ニュースレター

2018年05月16日

 

シリーズ:日本の「いい会社」第3回
会社が地域や社会にできること

Keywords:  ニュースレター  3R・廃棄物  企業活動  市民社会・地域  幸せ 

 

JFS ニュースレター No.188 (2018年4月号)

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イメージ画像:Photo by acworks.

JFSニュースレターでは、鎌倉投信株式会社取締役資産運用部長・新井和宏氏の著書『持続可能な資本主義』から、日本の「いい会社」の事例をシリーズでご紹介しています。第3回となる今回は、活動の基盤である地域を大事にする会社、革新的な環境技術そのものをビジネスにしている会社を取り上げます。


チーム力を生かし、地域のために:都田建設

静岡県浜松市にある注文住宅専門のハウスメーカー都田建設は、個人住宅の建設にとどまらず、週末菜園や無人駅舎をリノベーションした駅カフェの運営など、都田周辺で多岐にわたる事業を展開しています。

都田建設の最大の強みは、社員間のチーム力です。それを支えるのは「会社は学び場であり、自分を成長させる場である」と考える、社員の人としての成長に対する強い欲求です。社員同士が社長や会長も含めニックネームで呼び合うフラットな社風の下、年齢に関わらず互いの弱みを指摘し、助言し合うことが日常的に行われていますが、自分を成長させようとしているからこそ、他のメンバーからの助言を受け入れることができるのです。

チーム力を高めるためのユニークな仕掛けとして毎週行っているのが、社内バーベキューです。このバーベキューは全員の参加が必須。1時間、1万円の範囲内で、作って食べて片づけるまでをすべて行います。食べながらゲストと歓談もできるように進める必要があるので、効率のよい段取りや自主的に助け合う習慣が身につき、チーム力が高まっていきます。

都田建設が掲げるテーマは「エコロジー・家族の絆・地域のつながり」。木工教室や海ガメ放流会を開催したり、災害に備えて乾パンや発電機などを備蓄する施設をつくったりするなど、事業の枠を越え、自治体さながらの地域貢献を果たしています。ハウスメーカーは家族や地域のために存在する、という理念が根底にあるからです。ひとりひとりの成長の積み重ねと、毎週鍛えられるチーム力で地域全体を巻き込み、地域の力や価値を高めています。

子会社設立で地域貢献:ツムラ

創業から125年、東京に本社を置き、医療用漢方製剤で国内シェアが8割を超える株式会社ツムラは、障がい者雇用に積極的に取り組んでいます。2009年度に障がい者雇用3カ年計画を立て、2012年3月末には障がい者雇用率を3.93%に引き上げました。それ以降も働きやすい職場環境づくりを推進し、法定雇用率の2%(2018年4月1日から2.2%に引き上げ)を上回る3%台を維持しています。

ツムラは2009年、北海道夕張市に子会社「夕張ツムラ」を設立し、北海道全域で展開する漢方薬事業の拠点としました。夕張市は当時財政破綻していましたが、生薬の調達・加工・保管に適しており、ここに生薬施設を作れば地元への支援になるかもしれない、農家の人々とともに豊かな地域社会を作れれば、との考えからです。

ツムラ本体が進出するのではなく、夕張市に別法人を作ることで、税金を市に納めることができます。本業を着々と進めるだけで、地域貢献ができる仕組みにしたのです。それだけでなく、本社の役員や社員の一部は、毎年夕張市に「ふるさと納税」を行っています。

2010年には夕張ツムラは、知的障がい者の自立を目的に設立された農業生産法人「てみるファーム」と生薬栽培の委託契約を結びました。これにより、現地での障がい者雇用を生み出しました。この取り組みが評価され、後に「第2回 日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「経済産業大臣賞」を受賞しています。

ツムラは、こうして自らにとっても利益となる事業を通じた取り組みを行うことによって、自治体の税収増、障がい者雇用の拡大という、地域にとっての価値を生み出しているのです。

大手小売を巻き込んだリサイクルビジネスモデル:日本環境設計

東京の日本環境設計株式会社は、使わなくなった衣類やプラスチック製品をリサイクルする事業を展開し、さらに新しいリサイクル技術の開発やコンサルティングを行っています。コットンからバイオエタノール、プラスチックから再生油、ポリエステルの衣類から新しいポリエステル繊維にリサイクルすることで、燃料や原料に再資源化できるのです。

革新的な環境技術を生かした事業を立ち上げるときの大きな課題は、ビジネスモデルづくりです。どうすれば事業として成り立たせることができるのかは、環境問題だけに限らず、社会的課題を解決しようとする企業が直面する大きな課題です。

日本環境設計にとっての課題は、再資源化する資材を市民が負担を感じることなく集める仕組みづくりでした。そこで同社は、大手スーパーや、アパレルショップ、大手の生活雑貨店の店舗に回収ボックスを設置し、買い物客が古着やプラスチック製品を持ち込める仕組みを作ったのです。設置した店にとっては、来客数や売上の増加にもつながるというメリットが生まれ、環境活動に貢献することもできます。

日本環境設計は、リサイクルの仕組みをビジネスとして構築することで、スピーディーかつ大規模に社会を巻き込み、ごみの山を宝の山に変えました。今の勢いでいけば、国内のプラスチック生産のほとんどがリサイクルで足りるようになるとのことです。企業と社会の間に共通価値を見出した日本環境設計の事例は、社会的課題に取り組む企業にとっての大きな希望となるでしょう。


今回は、事業を通じて地域を支援する企業、社会にいい仕組みをうまくビジネスモデルに構築した企業の取り組みをご紹介しました。次回もまた違った切り口から日本の「いい会社」を紹介していきますので、どうぞご期待ください。

〈JFS関連記事〉
シリーズ:日本の「いい会社」第1回 社員の幸せと信頼を大切に
https://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035982.html
シリーズ:日本の「いい会社」第2回 会社に関わる人々の幸せを
https://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id036021.html

(編集:スタッフライター 坂本典子)

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