ニュースレター

2017年04月12日

 

企業のSDGsへの取り組み ~ 日本企業の先進事例

Keywords:  ニュースレター  CSR  企業活動  政策・制度 

 

JFS ニュースレター No.175 (2017年3月号)

イラスト
Image by カメラ兄さん

2015年9月に国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。これは2015年に終了した「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継ですが、MDGsが途上国の開発を主な目的としていたことに対して、SDGsは、気候変動やエネルギー、健康や雇用といった先進国でも深刻化している課題なども取り上げており、先進国も含めてすべての国を対象としていることが特徴の1つです。政府のみならず、産業界や市民社会など、地球上のすべての人を対象とした共通目標という位置づけなのです。

持続可能な開発目標(SDGs)と企業

SDGsには、17の持続可能な開発目標とそれを支える169項目の具体的なターゲットが盛り込まれています。すでに、この17の目標について、149カ国の達成状況を、世界銀行や国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)などのデータを元に評価する「SDGsインデックス&ダッシュボード」が公表されるなど、目標に向けての取り組みや成果を比較することで推進していこうという動きも活発になっています。

他方、投資の際に環境・社会・ガバナンス(企業統治)といった非財務情報を考慮する「ESG投資」が世界的に拡大しています。現在、全世界の資産運用残高のうち約3割がESG投資だといわれており、特に欧州では約6割を占めるほど盛んになっています。日本ではESG投資の割合はまだほんのわずかですが、厚生年金と国民年金の積立金約130兆円を運用する世界最大の年金基金GPIFが国連責任投資原則に署名、ESG投資に乗り出しつつあり、今後日本でのESG投資の割合も大きくなっていくと考えられています。

SDGsへの取り組みや成果は、ESG投資の評価軸としても活用されるようになりつつあります。そういった意味からも、また全人類が取り組むべき課題に重ねて自社の事業開発やCSR(企業の社会的責任)の取り組みを進めるという意味からも、企業がいかにSDGsに取り組むかは、今後ますます重要になってくると思われます。

しかし、企業の「SDGsが重要なことはわかるが、具体的にどのように活用していけばよいかわからない」という声も良く聞きます。

このような状況を背景に、JFS代表の枝廣淳子が東京都市大学環境学部で指導してきたゼミ生の1人、横山聖弥君が「SDGsへの対応 ~日本企業と海外企業の比較」という研究を行い、卒業研究として発表しました。その研究結果を説明しながら、現在の日本企業の中での「SDGsへの取り組み」先進事例を紹介しましょう。

調査対象企業の選定

日本企業については、日本で唯一のCSRランキングである「東洋経済CSRランキング」を、海外企業は、カナダの出版社であるCorporate Knights社が選定し世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で発表される、「世界で最も持続可能な100社(以下「Global 100」)」を選定基準とすることにしました。それぞれのランキングの上位50社、計100社を今回の研究対象とします。

SDGsは新しい分野であるため、取り組みを行っている企業の数はまだ多くはありません。そこで、日本企業・海外企業ともに環境、社会、経済面で外部評価の上位にランクしている企業を選定することにしたのです。

企業のSDGsへの取り組みレベル

予備調査を通して、SDGsに関する記載のある日本企業・海外企業の記載情報を収集し、分類しました。その結果、以下のレベル感を持った6つのグループが設定されました。なお、一社で複数のグループに該当する場合は、より上位のグループに分類します。

0.SDGsについて記載なし
1.SDGsについて記載がある(キーワードとして登場している)
2.SDGsが事業活動に関わりがあるものだと示している
3.SDGsを重要項目として捉えている(CSR戦略やマテリアリティの策定に使用している)
4.SDGsのテーマをピックアップし、具体的な取り組みを述べている
5.SDGsに関する具体的な取り組みを述べるとともに、具体的な成果や目標値を記載している

日本企業と海外企業のSDGsへの取り組みの違いは?

