ニュースレター

2008年07月01日

 

個性を活かしたアイデアとインパクトでサステナビリティを追求する - ソニー株式会社

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JFS ニュースレター No.70 (2008年6月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第72回
http://www.sony.co.jp/

ソニー株式会社は、エレクトロニクスビジネスを基盤とし、ゲーム、映画、音楽、金融といった事業領域を持つ、世界的に知名度の高いグローバル企業です。

「ソニーでは、CSRをサステナビリティのマネジメントととらえています。その上で実現したいサステナビリティは2つあります」。こう語るのは、CSR部統括部長の冨田秀実さん。一つは「経営」のサステナビリティであり、もう一つは「社会全体」のサステナビリティです。そこで最初に、社会全体のサステナビリティへの取り組みを伺いました。

クライメート・セイバーズ・プログラムへの参加と「東京宣言」

ソニーは、1946年に井深大、盛田昭夫両氏が創業した当初より、「今でいうCSRの理念を持っていた企業」だと、冨田さんは言います。そのことは、井深氏による「設立趣意書」に明文化されています。そこには、不当に利益を追求するのではなく、戦後の日本社会の復興、文化の向上に技術・生産面で貢献することや、国民への科学的知識の実際的な啓発活動を行うというような、社会の中でのソニーの存在意義を明確に示してあり、これらは他社のやらないことにチャレンジし、まったく新しい製品やサービスを提供するという「ソニースピリット」とともに、今も受け継がれています。

社会全体の繁栄、サステナビリティを目指す主な取り組みの例として、地球環境や貧困、教育支援への取り組みが挙げられます。環境への取り組みとしては、2006年7月よりWWF(世界自然保護基金)が推進する「クライメート・セイバーズ・プログラム」に参加し、地球温暖化防止に関する協定を結んでいます。協定内容は、次の通りです。

1.ソニーグループ全体でCO2換算温室効果ガス排出量を2010年度までに、絶対量で7%削減(2000年度比)
2.主な製品の年間消費電力量を削減することで、製品使用時のCO2排出量を削減
3.地球温暖化防止に関して消費者とのコミュニケーション活動を実施
4.地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑えることを支持

日本企業の中ではきわめて早い段階で、海外の事業所も含めた絶対値での温室効果ガス排出削減をコミットしており、非常にチャレンジングな目標設定といえます。

2008年2月には、ソニーがホスト役となって、「クライメート・セイバーズ東京サミット2008」が、東京のソニー本社で開催されました。例年の関係者だけの会合に加え、今回はパブリックなイベントも開催。ソニー、ノキア、テトラパックなど、同プログラム参加企業を中心とした12社が、気候変動に立ち向かう決意として「東京宣言」を発表するなど、クライメート・セイバーズのメッセージを広く発信しました。

「いくらソニーがCO2排出量を減らしても、地球規模ではごくわずかでしかありませんが、ソニーが取り組むというアナウンス効果、影響力によって、結果的に地球温暖化防止に貢献できるのではないか。今回のサミットや東京宣言は、志を共にしてくれる企業によって、さらに注目を集め、地球温暖化防止のメッセージをアピールできたと感じています」(冨田さん)

『そらべあ基金』へのサポート活動

2007年10月、再生可能エネルギーの普及・啓発事業、国内外での再生可能エネルギー施設の設置などを手がける基金『そらべあ基金』が設立されました。ソニーが運営委員として活動をサポートし、ソニー・クリエイティブプロダクツが、キャラクター「そらべあ」を提供。ソニー・マガジンズが絵本を出版するなど、グループを上げて基金を支援しています。
http://www.solarbear.jp/

「キャラクターを使ったコミュニケーションは、日本らしい方法であり、現在はクラリネットの演奏とジョイントした読み聞かせイベントも行っています。涙するホッキョクグマ『そらべあ』というキャラクターによるシンプルなストーリーから、子どもと大人の対話が生まれることにより、子どもと、子育て中の家族への環境教育として効果のあるツールだと考えています」という冨田さんは、海外への展開も視野に入れていると言います。

2008年3月からは、ソニー製の市販向け電池、充電池、充電器の売上の一部を『そらべあ基金』に寄付し、同基金が行う幼稚園・保育園への太陽光発電施設の設置を支援しています。

