ニュースレター

2008年08月01日

 

寄付文化を創造しNPOの活動を支援する - 特定非営利活動法人チャリティ・プラットフォーム

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JFS ニュースレター No.71 (2008年7月号)
シリーズ:ユニークな日本のNGO 第10回
http://www.charity-platform.com/

佐藤大吾氏が理事長をつとめる「チャリティ・プラットフォーム」は、2007年5月に設立された、NPOの活動を支援するNPO法人です。

1996年、当時はまだ珍しかったインターンシップ事業を創業し、1998年にNPO法人化して約10年間、NPO法人経営を行ってきた佐藤氏は、「NPOに寄付した人に感動してもらわなければ、継続して寄付してもらえないのではないか」という、現在役員となっている一人の言葉を機に、自身のNPOだけでなく「NPO業界」全体を初めて見渡してみました。

すると、多くのNPOでは寄付者へのフォローが十分に行われていないことが見えてきました。その原因について、どのNPOも現場が忙しく、資金面での余裕がないためだと当初は考えたそうです。しかし、「支援者を大事にフォローしないからお金が入らず、お金が入らないから常に忙しい」のではないかと考え、その悪循環を断ち切るため、NPOの資金開拓を徹底的にサポートするNPOをつくろうと思い立ち、「特定非営利法人チャリティ・プラットフォーム」の設立に至りました。

高い志で活動しているにもかかわらず、事業を継続していくことに困難を感じている多数のNPOがあります。「インターンシップ事業を起こしたときと同様、NPOに資金循環を生むという事業は、これまで誰も成功していない分野。どこにもお手本がないゼロからのチャレンジングな取り組みに、今、やりがいを感じています」(佐藤氏)

持続可能なNPO活動を支援する仕組みとしての「助成」

チャリティ・プラットフォームは、世の中のために活動するNPOと、社会の役に立ちたいと願う支援者(寄付者)を結ぶことによって、人々が笑顔になることを目指しています。そのための活動として、NPOへの助成&経営支援、プロジェクト構築支援、ファンドレイジング&広報支援の3点を挙げています。なかでも、持続可能なNPOの条件として欠くことができないものが「資金」であり、そのためにも「助成」という取り組みが注目されます。

一方、社会貢献したい企業や個人の思いの具現化として、「寄付」という行為があります。チャリティ・プラットフォームは、そうした寄付による助成でNPOを経済的に支援する仕組みづくりを行っています。

「今日、日本の法人寄付の市場は5000億円とも言われ、企業は資金サポートに関心がないわけではありません。そこで私どもでは、現在は主に企業に対して、社会に有益な活動を行っているNPOに関して、しっかりしたリサーチに基づく安心できる確かな情報を提供し、NPOと提携した社会貢献の提案を行っています」(佐藤氏)

継続支援獲得のために欠かせないNPOの体質改善

佐藤氏は、「これまでNPOから事業を提案されたことはなかった」という言葉を企業担当者からよく聞くそうです。つまりNPOが、自分たちの事業を応援してくれる人や、企業からの支援金を増やすための広報活動、事業提案を効果的に行えていないのが現状なのです。

「NPO先進国のアメリカやイギリスに比べ、日本のNPOは企業に対する働きかけが少ないといえます。これまで国内の約3,000ものNPOをリサーチしてきましたが、その多くは企業との接点を持っていませんでした。かろうじて企業と接点のある場合でも、企業にとってのメリットを提案するのではなく、『地球のために協力してほしい』『利益が出ているのだから寄付してほしい』という提案をされて困惑したという企業からの声も寄せられています」(佐藤氏)

現在日本には、約35,000(2008年5月31日現在)ものNPO法人があり、中にはNPO先進国でも十分に活動できる団体、経済基盤がしっかりした団体もあるといいます。「そうしたNPOは、私たちの支援がなくても活動できる『超Aクラス』の団体です。チャリティ・プラットフォームは、その一歩手前の団体を徹底的に支援し、魅力あるNPOになっていただくことで、志ある若者がベンチャー起業家に憧れるように、NPOや社会起業家に憧れ、チャレンジしようと思えるような土壌をつくりたい。それには、企業に安心感を持ってもらえ、継続的な支援をしてもらえる体質に、NPOが変わっていかなければいけないと思います」(佐藤氏)

