エネルギー・地球温暖化

2014年12月23日

 

エネルギー基本計画のパブリックコメントの9割が「脱原発」を求める

Keywords:  エネルギー政策 

 

グラフ:エネルギー基本計画に対するパブリックコメントの内訳
エネルギー基本計画に対するパブリックコメントの内訳
調査期間:2013年12月6日~2014年1月6日
朝日新聞記者の計数結果よりJFS作成

日本政府は2014年4月11日、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた基本計画を閣議決定しました。これに先立ち2013年12月6日からの1カ月間、経済産業省が基本計画に対するパブリックコメントを募集したのですが、寄せられた意見の大多数は、廃炉や再稼動反対など「脱原発」を求めるものだったのです。

『新しいエネルギー基本計画をつくるときのパブリックコメントで、94%が「脱原発」を求める意見で、「原発維持・推進」は1%だった』という記事が2014年11月12日の朝日新聞に掲載されました。

前政権・民主党の野田内閣は2012年夏、2030年代の原発の依存度をめぐって、国民的議論としてパブリックコメントや各地での公聴会などを実施し、その結果を明らかにしました。パブリックコメントでは約8万9千件のうち87%が「0%」を選んでいました。

野田内閣は、さらに公聴会やマスメディアの世論調査なども参考にして、国民の過半数が原発に依存しない社会を望んでいると判断し、「2030年代に原発稼働ゼロ」の方針を決定。民意を政策に反映させようとしました。

その後、自公連立の安倍内閣に変わって、経産省は2013年12月、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた基本計画の原案を示し、それから1カ月間、パブリックコメントに付しました。

経産省は2014年2月、「集まった意見は約1万9千件だった」と発表し、寄せられた主な意見も明らかにしましたが、「原発の賛否割合」という重要な情報は出さず、当時の茂木敏充経産相は「数ではなく内容に注目して整理を行った」と国会で説明しました。

「政府がやらないなら自分で分類をやってやる」――朝日新聞の記者のひとりが、経産省に対して、パブリックコメントに寄せられた意見のすべての開示請求をし、20,929ページのコピーを20万円余りの費用をかけて入手しました。2万枚を超えるコピーは、重ねたら1メートルを超えるでしょう。

日々の仕事の傍ら、1枚ずつ賛否の印を付けていく作業を進め、2カ月ほどかけて、ようやく全部に目を通しおえました。複数ページに及ぶものを一件として数えると、1万8711件。原発への賛否では、廃炉や再稼働反対を求める「脱原発」が1万7665件で94.4%、「原発維持・推進」は213件1.1%、「その他」は833件4.5%。やはりパブリックコメントの結果は「脱原発」が圧倒的だったのです!

ちなみに朝日新聞社の10月下旬の世論調査でも、安倍内閣が進めようとしている原発の再稼働については、「賛成」は29%で、「反対」の55%が上回っています。2013年6月以降、同社では同じ質問を9回していますが、傾向は変わっていません。

この分類作業を行って、数字を世に出した記者さんは、「この分類は実質的に筆者1人でできた。経産省であれば一週間もあればできた作業だろう。やはり、この分類結果を出したくなかったのだろう。原発回帰のエネルギー基本計画、そして原発の再稼働への動きは、民意の裏打ちを欠いている。筆者としては94%の反対、1%の賛成という情報を世に出せたことをよかったと思っている」と述べています。

この記事をお読みになりたい方は、ぜひWEBRONZAにアクセスしてみてください。
http://astand.asahi.com/magazine/wrbusiness/2014111100004.html?iref=webronza

もちろん、パブリックコメントがすべてではありません。しかし、94%対1%という差は無視できるものではないでしょう。意見を寄せた人々の94%が反対し、支持する声が1%しかない原発を、集めた意見の賛否割合も明らかにせずに、そのまま推進しようとする現政府は、ますます国民の信頼を失い、禍根を残すことになるでしょう。

世界には、フクシマの現状や日本のエネルギー政策に関心を寄せる(心配している)人々がたくさんいます。世界の人々に、「日本政府は原発を推進しようとしているが、パブリックコメントを寄せた人の94%は反対し、1%しか賛成していない」ことを伝えたいと思います。

(枝廣淳子)

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