生物多様性・食糧・水

2004年07月16日

 

新宮市、浮島の森 再生進む

Keywords:  生態系・生物多様性  地方自治体  政府 

 

和歌山県の太平洋岸にある新宮市には、太古の昔から生い茂った植物の残骸が泥炭化し生成された浮島がある。その浮島の森には学術的にも珍しい植物が群落し、国の天然記念物に指定されている。

しかしここ数十年の間に、高度経済成長にともなう周辺の開発、宅地化が進み、沼に流れ込んでいた地下水が涸渇、開発による土砂が流れ込む、などで沼が乾燥化し、浮島は座礁。また生活雑排水、下水などの流入で沼の水質が悪化、湿地帯の環境悪化だけでなく浮島の森も死滅の危機に瀕するという事態になっている。

市は国、県とともに長年対策に取り組んできたが、最終的に近くを流れる1級河川、熊野川からの導水によって水質浄化をはかることに決定。2003年9月から本格的な導水を始めた。森の中の遊歩道の脇にパイプを通し、毎秒、最大30リットルの河川水が沼にそそがれている。

その結果、2004年3月の調査では、導入前4.7だったBOD(生物学的酸素要求量)が1.2に、濁度も20から5.3へと大幅に改善。以前はどす黒く濁っていた沼も、今は小魚が泳ぐのが見え、水ゴケが増殖するなど湿地や森の再生が進みつつある。

浮島はかつては沼の水面の昇降とともに昇降し、強風にあおられ移動することもあり、地表を強く足踏みすると島が揺れ動きもした。調査により現在陸地として使われている場所ももとは沼だったこと、座礁は部分的なものであることなどがわかり、これから沼の水域拡大、再生が進めば以前の浮島に近づくことも可能かと期待されている。







登録日時: 2004/07/16 10:08:00 AM

英語記事はこちら


 


 

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