの14円/kWh 、2030 年には汎用電力並みの7円/kWh 程度を想定しており、2030年ごろまでには他のエネルギーとの競合が可能となるレベルにするとしています。

2002年時点での、日本における太陽光発電による発電シェアは0.1%以下ですが、同ロードマップではこれを、技術的課題を解決することで2030 年までに累積導入量100GW程度、発電量として家庭用電力の1/2 程度(全電力の10%程度)を太陽光発電で補うことを目標としています。

太陽光発電に対する支援

日本では太陽光発電は、新エネルギーの1つとして技術開発や普及に向けての研究などが政府により支援されています。新エネルギーとは「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」(新エネ法)で、「技術的には実用化段階に達しつつあるが、経済性の面から普及が十分でないもので、石油代替エネルギーの導入を図るために特に必要なもの」と定義されており、太陽光発電以外に風力発電やバイオマス発電など14種類が指定されています

2003年には、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)が施行され、この法律により、電力会社は太陽光発電や風力発電など新エネルギーと呼ばれるエネルギーを一定量利用することが義務づけられました。

新エネルギー財団(NEF)による住宅用太陽光発電への補助金制度が、1994年度-2006年度まで実施されました。 残念ながら同補助金制度は終了してしまいましたが、それぞれに支援を行っている自治体もあります。2007年度は、303自治体で、補助、融資、斡旋、利子補給などなんらかの支援が実施されました。しかし、これも残念なことにNEFの助成金制度がなくなった影響か、前年度の支援自治体数の319自治体から減少しています。
http://www.nef.or.jp
http://www.solar.nef.or.jp/system/html/sienzititai_2.pdf?a=2

NEFによる住宅用太陽光発電システムへの助成はなくなりましたが、環境省は2006年より、大規模な太陽光発電の普及を図るため「ソーラー大作戦」を実施しています。日本における太陽光発電の多くは個人住宅用の小規模太陽光発電ですが、より大規模な太陽光発電システムの導入を目指し、地域や集合住宅など、街ぐるみでの太陽光発電システムの導入への支援や、メガワットソーラーと呼ばれる1,000kw級の大型太陽光発電システムを導入する事業者への助成を行っています。

太陽光発電は災害時に電力会社からの電力の供給がストップしても、地域で電源を確保できることから、災害時の役割も期待されています。阪神・淡路大震災時に電気・水道・ガスといったライフライン寸断による救急活動機能低下が、被害拡大の要因となったという教訓から、太陽光発電を使った自家発電設備などをガソリンスタンドに設置する際に、その費用の一部を国が負担する「災害対応型給油所普及事業」が、1996年から実施されています。

また、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーがもつ「環境付加価値」を証書として取引するグリーン電力証書システムを、企業や自治体が利用したり、カーボンオフセット商品の購入、市民出資による太陽光発電所など、民間、市民レベルで自然エネルギーを応援しようという気運が少しずつですが広がりを見せています。

住宅用太陽光発電システム設置の実際

JFSニュースレターの2007年9月号でご紹介した(株)望月工業所は、シャープと特約店契約を結び、住宅用太陽光発電システム「サンビスタ」の販売・施工を行っています。実際に太陽光発電システム設置に携わっている同社の望月さんにお話を伺いました。

太陽光発電システム導入の流れですが、設置希望者は太陽光発電システムの販売店や望月工業所のような特約店で設計見積もりを作成してもらいます。見積もりの内容でOKとなれば、電力会社と売電価格などの設置に関する打ち合わせを行います。電力会社と売電契約を結び、太陽光発電システムの設置工事がスタート、設置後は余った電力を、電力会社に買ってもらえるようになります。

電力会社との打ち合わせや売電に関わる契約等の手続きは、大抵販売店が代行しています。また、販売店では設置後も定期的に様子を見に行き、設置後のフォローも行っているそうです。システム設置にかかる費用は、設置する方位、枚数、角度、地域などの状況により変わるようですが、同社の場合のモデル条件では200万円程度、設置費用は15年程で回収できるそうです。

望月さんは、住宅用に導入する人は、やはり環境意識の高い人が多いと感じるそうです。太陽光発電の普及を促進していくためには、環境意識のあまり高くない人々も含め、より多くの人々の支持を得られなければなりません。しかし、2006年にはNEFの補助金制度も終了してしまい、このままでは、個人住宅への導入が減っていくことが危惧されます。

太陽光発電の普及の妨げとなっている問題には、国の補助金が少ないこと、余剰電力の買い取り価格が安いことなど、やはり経済的な面が多いと望月さんはおっしゃっていました。

2005年のNEFによる、住宅用太陽光発電設備の導入動機を調査したアンケート結果でも「電力会社が余剰電力を購入してくれるから」というものが最も多く、経済的なメリットが普及の後押しになってきたのは確かなようです。

2007年の東京電力による太陽光・風力発電からの余剰電力買い取り価格は、販売価格と同価格で、各家庭の契約内容で変わってくるのですが、20円/kWhくらいとなっています。しかし、環境先進国であるドイツでは、2004年に太陽光発電システムからの電力の買い取価格を通常の電気代の約4倍に引き上げています。

EUは2010年には再生可能エネルギーシェアを12%にする目標を設定、2020年には20%に引き上げるとしています。 一方、日本は2010年の太陽光発電を含む新エネルギーの導入目標を全体の3%程度としています。

太陽電池の技術も生産量も世界のトップレベルの日本ですが、国内における普及に向けた政府の目標、支援策などは、まだまだ不十分です。エネルギー自給率が4%しかない日本は、太陽光発電を持続可能な社会構築に活かせるよう、もっと知恵を絞り、国内の仕組みを改善していく必要があるのではないでしょうか。

2008年6月9日に、福田総理大臣は記者クラブでのスピーチで「太陽光発電導入量を2020年までに現状の10倍、2030年には40倍に引き上げる。そのために新築持ち家住宅の太陽光発電の7割以上の採用をめざす。」と発表しました。これをきっかけに、日本政府の太陽光発電への取り組みがより積極的なものに変わっていくことを期待したいものです。

参考:
「なぜ、日本が太陽光発電で世界一になれたのか」NEDO編集
NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構):
http://www.nedo.go.jp/
株式会社望月工業所:
http://www.haikankouji.com/
エネルギー技術戦略の策定について 資源エネルギー庁:
http://www.enecho.meti.go.jp/policy/energy-technology/sakutei.htm

(スタッフライター 米田由利子)

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