コラム〜日本発!環境人コーナー
環境政策を外交戦略に 〜アジア環境連帯・江口雄次郎〜
様々な人が事務所に出入りし、濃密な情報が飛び交う。休まず情報交換が続くその真ん中で「僕はトンカツ大好きだから」と言って、昼食をペロリと平らげる江口雄次郎さん。「アジア環境連帯」の代表である。江口さんが聞かれる側の時でも、聞き手から何か新しい知識を吸収するべく、逆に質問することが絶えない。相手の年齢や肩書きは全く気にしない。そんな74歳とは思えぬ迫力と、素直な好奇心を原動力に、日本の環境戦略を提言しつづけている。
資源枯渇の危機、地域環境汚染、地球温暖化といった課題が山積し迎えた21世紀、江口雄次郎さんは「環境への取り組みを外交戦略に!」と説いている。「アジア環境連帯」は日本の知識・技術を活用しながら、アジアや中東における環境問題解決に向けた取り組みを提言し、実践する。一例は「中東三国平和推進環境改善プロジェクト」。パレスチナ自治区、ヨルダン、イスラエルを流れるヨルダン川が舞台だ。依然として不安定な政情を背景に、廃棄物の不法投棄などによりヨルダン川周辺では深刻な汚染が広がっている。そんな中、この問題解決の足がかりとして、中立的立場のNGO、国際機関、そして当事者である3地域の当局者を集めて、2003年、ワークショップが開かれた。江口さん率いるアジア環境連帯の主催である。このワークショップにおいて江口さんらは日本における循環型社会へ向けた活動事例や市民参加について紹介し、以後の具体的なアクション・プラン作成に貢献した。リサイクル事業を促進し、雇用も生み出していく。こういった日本国外での「環境」への取り組みこそ、日本の国際貢献として重要だと江口さんは信じている。
「米国のあるNGOメンバーから、日本は中東で信頼される素地があると期待を寄せてもらいました。日本の被爆国としての歴史、敗戦後の復興も含め、中東の人々に受け入れられやすい側面がある。国家戦略として世界の環境改善に取り組むことで、日本の健全な存在感を示していけるのです。」
元々はエコノミストの江口さん。野村総合研究所に研究員として20年以上勤めた後、大学で教鞭を執った。国際経済や国家戦略を調査研究し論じてきたが、キャリアを積み重ねるうち、自ら実践しながらの提言に更なる価値を見出し、NGOを立ち上げることになった。「自分の目で見て感じて、考えて、コンセプトを創る。これが一番大事なことだと思ってます。」研究員時代から、現場に自らの足を運び、目で確認することなく、物事を論じることだけはしなかった。
そうして長年培った江口さんの経験と知見に裏打ちされて、発足5年あまりのアジア環境連帯は着実に歩みを進めている。近年はNPO地球こどもクラブ主催の「アジア太平洋生物多様性保全こども会議」開催にも協力している。ガラパゴス諸島、フィジー諸島で環境保全に取り組む少年少女を日本に招き、日本の子供たちとの相互理解・交流の場を設けている。こういった様々な活動を貫いているのは、アジア地域には西欧とはまた違った文化背景・価値観が存在し、その理解が世界をより豊かにしうる、という信念だ。
「21世紀、アジア地域は世界で大きな存在感を示す。しかし、資本や投資といった従来の単純な指標では、21世紀のアジアという「場」は捉えきれない。そこではEnvironmnet(環境)こそが軸になる。自由な競争原理もDiversity(多様性)も包括した上での共生のコンセプトが、持続可能な社会には不可欠です。」
21世紀のアジア地域を環境で繋いでいく。そしてそこに国際貢献の新しい可能性を拓く。江口さんの挑戦はまだ始まったばかりである。
江口雄次郎(えぐち ゆうじろう)氏
アジア環境連帯代表
1955年 東京教育大学文学部卒業(経済学専攻)
1963年 東京教育大学文学研究科博士課程単位取得
1963年〜1986年 野村総合研究所研究員
1986年〜1997年 創価大学教授
国際経営論、国際経済論、国際環境地域論などが専門
解説
※アジア環境連帯
正式名称「環境NGO・アジア環境連帯-ACE」優れた環境技術を有する日本
を起点とし,アジア地域の環境問題解決のための連帯を創成し,知識や技術の交
流,実践,発信を行う「場」としての役割・活動を目指す。
http://www.ngo-ace.org/
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