ニュースレター

2007年05月01日

 

低炭素社会の実現に向けて、今すぐ行動を! - エコライフへの取り組み

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JFS ニュースレター No.56 (2007年4月号)

家庭部門のCO2が増えている

地球温暖化防止のための京都議定書が発効後、2007年2月で丸2年が経過しました。議定書では、2008年から2012年までの5年間の約束期間中に、先進国全体の温室効果ガスの合計排出量を、1990年に比べて少なくとも5%削減することを目的としています(第3条)。

日本は1990年比6%削減約束を達成するために、内閣総理大臣を本部長とする地球温暖化対策推進本部の設置や、国、地方自治体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための「地球温暖化対策推進法」の制定など、温暖化防止のためのさまざまな施策が、この10年間に試みられてきました。2005年4月には、確実な達成とさらなる長期的・継続的な排出削減へと導くために、「京都議定書目標達成計画」も策定されました。

けれども環境省の速報によれば、2005年度の温室効果ガス排出量は、1990年比8.1%増の13億6400万トンです。これは、2004年度の13億5500万トンよりもさらに0.6%増加しており、1990年比6%の削減のためには、森林吸収の3.8%や京都メカニズム(排出量取引等)で1.6%の削減を確保できたとしても、さらに8.7%の削減が必要であることを示しています。

2005年の排出量速報値(環境省)
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=8615&hou_id=7603 

温室効果ガスのうちメタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)、代替フロンなどは基準年より大幅に減少していますので、削減が必要なのは主として二酸化炭素(CO2)です。エネルギー起源のCO2のなかで排出量が最も多いのは、全体の4割近くを占める産業部門の4億6600万トン(基準年比マイナス3.2%増)ですが、年度別にみるとこの部門は微増もしくは減少傾向にあります。それに対し、大きく増加している部門が、運輸部門(同18.1%増)、商業・サービス・事業所部門(同42.2%増)と家庭部門(同37.4%増)です。

2005年度に商業・サービス・事業所部門と家庭部門のCO2排出量が大きく増加した要因は、厳冬による暖房需要の増加にあると分析されています。2005年度は冬季だけでなく、夏の平均気温も真夏日日数(日最高気温30℃以上)も平年を上回りました。けれども、ほぼ平年並みの冬の寒さだった2004年度でも、この2つの部門のCO2排出量は、基準年比それぞれ37.9%増と31.5%増であることをかんがみれば、私たちは温暖化防止のために、もう一度自分のワークスタイルや、ライフスタイルを見直す必要があるといえるでしょう。

「チーム・マイナス6%」の取り組み

政府の地球温暖化対策推進本部では、2005年4月より、国民に向けた情報提供、地球温暖化対策の普及啓発を目的として、経済界と協力して進める大規模な国民的運動「チーム・マイナス6%」を立ち上げました。この背景には、これまでに実施した意識調査などの結果から、国民の地球温暖化防止のための取り組みの意欲は高いにもかかわらず、普及啓発・情報提供などに対する体制整備が不十分であったために、行動に結びつきにくかったことが考えられます。

「チーム・マイナス6%」とは、一人ひとりのおこす小さなアクションを大きく展開していくために、個人、企業、団体がチームとなって結集して温室効果ガスの6%削減活動に取り組んでいくもので、以下の6つの具体的な温暖化防止行動の呼びかけを行なっています。

・冷房は28度に設定しよう(温度調節で減らそう)
・蛇口はこまめにしめよう(水道の使い方で減らそう)
・エコ製品を選んで買おう(商品の選び方で減らそう)
・アイドリングをなくそう(自動車の使い方で減らそう)
・過剰包装を断ろう(買い物とゴミで減らそう)
・コンセントをこまめに抜こう(電気の使い方で減らそう)

趣旨に賛同する個人や企業・団体は、ウェブページから簡単に申し込むことができ、2007年4月10日現在、全国の1,090,629人の個人と11,038団体がチーム員宣言をして、身近な温暖化防止行動に取り組んでいます。チーム員は名刺やポスター、社内報などにロゴマークを使用することができるので、チーム員宣言は社内外への普及啓蒙活動やイメージの向上にも貢献するものといえるでしょう。

