エネルギー・地球温暖化

2015年08月14日

 

電力システム改革への期待と自然エネルギーの本格的導入への課題(後編)

Keywords:  再生可能エネルギー 

 

写真:浜岡原子力発電所近辺の風力発電
イメージ画像: Photo by kontenten Some Rights Reserved.

前編では、温室効果ガス削減に不可欠な自然エネルギー導入に関して、現状の課題と、電力システム改革第一弾として2015年4月から運用が始まっている「電力広域的運営推進機関」への期待についてお伝えしました。後編では、2016年度以降の施策である、電力システム改革の第二段階、第三段階への期待についてお伝えします。

2016年からスタートする電力の小売り全面自由化では、消費者が電気を適切に選択できる仕組みを消費者の権利の立場からも整える必要があります。そのために、欧州ではすでに実現している自然エネルギーの割合などの電源構成の表示を、どのように実施すべきかの検討が始まっています。

自然エネルギーによる電気が何処で発電され、どのように取引されて、消費者に届けられるかを知る必要があるのです。電源構成などの表示義務については、消費者が毎月の明細書やインターネットなどを活用して常に確認ができる必要があります。また、電源の表示にあたっては、電気を販売する電力会社(小売電気事業者)の情報公開と共に、卸電力取引市場の透明性や情報公開も重要になります。

さらに、自然エネルギーの電気をFIT制度の下で取引する際には、「回避可能費用」の算定方法が重要ですが、これまでの算定方式を「市場連動」にする検討が進められています。現在の卸電力取引市場は、取引量が全体の1%程度しかなく、小売電気事業者が自然エネルギーの電気をできるだけ取扱うためには、より長期的かつ安定した算定方法が求められています。

電力システム改革の第三段階としての発送電分離は、送配電事業の中立性の確保が重要となります。電力システム改革の基本的な方針を定めた「電力システム改革専門委員会」(2013年2月に最終報告書)では、中立性・公平性・透明性を実現する最もわかりやすい(メリットの大きい)形態として「所有分離」が検討されていました。

「電力システム改革専門委員会報告書」(2013年2月)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/report_002.html

しかし、最終報告では改革の効果を見極め、それが不十分な場合の将来的検討課題として先送りされました。2015年6月に公布された電気事業法の改正では、一般送配電事業者や送電事業者が小売電気事業や発電事業を禁止する「法的分離」にとどまり、取締役の兼職禁止等の行為規制はあるものの、資本関係を持つことまでは禁止していません。

欧州では、EU指令(2009年)により、すでに所有分離を定め、多くの国で実施されており、強力な規制機関や電力市場が十分に機能することにより全面的な小売り自由化や再生可能エネルギーの大量導入が達成されています。

また、この発送電分離を「法的分離」として実施する時期を2020年度として、本来の工程の中で最も遅い時期に設定された理由は、一般電気事業者の現状に配慮していると考えられます。さらに、電力システムの公平性や中立性を確保するために重要な規制機関として設立される「電力・ガス取引等監視委員会」の独立性が確保されることが重要です。ドイツでは、連邦ネットワーク庁(BNetzA)がその機能を担い、電力市場の公平性を保っています。

ドイツの連邦ネットワーク庁 BNetzA
http://www.bmwi.de/EN/Ministry/The-Ministrys-Agencies/federal-network-agency-bnetza.html

日本では経産省の「8条委員会」として設立される「電力・ガス取引等監視委員会」が、「取引の監視」と「行為規制の実施」の機能を持ちますが、その体制や権限がどこまで有効に機能するかが問われています。

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所
松原弘直

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