ニュースレター

2007年11月01日

 

CSRコンパスが導くCSR経営の未来へ - 株式会社イースクエア

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JFS ニュースレター No.62 (2007年10月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第65回
http://www.e-squareinc.com/

日本のCSRの広がり

近年、持続可能な企業経営について、CSRという略語をよく耳にするようになりました。Corporate Social Responsibilityの略で「企業の社会的責任」と訳されています。日本では、2003年以降、急速に企業経営の柱となる考え方として広まりを見せました。CSRが急速に広まった背景には、企業のグローバル化、環境問題への危機意識の高まりがあり、相次ぐ企業の不祥事から、市民の信頼を取り戻すため、企業による社会貢献の姿勢が一層求められるようになってきたことが大きいといわれています。

株式会社イースクエアは、日本国内でのこうした流れに先駆けて、企業による、環境に配慮した経営への変革と事業革新を支援する会社として、2000年に設立されました。現在の従業員数は約20名。CSRの考え方が国内で広がるにつれ、環境から社会的活動へのサポート、そしてCSR経営のコンサルティングへと事業を広げ、CSR・サステナビリティ・環境事業領域で、2001-2006年の間に約300のプロジェクトを手がけた実績を誇ります。今回は、イースクエア社の取り組みと、CSR経営に特化した、国内企業間の情報ネットワーキングサービス、CSRコンパスをご紹介します。

イースクエアの取り組み

イースクエアという社名には、Eの二乗という意味が含まれています。経済
(Economy)に環境(Ecology)のEを掛け合わせ、融合させていくというものです。同社は、クライアント企業への戦略づくり、コミュニケーション、人財育成、マーケティング、事業開発といった個別支援活動と、企業間ネットワーク運営の二つを事業の柱としています。

イースクエアの事業の核は、企業のビジョンづくりのサポートです。CSR経営への変換をはかりたい、自社の2020年環境ビジョンを作りたいがどうしたらよいのか、といった要望に応え、CSR経営を通じた企業戦略のビジョンづくりからサポートします。これでビジョンができた。さて次は。作ったビジョンに向けて、何をどうしたらいいのか、という段階で、中長期の具体的なロードマップへと落とし込んでいく過程を手助けしていきます。こうして戦略ができあがってくると、社内・社外コミュニケーションはどうするのか、人材育成、商品やサービス開発・マーケティングはどうするか、といった相談に応じていきます。

イースクエアは、個々の企業に対してCSR経営のコンサルティングをしていく中で、持続可能な社会へ貢献する事業活動のために知っておきたい情報には、業種・業態の違いを超えて、共通するものが多いことに気づきました。CSR経営を目指す企業間で、こうした経験やノウハウを共有してはどうか、情報を共有するだけでなく、企業以外の、多くのステークホルダーを巻き込みながら、一緒に考えていくプラットフォームが必要なのではないか。ここから、CSR経営を目指す企業間の新たなネットワーク、CSRコンパスへのアイデアが生まれたのです。

CSRコンパスとは

CSRコンパスは、2007年4月にスタートしたばかりの、CSR経営を支援するために作られた情報プラットフォーム型企業ネットワークです。国内の大企業8社(三菱UFJフィナンシャル・グループ、松下電器産業、積水化学工業、富士フイルム、中外製薬、三菱商事、出光興産、日産自動車)がローンチングパートナーとなり、グローバルに事業展開している日本企業、全部で67社(07年10月現在)が参加しています。CSR経営の観点から情報提供する有料の会員制サービスで、「業種業態の違いを超え、これほどの規模の企業が集まるネットワークは、世界でも画期的な試みと言えるでしょう」とイースクエア社取締役・エクベリ聡子さんは胸を張ります。
http://www.csr-compass.jp/

CSRコンパスでは、ウェブサイト上に、1)グローバル・ベンチマーク、2)メンバーズ・ベンチマーク、3)ステークホルダー・レーダー、4)エグゼクティブ・ブリーフィングの4種類の情報サービスと、ウェブサイト以外での、5)CSRリーダーシップ・ミーティングを合わせ、全5種類のサービスを提供しています。

