ニュースレター

2015年10月13日

 

プレゼントツリー 記念樹の森づくりが、都市と地域をつなぐ

Keywords:  ニュースレター  NGO・市民  市民社会・地域  生態系・生物多様性 

 

JFS ニュースレター No.157 (2015年9月号)

写真:プレゼントツリー
Copyright 環境リレーションズ研究所 All Rights Reserved.

前号では、東日本大震災の被災地における取り組みとして、地域外との交流を通して復興の加速をめざしている「広野わいわいプロジェクト」についてお伝えしました。

今月号のニュースレターでは、広野わいわいプロジェクトでも実施される「プレゼントツリー」の取り組みをご紹介します。広野わいわいプロジェクトでは、現在進められている防災緑地計画の中で、プレゼントツリーの仕組みを活用して町内外の多くの人達が集まり、広野町に賑わいを取り戻していくための森づくりを行います。町外の人も植樹に参加し、植えた樹の里親になってもらうことで、長期的なつながりを生み出します。

「プレゼントツリー」とは

「プレゼントツリー」は、認定NPO法人 環境リレーションズ研究所が2005年1月に始めた取り組みです。「人生の記念日に樹を植えよう!」を合言葉に、大切な人や自分自身のために記念樹を植えて、森林再生と地域振興につなげます。

災害により被害を受けたところ、植栽が放棄されたところ、山火事や風倒被害で森林が消失したところ、里山として保全していくべきところ、水源の森として維持していくべきところなど、それぞれの植栽地で植林が必要な理由はさまざまです。

「プレゼントツリー」では、自治体や地元の人々と協力して、森林を保全できる体制づくりを行っています。都市の人びとに苗木の里親になってもらい、苗木を介して縁のできた中山間地域との交流人口を増やすことによって、森だけでなく地域も元気にしていきます。

例えば、あなたがAさんの誕生日に樹を贈りたいと思い、申し込んだとしましょう。すると、植栽地に一本の苗木が植えられ、シリアルナンバーにより識別管理されます。シリアルナンバーは、植えられた場所と併せて植林証明書に記載され、あなたからのメッセージカードを添えて、Aさんに届けられます。植えた苗木は、森林機能を発揮するまで10年、20年単位で保育管理されます。世界に一本だけの自分に贈られた樹に、長い時間をかけて愛着をもてるような環境がつくられています。


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樹も生き物ですから、枯れてしまうこともあります。そのため、万が一枯れてしまった場合には同じ時期に植えた元気な樹と交換されます。森林を育てていくには、地域とのつながりは欠かせません。プレゼントツリーの植栽地は、市民、行政、森林組合など多くの地元民の協力が得られるエリアであることも、選定の際に重視されています。

Aさんの元にはまた、苗木が植えられた植栽地情報を記したリーフレットも届きます。森づくりの背景や、植えられている樹種などを知ることができるのです。自分に贈られた樹に愛着を持ちながら、その樹のある森全体にも想いが至るような工夫がされています。

植栽地では、一般市民の参加者を募り、植樹イベントに加え、森の材を使ったワークショップや自然観察会など、森に親しめるプログラムが提供されます。Aさんや、Aさんに樹を贈ったあなたがこういったプログラムに参加することで、当地の人たちとも縁が生まれ、当地の賑わいや経済活性化にも寄与するようになり、森も更に潤っていく――「プレゼントツリー」の取り組みがめざしている姿です。

熱海の森での取り組み

「プレゼントツリー」の植栽地は2015年5月31日現在、国内外に24カ所あり、植えた樹の本数は約11万1千本になります。ここでは、静岡県熱海市にある熱海の森での活動をご紹介しましょう。

熱海の森は、かつては山村の生活や生産に密着した、森の恵みを与えてくれる里山でした。この豊かな森が放置され、急速に暗い不毛な森への道を歩き始めたのは、1960年代のことでした。薪や木炭あるいは肥料としての落葉などが不要になった、便利な生活への転換が始まりでした。鹿の害も森の荒廃に拍車をかけ、暗く不毛な森がいたるところに出現したのです。


