ニュースレター

2007年09月01日

 

21世紀型NGO:JFS 5年間の歩みを支えたその組織とは?

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JFS ニュースレター No.60 (2007年8月号)

JFSは8月26日で設立5周年を迎えました。JFSは、2名の共同代表を含む4名のコアメンバーと4名の常勤事務局スタッフ、4-5名のパートタイムの事務局スタッフとインターン生たちが、3名の理事に見守られ、約80の法人会員企業・団体と約200名の個人サポーターからの援助を得て活動をしています。

この5年間、日本中から多くの環境情報を集め、その中から、毎月30本の環境情報を日本語と英語で発信してきました。毎月のニュースレターを世界189カ国、約9,000人のオピニオンリーダーたちに届け、フィードバックをつなぐことで海外との連携を深め、また数々のイベントを実施してきました。その結果、「日本の環境について、これだけ包括的に英語で読める情報源は他にない」と世界中の方々から高い評価をいただいています。

限られた人員と資金の制約の中で、これだけの活動を続けられたのは、なぜなのでしょうか? 実際にJFSの活動の大部分の作業を担ってくれているのは、約400人のボランティアの方々です。関わってくれる多くの人々の思いやスキル・経験を生かす場になるよう、工夫して作り上げてきた「21世紀型の新しい組織」、それがJFS独特の組織づくりです。今回のニュースレターでは、設立5周年を記念して、多くの人の思いを生かす仕組み、JFSの組織についてご紹介します。

新しいボランティアの形

「日本の環境に関するさまざまな進んだ取り組みを世界に発信する」のがJFSの活動の大きな柱です。この活動の、「日本国内からさまざまな情報を集める」→「選んだ情報をもとに、日本語の記事を作成する」→「日本語の記事を英語に翻訳する」→「英文記事の英語をチェックする」→「ウェブに掲載する」といったプロセスが、すべてボランティアからなるチームによって運営されています。

そのほかに、「JFSの情報を役立ててもらえる新たな読者層を開拓する」「海外からのフィードバックを和訳して日本に伝える」「海外からの問い合わせに対応した記事を作る」などのチームもあり、常時10チームほどが活動しています。

JFS/volunteer

これらのボランティアチームは、各チームのまとめ役を中心に活動が進められています。各チームそれぞれの目的や内容に応じて、メンバー同士で運営方法やプロセスを工夫して進めており、各チームの活動は、メンバーの自主性・チームの自律性があって初めて成り立つ仕組みになっています。少数の人に負担をかけすぎないよう、まとめ役も半年ほどの任期で交代する仕組みになっており、できるだけ多くの人々にチームの中心的な役割を担ってもらえるようになっています。新しく参加したボランティアメンバーへの研修システムやマニュアルも、各チームが独自に工夫して用意しています。

「JFSでボランティアをしたい」という問い合わせをいただくと、ボランティアチームのリストを紹介し、希望のチームに登録してもらいます。その際、ボランティア全体のリストにも登録し、新しいチームの立ち上げやイベントのお手伝いを募るときに、随時連絡が入るようになっています。現在の登録者数は400人を超えたところです。

JFSのボランティア活動は、基本的にメーリングリストを通じて行なわれており、自分の都合の良い時間に、自分に合ったペースで参加できるようになっています。仕事や育児に忙しい人でも、ネット環境さえ整えば、居住地を問わず気軽に活動を始め、自分のペースで活動を続けられます。(2007年2-5月号で紹介した指標チームのみ、定期的に勉強会を行い、直接、顔を合わせて、それぞれの知識や情報を持ち寄り、持続可能な社会に日本はどれくらい近づいているのか、議論を重ね、研究成果としてまとめています。)

思いのマネジメント

こうした活動を支えてくれているボランティアのみなさんと一緒に活動を続けていく秘訣として、JFSでは「思いのマネジメント」を大切にしています。JFSのスタッフ人数と予算規模はとても小さく、この日本の情報を世界に伝える活動に対して、政府などから支援してもらっているわけではありません。活動の多くはボランティアのみなさんの厚意で成り立っているのです。義務や契約の関係ではないので、それぞれのモチベーションをどのように集めて、重なるところを見つけて、高め、維持していけばよいのか----ここが活動継続のポイントなのです。そこで、「思いのマネジメント」と呼んでいる3つのポイントが重要になってきます。

