トップページへ
Change Language
What's New
JFSについて
情報データベース
ニュースレター
JFS指標
日本基礎情報
Japan Value
行政・市民
企業
海外
環境マンガ
JFS会員のページ
バイオミミクリ・プロジェクト
カレッジ
講義録
カレッジについて
ご参加のお誘い
JFSグッズ
お問い合わせ
サイトインデックス
会員・サポーター募集
JFSダイジェスト登録
Sustainability College
ダイワJFS・青少年サステナビリティ・カレッジ



地域を潤す地域のお金

日常生活で私たちがお金とかかわる場面は主に3つある。まず、モノを買うこと、つまり消費すること、2つめはお金を稼ぐ場面、働く場面、3つが投資や預貯金という場面だ。それぞれの場面で、どうすればエコなお金の流れをつくれるかが今問われている。消費に関しては例えばフェアトレードという手法がある。働き方という点では、「エコ就職」という、環境や人権に配慮した持続可能な方向へとお金の流れを変える働き方が徐々に広まってきた。投資や預貯金については、SRIや環境配慮を基準に金融機関を選ぶという発想がある。この中の、貯金の部分をフォーカスして、地域を豊かにするお金のあり方について考えてみたい。

●これまでのお金の流れ

私たち日本人の多くが、どういうところにお金を預けているかというと、4分の1が都市銀行、21%が郵便貯金、18%の地銀とあわせて、ここまでで3分の2を占める。こうした金融機関が持っている特徴のうち、ほかの業種にはあまりないのが信用創造という点だ。この機能があることで、金融機関は資産を運用し、実態以上のインパクトを持つことになる。

金融機関に預けたお金は、どんなところに流れているのだろうか。預金量に対する貸出金量の割合を表す預貸率を地域別に見ると、貸出金が預金額を上回るのは東京だけで、ほかではすべての地域で貸出金が下回っている。これは地方のお金が東京に吸い上げられていることを示している。つまり地域のお金が地域で回っていないのだ。

地方から吸い上げられた預金は、例えば東京の大企業への融資に使われる。大手エネルギー会社を経由して、原発の推進に使われているかもしれない。消費者金融会社を通して、多重債務者を生み出す構造にもつながっているかもしれない。良しあしはともかくとして、環境や社会への影響が大きいことは確かだ。つまり、口で表現するより、「カネ」で表現したことが現実を動かしている。通常の預貯金では、自分の預けたお金の流れを追えないのが欠点で、預金者にはどういう目的で使ってほしいという選択肢がほとんどなかったのが、従来のお金の流れである。

一方で、環境破壊や人権侵害につながらない事業を行っている企業や、身近な地域や社会の問題にお金が流れるようにする貯金のあり方を「エコ貯金」と呼んでいる。私が以前に事務局長を務めていたNGO「A SEED JAPAN」では、金融機関を選び直し、「エコ貯金をする」という宣言を集めるキャンペーンを行っている。2005年3月から2007年12月末時点までに、1000人以上の人が宣言し、総額7億20000万円以上の貯金が動いたことになる。A SEED JAPANが東京にあることもあり、宣言前は参加者の多くが都市銀行に預けていたのだが、宣言後は、労働金庫や信用金庫、少数ながらNPOバンクに預け直す人が出てきた。キャンペーンでは、具体的に特定の金融機関を薦めるわけではないのだが、預金者がお金の流れを考えるきっかけになっているといえるだろう。

●NPOバンクとは

私は2005年10月、生まれ育った名古屋を拠点に、東海地方初となるNPOバンクmomoを設立した。NPOバンクとは、市民、NPO、企業などさまざまなセクターから出資という形でお金を集め、それを原資にNPOやコミュニティビジネスなど、社会性のある事業に融資する金融システムだ。今全国には9つのNPOバンクがあり、momoが一番西に位置している。間もなく熊本でも始まりそうだ。

