2004年07月27日
Keywords: 食糧 大学・研究機関 生態系・生物多様性
長崎県衛生公害研究所と独立行政法人海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)は、閉鎖性内湾を生物の力で持続的に浄化するという実験を実海域で行い、その見通しを得た。この浄化手法は、富栄養化しつつある閉鎖性内湾で餌を与えずにカキの養殖をおこない、富栄養化物質である窒素やリンを栄養として吸収させることで取り除こうとするもので、漁業や地域産業の振興に貢献しながら同時に海の浄化を推進することができる。
窒素やリンは生物の成長に必要不可欠な要素で、農業では肥料として使用される。内湾でも、河川などから流入した栄養は魚介類の成長を支え、漁業によって再び陸上に上げられ、循環している。しかし栄養が多すぎると海は富栄養化して貧酸素や赤潮の原因となり、魚介類の成長を阻害してしまう。
餌を与えずに行う養殖は、富栄養化物質を効率的にリサイクルする手段の1つだが、従来の養殖では貧酸素などの影響で壊滅的な打撃を受けることがあった。そこで今回の実験では養殖場の海底に空気ホースを設置、水質が最も悪くなる夏の約3ヶ月間、海底から空気を送り込むことで、カキの生残や成長を確保、促進することができた。
曝気には設備費や電気代が必要となるが、毎年それ以上の収穫があれば持続的な浄化が可能。このカキ養殖事業と、海底や水質の浄化を両立できる手法を実海域で検証するのは世界で初めての試みで、現在長崎県と同センターは共同で特許出願中。今後も気象などの環境変動による効果の変化を見極めるため、2005年度までの計3回実験を繰り返し、浄化効果を定量的に把握する。
http://www.jamstec.go.jp/
登録日時: 2004/07/27 11:56:18 AM
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