調査結果の概要を紹介しましょう。

まず、日本企業、海外企業の取り組みグループ分類結果です。グラフを見ると、日本企業は海外の先進企業に比べると、「言及のみ」「重要項目としての認識」が多く、事業との関連性や具体的な取り組み、成果や目標といったところへの踏み込みが少ない傾向がわかります。

図:SDGsへの取り組みグループ

グループ0を0点、グループ5を5点として、点数化し、平均点を比べてみると、日本企業が1.96点に対し、海外企業が2.5点と、日本企業よりも海外企業のほうがレベル感の高い取り組みが多いことがわかります。

ほかにも、日本企業と海外企業のどちらでも、企業の規模がSDGsへの取り組みに影響していること、また、エネルギー、素材、機械などのB to B企業では、日本企業では、極端に点数が下がるのに対し、海外企業ではその傾向が見られなかったなどの結果が得られました。

このような結果をもとに、横山君は「全体的に、日本企業は海外企業に比べて、具体的な取り組みが少ない傾向がある。SDGsへのトップコミットメントやCSR戦略策定時の使用に関して、具体的な取り組みや、取り組みの成果や目標が記載されていない。まずは、自社の取り組みをSDGsの観点から整理し、テーマごとに紐づけてみることが必要だと考える。そこから、消費者や投資家への呼びかけや社員啓発など、様々なシーンでSDGsを活用できるだろう」と考察しています。

先進的な取り組みの例

内外企業の取り組みのお手本やヒントになることを願って、横山君が卒論で挙げている「調査の中で見いだした他社のお手本になる取り組み事例」から、日本企業の中でも先進的にSDGsに取り組んでいる企業を2社紹介しましょう。

今回の調査で、最高レベルであるグループ5に分類されたうちの1社であり、JFSの法人会員でもある味の素と、今回の調査対象には入っていませんが、卒論でSDGsへの取り組みをグループ分けする際に参考にしたサラヤの取り組みです。

○味の素(食品)
http://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/pdf/2016/ajinomoto_csr16.pdf

「味の素グループ サステナビリティデータブック2016」では、約4ページを割いてSDGsと自社との関わりや取り組みについて説明しています。

まず「味の素グループのマテリアリティ」のページで、「味の素グループでは、これまでも『21世紀の人類社会の課題』をはじめ、グローバルな課題解決と事業のかかわりについて議論を重ねてきましたが、SDGsを踏まえて課題やアプローチを見つめ直す必要があると考えました。そこで、社外有識者へのアンケート・対話等を通じて、事業活動とSDGsのかかわりについて整理を開始しています」と述べています。

あとのページでは、内外の有識者を対象としたアンケート調査を実施したことを述べています。「SDGsの17の目標のうち、味の素グループが解決に寄与するべき項目や、どのような貢献に期待するか、SDGsを踏まえて見直すべきマテリアリティ項目はないか等をアンケートでお伺いしました。いただいたご意見は社内で共有し、今後の議論に役立てていく予定です」。

また、「事業とかかわりの深いSDGsの目標」として、目標2、3、5、8、12、13、14、15、17を挙げ、それぞれの目標に関連する自社の主な活動を紹介しています。

このように味の素では、自社の取り組みを考える上での枠組みとしてSDGsを活用し、17の目標のそれぞれと自社の事業との関連性、主な活動を紐づけているなど、先進的な事例の1つです。

○サラヤ(一般消費財)
http://www.saraya.com/csr/report/images/report2016.pdf

サラヤの持続可能性レポート2016には、その冒頭にある「サラヤの方針」に「サラヤは本業と社会貢献の両輪でSDGsを推進します」として、SDGsを位置づけています。

そして、「SDGs対照表」として、「サラヤにとってのマテリアルなSDGs」として、17目標のうち14の目標について、「サラヤと関連のある提案目標」「該当する商品・サービス・プロジェクト・CSRなど」を掲載しています。特筆すべき点は、それぞれのSDGs目標が、サプライチェーン上でどの部分に関わっているのかを、「上流~サラヤ~下流」と分けて該当する箇所を明示していることです。

自社にとっての基本的な方針に位置づけ、各目標について自社との関わりを考え、かつ、自社のみならずサプライチェーン全体での取り組みを考えようという姿勢は、他社のモデルになることと思います。

最後に

横山君の結びの言葉を抜粋引用して、終わりにしたいと思います。

「日本企業はSDGsへの具体的な取り組みが少ないのが現状である。自分たちがSDGsにどのように関わっているのかを認識する必要があると考える。味の素のように社外からの評価を取り入れるといったものや、サラヤのようにサプライチェーン全体を通して関わりを考えるというのは、その良い例だろう。それによって何が足りないのか考えることができるはずだ。

世界各国で多くの企業がSDGsを企業活動する上での指標にすることができれば、SDGsは、世界共通の目標として大きな意味を持つだろう。政府や自治体、NPO、市民団体など、様々なセクターと協力し、活動していけるという点においては、企業がSDGsに取り組む意義は計り知れない。一つ一つの企業がSDGsに取り組むことは、世界共通の目標達成に向けた大きな一歩になると考える」。

横山聖弥、枝廣淳子

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