NPOバンクの特徴の一つは審査方法にある。通常の銀行の融資では過去の実績が重視されるが、NPOバンクの場合はそれだけではなく、融資によって事業がどうなるか、地域がどうなるかという、事業の将来性を見る。専門家だけではく、NPO活動家や地域の主婦の方なども交えたメンバーで審査を行い、これまで9つのNPOバンク合計で累計16〜17億円の融資を行ってきた。貸し倒れはほとんどない。

もう一つの特徴は、融資先と顔の見える関係を築こうとしている点にある。まず、ウェブサイトなどで融資先についての情報をどんどん公開することで、融資先にとってはある意味でPRの場でもあり、見られている実感を得ることができる。定期的に電話や事務所を訪問するなどして、事業の進捗を確認したり、必要に応じて関連団体にサポートを要請したりするNPOバンクもある。全国に融資先が散らばるap bankというNPOバンクでは、顔の見える関係が地理的につくりにくいため、主催する野外イベント時に融資先にブース出展してもうらなど工夫している。

●出資者と融資先の思いをつなぐ

momoは愛知、岐阜、三重の3県を対象とし、地域の課題を解決するために活動しているNPOやコミュニティビジネスに、300万円を上限に融資している。出資者は全国から募っているが、出資者の約半数は愛知県の人で、東京に暮らしている名古屋出身者や、名古屋に暮らす岐阜の人など、ふるさとの活動を応援したい人たちもいる。2008年2月現在、178名の方から1972万円の出資をいただいている。

これまでの融資先には、たとえば岐阜県の中央に位置する郡上市で、伝統的な生活文化を伝承しながらグリーンツーリズムを推進しようというNPOがある。学生時代に郡上に通い、この地に惚れ込んだという若者が立ち上げたNPOで、もっと多くの若い世代が定住できる地域にしようと、地域活性化と若者の雇用を生み出す拠点づくりのために融資を決めた。

出資者の中には農業を応援したいという声も多い。その声を聞いてmomoに融資を頼むことに決めた人もいる。岐阜市とその周辺で、無農薬・無化学肥料による生鮮野菜を生産して地域に提供しようという方への融資には、都市部に住む消費者が農業体験をする機会をつくったり、お金で商品をやり取りするだけではない関係をつくれるのではないかと期待して融資を決めた。

このように、融資先の審査では、組織面、事業面、財務面のほか、出資者の声も重視している。以前、銀行に勤務していたときには、預金者の顔など想像したことはなかったが、お金を通して出資者と地域の志をつなぐのがmomoのやり方だ。融資先の活動に共感した出資者の中には、必要な返済利息を寄付させてほしいと申し出る人や、事業プランにまでアドバイスをくれる人もいる。金融という見えないものを扱いながら、お金以外のこうした気持ちを大切にしていくためには、徹底した情報公開が必要だ。ウェブ以外にも会員向けにニュースレターを発行したり、momo barやmomo cafeと名づけた、出資者が交流できるイベントを開催するなど工夫している。

●持続可能な地域づくりへ

愛知はトヨタの城下町だから景気いいと思われている節があるが、道路というインフラ整備が進んだ結果、地域の資源が流出しやすい面もあり、必ずしも地域を元気にしているとはいえない。地域に活力を与えるには、地域内で人・モノ・カネがまわっていく仕組みが必要だ。momoの取り組みで、例えば少しずつでも農村部にお金を戻していく事例を見せていくことで、かつての頼母子講など、コミュニティとお金が常に一体となっていた時代の感覚を取り戻すことができるのではないかと期待している。

こうした動きを活性化するには、momoが大きくなるよりも、momoのような仕組みがあちこちにもっとたくさん増えるほうがいいだろう。金融機関に求められるのは規模の大きさではなく、地域を元気にする機能を持っているかどうかだ。生まれ育ったこの街で、ずっと暮らしていけるように、ますます地域密着型の取り組みを進めていこうと思う。

印刷用ページ