震災からの復興

2017年10月04日

 

放射線リテラシー必要

Keywords:  震災復興  原子力  幸せ 

 

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東日本大震災の被災者支援プロジェクト「JKSK結結プロジェクト」が、東京新聞への連載を通じて被災地復興の様子を伝える「東北復興日記」。今回は、2017年3月7日に掲載された、放射線について正しく知ることの必要性を伝える記事をご紹介します。

原発事故によって子どもから高齢者まで日常生活が変わり、心や体の健康がむしばまれていきました。外遊びや農作業、キノコ採りなど、地域で当たり前だったことができなくなったり、制限されたりするようになりました。

子どもたちには肥満が、中高年には脳卒中が増え、心的外傷後ストレス障害(PTSD)も指摘されています。追い打ちをかけるように、福島出身というだけで非合理的な差別(スティグマ)にもさらされてしまいます。そこには、自分自身をけがれた存在と見てしまう「セルフスティグマ」に至る危険もあります。

公害や病気などの犠牲者が社会から差別されることは過去にも起きており、水俣病やハンセン病が代表例です。2016年11月3日、「ベテランママの会」代用の番場さち子さんと一緒に、ハンセン病療養所の長島愛生園(岡山県)を訪れました。入所者の皆さんと交流し、資料館を見学する中、番場さんは「福島と同じ」と話していました。

感染症が低く薬剤治療が確立していても差別されているハンセン病を巡る状況は、福島で起きている状況にそっくりでした。差別された人々が自らの誇りを取り戻し、差別を乗り越えることは容易ではありません。出身地を伏せ、名前を変え、自分のことを語らずにアイデンティティーを隠すことは、自己否定となります。その状況を脱して自己を語ることができるようになった時、セルフエスティーム(自尊心)を取り戻せるのですが、それには時間がかかっています。

原発事故による放射線被害は、検診の結果、当初危惧されていたより少なかったことが科学的には証明されましたが、放射線に関する一般的な知識があいまいである事が問題を深刻化させています。放射線について正しく知る「放射線リテラシー」が必要です。

星槎大学副学長
細田満和子

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