チャリティ・プラットフォームが支援の対象とするのは、主に年間予算1000万円以上で専従スタッフがいる団体。特に、専従スタッフがいることは非常に大きな要素だといいます。スタッフが常勤し、メールを送れば24時間以内に返信が来るといったことが、企業にとって支援先が信用できるかどうかの判断基準になるからです。

「多くのNPOは、ボランティアの色合いが強いのですが、それが『やりたいときにやる』だけではなく『やめたいときにやめる』スタンスにもつながりがちだと感じます。私ども自身もNPOですが、完全に企業と同じ意識と体制で業務に取り組んでいます。私たちの挑戦テーマは、継続支援の獲得。私どもがプロとして本気になってやることで、NPOにも本気になっていただく。責任を持って事業に取り組むプロ意識こそが、企業や世の中から継続的な支援を獲得する鍵になります」(佐藤氏)

寄付文化を社会に根付かせ力強いNPO活動を支援

現在日本では、寄付金控除の対象となる団体が少なく、仮に対象団体に認定されても、認定期間は5年のみ。その度に膨大な書類を準備する必要があるなど、寄付に関する法規制が強く、支援者と支援を受けた側が「喜びを分かち合う機会」を設けにくい環境にあるといえるでしょう。

寄付とは、単に善意でお金を出すという行為ではなく、「感動体験を購入する」ものだという意識をアピールし、寄付文化を社会に創造していくことが、これから必要だと佐藤氏は言います。寄付という方法で社会と接点を持つことができる、世の中の役に立てるということが認知された社会を創造することが、チャリティ・プラットフォームの目指しているところです。

設立から1年。実質的に稼働し始めたのが2008年の4月からという短期間の中で、チャリティ・プラットフォームは、約3,000のNPOのリサーチを進め、信頼できるNPO のデータサイト「Charity NAVI(チャリナビ)」を構築。約120団体に賛助会員という形で入会し、協力を推し進めてきました。

「中でも、NPO事業サポートセンターの助成事業として、『NPO塾』を開講し、2007年は300社500人のNPO経営者と直接対話・討議する場を持てました。現場の声を直接聞くことができ、また私たちのスタンスを直に見ていただくことができたという点で、有意義な取り組みだと感じています。昨年は13カ所を回りましたが、今年度も10カ所を訪問し、約200-300団体と直接お会いする予定です」(佐藤氏)

6月25日付けの朝日新聞には、サイクロン被害にあったミャンマーの支援活動を行っている2団体への寄付を募る広告を掲載しました。この団体へは既に助成を行っており、広告掲載はいわば第2の投資。しかし今回は、サイクロン発生から約2カ月経ったタイミングでの広告で、今のところ、実際の回収率は芳しくありません。「とはいえ、これはテストケースとして、今後の検討材料にしていきたいと考えていますし、このようなチャレンジを私たち自身が継続していきたい」とチャリティ・プラットフォームは考えています。

1団体だけでは届かなかった声が、10団体がまとまることで政府も無視できなくなる、その結果、社会問題の解決が早くなる可能性も高まります。複数の団体がまとまって広告を打つことは、こうしたモデル構築の布石でもあります。

「同じテーマで活動しているNPOは、同じテーブルにつく機会をもっと増やしてはどうでしょうか。そうやって、政府や企業と同じ力を持つ民間市民セクターをつくりたい。そのお手伝いをしたいと思っています」(佐藤氏)

NPOは誰に言われるまでもなく、よりよい社会づくりをしようと取り組んでいます。チャリティ・プラットフォームは、その活動が継続的に発展するための応援を行います。NPOが活躍することでたくさんの笑顔が生まれ、NPOを支援することでさらにNPOが活躍し、笑顔がさらに増えて、支援者も笑顔になる、そんな笑顔や幸せの連鎖が生まれる社会の実現を目指します。


(スタッフライター 青豆礼子)

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