国内外の先進的な取り組みを紹介するのが、グローバル・ベンチマークおよびメンバーズ・ベンチマークです。ここでは世界中の先進企業による取り組みを、ビジョンと戦略、ガバナンスとマネジメントなど、CSR経営に必要となる8側面、業種区分、エリアなどに分類しており、データベースとして利用することもできます。

また、企業を取り巻くステークホルダーの動きを知るのが、ステークホルダー・レーダーです。ここでは、オピニオンリーダーとして活躍するNGO/NPOやシンクタンクの寄稿や、欧米やアジアの動向分析を紹介しています。その他、イースクエア社社長、ピーター・D.ピーダーセン氏書下ろしによる、経営者向けのブリーフィング・レポートなどもあり、質・量ともに充実した情報を提供しています。これらの会員専用ウェブサイトでのサービスのほか、CSR・リーダーシップ・ミーティングでは、参加企業が集まり、テーマを決めて議論しながら理解を深める場を設けています。

このように、CSR経営に特化した観点からポイントを整理し、さらなるCSR経営推進を提言していくCSRコンパスの取り組みについて、世界の先進企業、あるいは国内の他社がこれほどに努力しているのだということを客観的に伝えられるため、社内全体へのCSR経営推進の強い動機づけとして役に立っている、と会員企業からの声が届いています。同様に、上層部の理解を得られないと社内でのCSR推進に苦労している企業の担当部署からも、高い評価を受けています。

CSRコンパスを運営していく上でのやりがいを、エクベリさんはこう語ります。「CSR経営というのは本当に幅広い知識・見識が必要です。CSRコンパスから出していくための情報を集め、有識者からお話を伺いながら、いろいろな観点を吸収することができるので、視野が広がり、知識のバランスがよくなったと思います。また、世界の動きを、流れとして感じ取ることができるのです」。例えば、最近はアメリカでの温室効果ガスをめぐる、企業、市民(NGO)、行政、金融のそれぞれの動きが点から線になり大きな変化を生みだしつつあることを感じているといいます。

「また、CSR経営に真摯に取り組む67社もの日本の大企業が登録しているネットワークは、それ自体に価値があると言えます。広く世界中から、企業だけでなく、NGOや研究機関など、さまざまなステークホルダーからの情報が寄せられ、議論を重ねることによって、より幅広く、さまざまな観点から、CSR経営のあり方を一緒に考えていける場にしたいと思っています」と、エクベリさんはCSRコンパスの今後に、夢と期待を抱いています。

CSR経営のこれから

最後に、イースクエアのコンサルティング業務や、CSRコンパスへの取り組みから、今後のCSR経営の課題とは何かを伺ってみました。「まず、最近の日本企業はCSR経営への理解が強まり、大変熱心に取り組んでいます。ところが、より長期的なビジョンづくりや戦略づくりにおいては、どのように環境問題や社会の要請をとらえ、取り組みの優先順位を付けていくかに不安を持っています。一方、海外の先進企業は、NGOなど、外部のステークホルダーとの対話や協働を積極的に行い、さまざまな視点を得ながら、自らの経験にしています。日本企業も、さまざまなステークホルダーと、より積極的に対話や協働を行い、今後考えていかなければならないテーマへのヒントを得て、迅速に、的確に対応していく必要がありますね」。

イースクエアは、さまざまな業種のクライアントとともに、CSRのあり方を考え、潮流の1歩2歩先をとらえながら、企業がどの方向へ進むべきなのか、CSR経営のたどるべき道しるべを示す集団なのだとエクベリさんは考えています。日本企業がグローバル社会での存在感を増し、CSR経営、そして持続可能な社会へと、世界をリードするその日に向けて、イースクエアは今日もがんばっています。


(スタッフライター 坂本典子)

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