幸せ・レジリエンス

2017年07月09日

 

高齢化社会における健康医療福祉問題の現状と日本の役割

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イメージ画像:Photo by francisco.castro Some Rights Resered.

日本は世界に先駆けて高齢化社会を経験している。高齢者の場合、病後に後遺症が残ることが多く、社会参加や社会貢献も難しくなるが、家に閉じこもらず、その人らしい暮らしを継続するためには、医療面、生活環境面の支援体制、即ち健康医療福祉問題の解決が必要になる。この問題に積極的に取り組んでいる、東京都のねりま健育会病院院長・回復期リハビリテーションセンター長の酒向正春医学博士の活動を紹介する。同博士は脳卒中治療を専門とする脳神経外科医の知識・経験を生かしてリハビリ医に転向し「攻めのリハビリ」を展開している。

脳卒中は発症後、救急病院で治療し、その後の機能障害による能力低下をリハビリで改善する2~6カ月間の「回復期リハビリテーション医療」は、日本だけが持つ世界に誇る医療である。

その特徴は早期にリハビリを始めることにある、脳神経が活性化され残存した神経が再構築されるためで、最近では、75%の脳卒中専門病院が発症後3日以内にリハビリを開始している。そのためには医師、看護師、療法士、ソーシャルワーカーをはじめ多職種のチーム全員が、患者の状態を把握し、介助方法や装具の必要性の検討、病室の環境整備を行う。

最初の二週間で、美味しく食べる、気持ちよく眠る、適度に運動する、この3つの要素ができるようにする。そして、再発防止、基本動作と歩行の訓練を1~2カ月で定着させ、家族の介助指導、自宅の環境調整をして、約3カ月後には退院する。

在宅復帰した後、社会参加できる環境はあるのかということが問題である。国土交通省は2014年に「健康・医療・福祉の街づくり」の推進ガイドラインを策定し発表した。冨山県富山市はそのガイドラインに沿った街づくりを進めており、地方の福祉都市を代表するモデルとなっている。

酒向博士は、病院に頼る医療から、ハンデキャップと共存し、街で元気になる街づくりをコンセプトとする「健康医療福祉都市構想」を提唱している。 リハビリ医療を中継とした高齢者対応医療を整備し、公園的歩道空間として、中心市街地に、子どもや健常者、障害者や高齢者も安心して安全、快適に歩ける歩道を確保し、健康医療福祉のサービスや情報を発信したり、従来のショッピング街に医療関連産業街を置いて相乗的経済活性化を図ったりしていくというもので、ヘルシーロードと呼んでいる。

具体例としては、東京都の山手通りの一部、渋谷区の初台駅から新宿区の西新宿五丁目駅までの「初台ヘルシーロード」として実現している。通りには児童施設、老人施設、学校、商店街、集合住宅、病院、オペラシティなどがあり、歩道は9メートルに拡幅され、安心、安全、快適に歩けるように整備された。他に世田谷区の二子玉川ヘルシーロードがあり、埼玉県志木市、愛媛県松山市などで検討が進んでいる。

こうしたノウハウを高齢化社会に向かう世界に発信することは先行している日本の果たすべき役割であろう。

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