2015年07月28日
Keywords: 再生可能エネルギー
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2015年12月に開催されるCOP21における国際枠組みの合意に向け、各国で準備が進められていますが、日本政府が示している温室効果ガス(GHG)削減目標は、欧州各国等と比較すると低い水準に留まっています。GHG削減に不可欠な自然エネルギー導入に関して、現状の課題と電力システム改革への期待について、認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所の松原弘直氏にまとめていただいたので、2回に分けてお伝えします。
日本においては、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを送電網に大量に受け入れることに対して、地域独占の電力会社が電力系統の様々な制約を理由に制限する動きが広がっています。
自然エネルギーの固定価格買取制度の成果と電力システム改革の課題
http://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035139.html
日本では、これまで太陽光や風力などの自然エネルギーは「安定的」に電気を供給できない電源として送電網を運営する電力会社にとって厄介なものと考えられて来ました。
しかし、スペインやドイツなど欧州の電力システムでは、国内の風力や太陽光を優先的に送電網に受入れ、水力発電や変動できる火力発電などからの電気を広域で整備された電力市場を通して利用し、柔軟な需給調整をしています。
これらの国々では、年間を通じた自然エネルギーによる発電量の割合がすでに2割以上となり、季節や時間によっては、電気の需要の約7割以上が自然エネルギーによってまかなわれるタイミングもあるほどです。
欧州ではすでに共通のルールとして、この自然エネルギーの発電所を優先的に送電網につなぐ「優先接続」と優先的に電気を供給する「優先給電」の双方が重要と考えられているのです。
日本では、FIT制度の法律によって条件付きの「接続義務」や「優先給電」はあるものの、欧州のような「優先接続」には残念ながらなっていません。日本では「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)で原子力発電や石炭火力発電が「ベースロード電源」と位置づけられ、電力会社の供給エリアごとにしか需給調整が行われないため、太陽光や風力発電に対して電力会社毎の「接続可能量」が設定される様な状況になっています。
2015年4月末に示された2030年のエネルギーミックス(電源構成)の政府案でも自然エネルギーの導入目標についても全発電量の24%程度となっており、2020年の時点で30%以上の目標を掲げる欧州各国と比べてとても低い割合に留まっているのです。自然エネルギーの導入目標をいかに高めることができるかが問われています。
ISEP「歴史的な流れに従ったエネルギー大転換を」
https://www.isep.or.jp/wp/wp-content/uploads/2015/04/ISEP-PR20150428.pdf
その中で、電力システム改革の第一弾として2015年4月から新たに運用が始まっている「電力広域的運営推進機関」には、全国的な電力需給の調整機能を強化する役割のほか、広域での地域間連系線の活用のルールづくりや広域的な電源の活用に必要な送配電網の整備計画の策定などが期待され、系統情報の公開、さらに広域機関システムの開発などが行われています。
自然エネルギーの普及においては、広域での電力系統の運用と共に、将来の電力システムを見通して広域での電力系統の整備が重要です。例えば現状では、電力会社間を結ぶ会社間連系線も現在はほとんど緊急時しか使われていませんが、原子力発電への依存度を限りなく低減し、優先給電のための火力発電所の出力調整、蓄電池としての揚水発電の活用に加えて、電力会社の供給エリアをつなぐ会社間連系線を自然エネルギーのためにも常時使用するためのルールを整備することも重要です。
(後編につづく)