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この荒れ果ててしまった里山を再生し、パラダイスと呼べるような素晴らしい森にするため、新しい里山のコンセプト「New Satoyama Paradise」を作成。1)里山の基本的機能をしっかりと認識してそれを守ってゆく(里山の基盤整備)、2)里山の持つソフトパワー(森の空間としての存在感や訴求感)を現代人向けに活用してゆく、3)かつての里山の恵みを、経済原理だけで評価するのではなく、現代人のニーズに合わせて復活させ、活用する、という3つの戦略を立てました。

熱海の森の整備・再生活動は、2010年4月にスタート。最初に取り組んだのは、真っ暗な森に光を入れるために、林内への陽光を遮断する不要木を伐採・整理することです。活動を開始した頃は、林床には下草も低木も生えておらず、昆虫や鳥などの生き物の姿もありませんでした。徐々にコアボランティアのメンバーも増え、小型チェーンソーの導入により作業の効率化も進みます。


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熱海の森の地形は急峻なので、多くの人に活動に加わってもらうためには、径路の整備が必要です。林内で伐採した木を玉切りにして、階段をつくるために有効利用。2011年秋からは、コアボランティアメンバー以外の一般参加者を募って、除伐や径路づくりのイベントを定期的に開催するようになりました。

除伐と径路整備が順調に進んだことで、いよいよコナラやヤマザクラなど里山由来の落葉広葉樹を植える準備が整いました。2012年4月を皮切りに、4回の植樹イベントを開催し、560本の苗木を植樹しました。周辺森林に鹿の棲息が認められたことから、苗木1本1本に獣害除けネットを取り付けて保護しています。


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適地での植樹作業が一段落した2013年11月からは、「New Satoyama Paradise」の実現に向けて動き始めました。まずは、林内で伐採したコナラの中径木をシイタケ原木とし、駒うちと本伏せ作業を実施。林内で発芽した埋没種子の実生苗の有効活用や、林内で採取したドングリからの育苗、その苗木をまた林内に植える活動につなげていきます。

「アーバン・シード・バンク」プロジェクト

熱海の森での活動がきっかけとなって2015年6月22日、「アーバン・シード・バンク」プロジェクトが始動しました。

日本の在来植物の約25%は、絶滅が危惧されています。主な要因は、自生地である里山が全国各地で見放され、荒廃していることにあります。そんな里山の地中に眠っている、在来種の種から育てた苗を都市緑化ビジネスに活用。里山に資金を還元することで、里山保全・再生の継続的活動を促し、全国に広がる荒廃里山および周辺地域の再興と、都市の生物多様性向上を同時に実現するプロジェクトです。

熱海の森での活動をモデルとして「少し頑張ればどこでも同じようにやれる里山保全の仕組み」として広く普及させ、天然林の約6割を占める里山の公益的機能再生を実現します。

「プレゼントツリー in 広野」

広野わいわいプロジェクトで実施される「プレゼントツリー in 広野」では、2015年12月に造成が完了する防災緑地を活用して、1ヘクタールの森づくりを広野町内外、首都圏の企業や個人の参画を得て行います。植樹する樹種は、地域性在来種の保全、防災緑地としての機能、観光資源としての機能、みかんやオリーブなど実の活用を考慮して選定します。

「プレゼントツリー」としての植樹は、2,000本が予定されています。1本1本の里親を募集し、2016年3月には里親を招いての植樹イベントを実施します。2015年7月11日に行われたワークショップでは、広野町民と首都圏からの参加者が意見を出し合い、里親が植栽地を訪れたくなるための工夫について検討しました。ワークショップで生まれたさまざまなアイデアがどのように活用されるのかも、楽しみです。

1人1人が持つ森への想い、人への想いを基点に、森と人、人と人とのつながりを取り戻していく「プレゼントツリー」の取り組みは、都市の生物多様性向上、被災地の復興など、幅を広げつつあります。今後の展開から、目が離せません。

スタッフライター 田辺伸広

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