グリーン電力証書を通じた森林保全支援活動

ソニーは、工場やオフィスの省エネを徹底し、それでも排出されるCO2に関してはグリーン電力の導入による「オフセット」を推進しています。太陽光・風力・バイオマスなどの再生可能なエネルギーを利用して発電された電力「グリーン電力」の導入に積極的に取り組み、国内グループ会社の契約分も合わせると、およそ年間3640万kWhの再生可能エネルギーを、発電委託しています。

電力会社と協力して仕組みづくりを行った「グリーン電力証書」を2001年より利用。現在ナンバーワンユーザーであるソニーは、手入れが行き届かずCO2の吸収源にならない荒廃した森林の保全活動に、グリーン電力証書を通じた貢献を行うことを秋田県に提案し、2008年4月より年額600万円の寄付をスタートしました。

この寄付金は、木質バイオマス発電の燃料となる間伐材をバイオマス発電所まで運搬する費用にあてられます。これにより、安定した発電に貢献すると同時に、山林を手入れする上で一番の問題だった間伐材の処理・運搬が行われ、森林保全も促進されるという流れ。運搬事業は今秋より開始される予定です。都道府県との連携による、グリーン電力証書の利用を通じた森林保全支援活動は、全国初ということもあり、有効なモデルケースとなりそうです。

ユニセフの「子どもデジタル写真プロジェクト EYE SEE」への協力

教育は、ソニーが創業時より伝統的に力を注いでいる分野です。貧困にあえぐ地域の子どもたちへの教育支援の一貫として、ユニセフが開催している、子どもデジタル写真プロジェクト「EYE SEE」へのデジタルカメラ提供はソニーが行っています。圧倒的なインパクトを持つ「写真」というツールを用いることで、アフリカなど現地の子どもたちの視線でとらえた「現実」が、人々の共感と、より大きな影響力を生むのではないかという期待のもと、写真展やウェブを通じてより多くの人々に届ける活動を行っています。

「お金の寄付や食料援助も大切な支援ですが、ソニーの事業で行える支援、それは、人に夢や希望を与えること。カメラも写真も持たないアフリカの子どもたちが、参加することでウキウキする、活き活きと取り組める。そして自分たちを表現する。そういう場を提供しています」。技術力、製品力、ノウハウ、人材、そうしたソニーの付加価値をもって貢献してこそ、企業が社会に貢献する意義があると冨田さんは考えています。
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/Environment/ForTheNextGeneration/
contentslist/eyeseeIII/

社員一人ひとりがCSR的なテーマを持つこと

社会全体のサステナビリティに向けた取り組みができるのは、サステナブルな企業経営が行われていることが前提です。「社員の帰属意識を高めることで、企業のサステナビリティが脅かされるような問題は減ると思います。ソニーっていい会社だなという誇り、良心、それを一人ひとりの心に育むことこそが、問題を未然に防ぐ原動力になると思います」(冨田さん)

従業員数が18万人を超えるソニーグループ。社員一人ひとり、社会への関心も多岐にわたっています。自分に何らかフィットするCSR的なテーマを見つけてもらえるような機会の提供として、CSR部では、「CSR講演会」を定期的に金曜日のアフター5に社内講堂で開催しています。

環境問題やアフリカの問題、育児やキャリアの問題など、テーマはさまざま。育児がテーマの日は、社内で初めて育休をとった男性社員に話をしてもらうなど、社員参加を促しています。その時々で話題の映画、例えば「不都合な真実」や「ブラッド・ダイヤモンド」などを上映すると、1,000名収容の講堂に入りきれないほどの申し込みがあるといいます。

「参加する社員の中には、高い意識で参加する人もいれば、『無料で映画が観られるから』という人もいると思いますが、それで構いません。話に触れ、映像に触れることで、何か得るものがあると思うからです」(冨田さん)

時代を先駆ける独創的なアイデア。それがソニーという企業の持ち味であり、そこには常に「人を喜ばせる、楽しませる、イキイキさせる」技術があり、ノウハウがあり、それを生み出す人がいます。「サステナビリティの課題、それはパートナーシップです。1社でできることはたかがしれていますから」。グローバルで考えることと、ほかとの連携が、サステナビリティをマネジメントする上での重要な鍵だと冨田さんは考えています。


(スタッフライター 青豆礼子)

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