たとえば、オフィスの冷房の温度は28℃、暖房は20℃に設定し、夏は「クールビズ」、冬は「ウォームビズ」などのビジネススタイルを推奨する取り組みは、認知度も導入率も年々高まっています。導入によって電気代が節約できたという報告も寄せられており、今後はこの取り組みをビジネスの場面だけでなく、家庭での衣・食・住に取り入れていく「うちエコ」へと拡大することが期待されています。
http://www.team-6.jp
http://www.team-6.jp/report/movement/index.html
http://www.japanfs.org/db/1069-j
http://www.japanfs.org/db/1109-j
http://www.japanfs.org/db/1612-j

北海道札幌市のエコライフへの取り組み

人口約188万人の北の都市、北海道札幌市では、「2017年に市民一人当たり二酸化炭素(CO2)排出量を1990年レベルと比べ10%削減すること」を目標に、2005年2月より「さっぽろエコライフ10万人宣言」を実施しています。

このような取り組みの背景には、同市で排出されるCO2が、工場などから排出されるものより、市民生活に関わりの深いものが際立って大きな割合を占めているということがあります。運輸部門、商業・サービス・事業所部門、家庭部門の3つの合計が、札幌市では約9割にもなっているのです。

このため、同市ではCO2削減のアクションプログラムのなかで、エコライフの宣言者数を、10万人の市民に参加してもらうという数値目標に掲げました。エコライフの宣言者が増えることで、市内全体に環境行動の機運が高まり、グリーンコンシューマーやエコドライバー、省エネ行動が常識となっているような市民によって、「世界に誇れる環境の街」になることを目指しているのです。

「さっぽろエコライフ10万人宣言」は、「使用していない部屋のあかりを、こまめに消します」や「服をもう1枚着るなどして、暖房を節約します」などの20項目のなかから5項目以上を選択して宣言するもので、宣言したい項目が5つに満たない場合は、自分のオリジナルな宣言を合わせることができるというユニークなものです。2007年3月31日現在、宣言者は127,628名(子ども版26,489人含む)で、2006年10月に目標の10万人に達しました。

10万人という目標を達成するために活躍しているのが、「エコライフ宣言推進員」と呼ばれる人たちです。彼らは、学校、町内会、イベントなど人が集まる場所に直接出向き、環境にやさしい行動の大切さを説明し、エコライフ宣言を行なう人を募っています。

自分のエコライフ度を判定する

札幌市のエコライフ宣言は、宣言をしただけで終わるのではありません。ポイントで計算できる環境家計簿をつけることによって、1週間の生活を振り返り、自分のエコライフ度を判定することができるのです。

たとえば、使わない部屋の電気を1時間消すと、1ポイントで25gのCO2を削減できます。日曜日から土曜日までのポイントを書き込み、合計ポイントに25gを乗じたものが1週間で削減できるCO2の目安量になります。同様に、暖房を1時間止めることで削減できるCO2は1ポイント239g、買い物の際にレジ袋をもらわないとレジ袋1枚につき10gの削減というように、1週間の行動で削減できるCO2の目安を簡単に計算できるしくみです。

さらにそれを52週間継続することで、1年間に削減できるCO2の量を測ることが可能となるのですが、ガイドブックでは、CO2の削減量だけでなく、原油換算で何リットル分になるのか、いくら節約できたか、トドマツに換算すると何本分になるのかが比較できるように記載されています。

さらなるエコライフの広がりのために

私たちの暮らしは、多くの便利な機器類に囲まれています。家電製品の省エネ化も大きく進んでいますが、1990年に比べてパソコンを始め、大型テレビ、温水式シャワートイレなどの新たな家電製品の普及が、新たなCO2を排出する原因ともなっています。

それが地球環境にどのような負荷を与えているのか、2006年に世界中で公開され、2007年1月には日本でも公開された映画「不都合な真実」や、同年2月の気候変化を研究する科学者から国民へ向けて、気候の安定化に向けて直ちに行動することを呼びかける、緊急メッセージなどによって、情報を受け取る機会は増えてきました。

具体的な行動に結びつけていくには、一人ひとりができることから取り組みを進めつつ、これまでの価値観を転換していく必要があります。低炭素社会の実現に向けて、自分の日常生活のなかでできることから、今すぐに行動をおこしましょう。


(スタッフライター 八木和美)

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