一つめは「使命感」です。JFSの活動の使命は、「日本の進んだ環境の取り組みを世界に発信することで世界を動かそう、日本も動かそう」、「持続可能な日本のビジョンを描いて、そのビジョンに近づいているかを確かめ、どうしたら、より近づけるのか考えよう」というものです。ボランティアのみなさんは、その使命に共感して集まってくださっていますが、このビジョンを何度も繰り返し伝え、仲間として確認しあうことが大事です。

二つめのポイントは、「達成感」です。自分が時間やスキルを提供したことによって、こういうことにつながった、と目に見える、またはわかりやすい形で感じてもらうことが大事です。JFSではそのための仕組みを工夫しています。例えば、自分が集めた情報や、自分が書いた記事、または訳した記事がウェブに載り、全世界へと発信されるのですが、それに対して読者からフィードバックが届きます。取材元からのお礼や、世界からのフィードバックをボランティアチームに伝えることで、自分の活動への手ごたえを感じてもらいたいと思っています。

最後のポイントは、「自己実現」です。JFSの活動に参加することで、「文章力や翻訳のスキルが上がった」「情報収集を通じて、自分の知識や視野が広がった」「同じ価値観を持つ仲間に出会えた」など、JFSに関わることで、自分にとってのプラスが実感できてこそ、ボランティア活動を継続することができるのだと思います。JFSでは、それぞれの次のステップにつなげたり、その人自身の成長ややりがいにつながる機会を大事にしています。

この3つのポイントと、それらをベースとしたいくつもの自律的なボランティアチームが有機的につながって活動を進める組織の仕組みは、共同代表の枝廣淳子が、JFS立ち上げ前にそれまでの経験をもとに工夫して作り上げました。一人ひとりが、そして各チームが学びつつ工夫していくことで、全体が進化していく「自己組織化」の一つの事例となりつつあると自負しています。これが、JFSに関わってくれる人たち、すべての良さや思いを120%引き出すことを考えて生み出された、JFSとボランティアのみなさんとが持続可能な形で、持続可能な社会づくりに向けて進んでいくための秘訣なのです。

新しい組織の形

JFSは、関わってくれる人すべてにとって、環境・持続可能な社会をキーワードとしたコミュニケーション・プラットフォームであり、ツールであり、日本で持続可能な社会を目指す人々と世界をつなぐハブです。

JFSという一つのプラットフォーム(場)があって、そこにスタッフやボランティア、個人サポーターや法人会員、情報を提供してくれた取材先や世界中の読者ほか、いろいろな人々がそれぞれの思いを持ち寄ります。誰でも、このコミュニケーションの場(プラットフォーム)に集い、情報を持ち寄り、自分の知識を深め、自己実現につなげていくことができます。

JFSに関わることで、自分自身の活動へのやりがいを感じ、新たな活力を得て進んでいける。そうすることで、日本も世界も、持続可能な社会へと共に歩んでいける----JFSは、そうした人々と思いをつなぐハブなのです。

JFSには、「この組織のメンバーであるからにはこうでなければならない」という決まりや制約は一切ありません。JFSには組織としての存在目的やミッションがあり、その目的やミッションを果たす手段や活動があります。そこに自分の思いや活動を重ねて活動したいという人々が集まって、いっしょに活動をします。新しいプロジェクトが生まれると、やりたい人が仲間を募って、ジャズ・セッションのように一緒に活動し、任務が終われば解散します。JFSは「ジャズ・プレーヤー」型組織でもあるのです。

JFSは、「学習する組織」でありたいと願っています。自分たちのできる範囲で、必要な活動をしながら、その活動に必要なプロセスは、自分たちの力で作り、つねに改善していきます。他の活動をしているメンバーたちとも、自分たちのやり方について情報交換をし、互いに役立つ方法はどんどん取り入れます。こうして、チームを超えてJFSの全体にノウハウや知恵、新しい実践が伝わっていきます。JFS全体で学んだことが共有され、成長へとつながっていく「学習する組織」なのです。

JFSではこれからも、雇用や契約ではなく、多くの人々の「思いを重ねること」によって、活動を続けていきたいと思っています。6年目に入るJFSですが、 これからも「持続可能な社会へ向けて」をキーワードに、日本と世界をつなぎ、つながり、学びながら進んでいきます。


(枝廣淳子、坂本典子)

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