震災からの復興

2017年08月27日

 

個人の「協働」地域の力に

Keywords:  震災復興  市民社会・地域 

 

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東日本大震災の被災者支援プロジェクト「JKSK結結プロジェクト」が、東京新聞への連載を通じて被災地復興の様子を伝える「東北復興日記」。今回は、2017年2月14日に掲載された、個人が活躍することの必要性を伝える記事をご紹介します。

ベテランママの会代表の番場さち子さんが福島第一原発に関する正しい情報を求めて頼ったのは、マスメディアではなく会員制交流サイト(SNS)だったことを前回、知りました。活動を共にしたのも、行政や組織の一員としてではなく、自立した個人として動く方々だったのですね。

災害のような非日常の事態に対処するには、既存の知識や組織では限界があります。特に東日本大震災のように、地震、津波、原発事故が重なって想定外の複合災害になると、決まり切った災害対策に従うだけではなく、高い専門性に裏打ちされた適応力を持ち本気で動ける個人の活躍が必要になります。

原発30キロメートル圏内の福島・浜通りからSNSで「医療が崩壊してしまう」とのメッセージを受け止めた市民が、「自分にできることは何か」と考え、医師につなぎ、応答した医療者や専門職の方たちが全国から集まりました。彼らは被災地に寄り添い、問題をつかみ取り、解決するために活動してきました。志のある人たちの自発的な「協働」が、ここで育まれたのです。

今、日本は大きな変化に直面しています。高齢化、少子化、多様化が進み、従来の考え方、方法、規範では対応できない事態が急増しています。番場さんにとって、かかりつけの病院が看護師不足で閉院したことが大きな困難の一つでした。それは被災地だけではなく、どこにでも起こる問題です。

被災地の課題を解決することは、これから日本各地で生じる人口減少や医療不足、産業構造の変化に対応するモデルになります。震災は、硬直化した現代の社会システムの課題を浮き彫りにした一方で、市民の力を見せてくれました。すべての地域の未来にとって、重要なヒントになるでしょう。

星槎大学副学長
細田満和子

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