エネルギー・地球温暖化

2016年08月26日

 

温室効果ガス削減に向けた「気候変動・経済社会戦略」 環境省が公表

Keywords:  エネルギー政策  地球温暖化 

 

図:温室効果ガス80%削減イメージ
温室効果ガス80%削減イメージ
出典: 環境省

環境省は2016年2月28日、温室効果ガスの長期大幅削減と経済・社会的課題解決に向けた提言を発表しました。長期における温室効果ガスの大幅削減と、日本が直面する構造的な経済的・社会的課題の同時解決を目指し、「気候変動・経済社会戦略」の考え方について議論してまとめられた提言についてお伝えします。

日本は、2015年7月に温室効果ガスの2030年削減目標(2013年度比26%減)を盛り込んだ「日本の約束草案」を決定しました。また、2012年4月27日に閣議決定された「第四次環境基本計画」では、2050年までに80%削減を目指すこととしています。

こうした目標を達成していくためには、単なる個別対策の積み上げだけではなく、社会システムの変革が不可欠との観点から、環境大臣の私的懇談会として、幅広い分野の有識者から構成される「気候変動長期戦略懇談会」を2015年10月に設置。5回にわたって議論の場を設け、提言をまとめました。

提言は4つの章で構成されています。
第1章 気候変動に関する科学的知見と国際的なコンセンサス
第2章 温室効果ガスの長期大幅削減の道筋
第3章 我が国の経済・社会的課題とその解決の方向性
第4章 気候変動問題と経済・社会的課題の同時解決に向けて

気候変動に関する科学的知見として、気候システムに対する影響は明らかなこと、気候変動による深刻な影響を回避するためには、温室効果ガス排出量を2050年までに2010年比で40~70%削減、21世紀末までに排出ほぼゼロまたはそれ以下にする必要があることを示しています。

国際的なコンセンサスについては、2015年12月にCOP21において採択されたパリ協定で、全ての国が温室効果ガス削減努力に参加し、産業革命前からの地球平均気温の上昇を2℃より十分下方に保持し1.5℃に抑えるよう努力する合意となったこと等を挙げています。

2℃目標に向けた温室効果ガスの長期大幅削減のためには、社会構造のイノベーションが必要であり、その結果、経済・社会に対する大きなインパクトが生じる可能性があることに言及。特に人口減少期に適応した社会構造のイノベーションの必要性を強調しています。

提言では、気候変動問題と経済・社会的課題の同時解決を目指す社会構造のイノベーションの方向性は共通であると結論づけ、課題ごとに具体的な施策の例を挙げています。

・経済課題解決のポイント
巨大な低炭素市場をもたらす「グリーン新市場の創造」と「環境価値をてことした経済全体の高付加価値化」
<施策> 環境価値を顕在化させ炭素生産性の向上と経済全体の高付加価値化を誘発するカーボンプライシング(例:法人税減税、社会保障改革と一体となった大型炭素税)、イノベーション・ターゲットを定めた規制的手法の活用、「ライフスタイルイノベーション」実現のための情報的手法、環境金融の推進

・地方課題解決のポイント
エネルギー収支の黒字化等を通じた「地方創生」
<施策> 地域エネルギープロジェクトへの支援、生産性向上等のための低炭素都市計画の推進、自然資本を活用した地域経済の高付加価値化

・国際的課題解決のポイント
「気候安全保障」の強化:新たな環境ブランドでの「国際的尊敬」獲得、エネルギー安保の強化、世界の低炭素市場の創造
<施策> 気候安全保障に関する国民の理解の増進、我が国の貢献による海外削減の推進と国際的リーダーシップの発揮

気候変動長期戦略懇談会は「気候変動対策の意義について世論の喚起を図り、実効ある対策・施策を実施しつつ、更なる挑戦へと舵を切っていくことを目指す」としています。

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