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Japan for Sustainability 日本語版ニュースレター 第14号
2003年10月31日
Copyright (c) 2003, Japan for Sustainability
会員・サポーターの皆様へ
いつもご支援をありがとうございます。 法人会員・個人サポーターの皆様へのお礼とご報告を兼ね、今月号のニュースレターをお届けいたします。
※毎号の末尾にも記してありますが、この日本版ニュースレターは、JFSの活動を財政的に支えて下さっている法人会員・個人サポーターの方へお送りしています。転送・転載等はご遠慮いただいておりますので、よろしくお願いいたします。
<< お知らせ >>
◆元気大賞受賞
循環型社会づくりをめざす全国市民活動を繰り広げる「元気なごみ仲間の会」主催の『市民が創る環境のまち"元気大賞2003"』でJFSが特別賞を受賞しました!
本賞は、持続可能な循環型地域をつくる全国の活力あふれる活動を募り、先進的な取り組みを評価するもので、今年で3回目を迎えます。11月25日に幕張メッセで開かれる発表シンポジウムで活動の報告をしてきます。 ◆エコプロダクツ2003 での活動のお知らせ
JFSでは、来たる12月11日(木)から13日(土)まで東京ビックサイトで開催される同展NGOコーナーにブース出展致します。お近くにお寄りの際には是非お立ちよりください。
また、JFSでは会場案内ブースで外国人向けの通訳サービスをご提供するほか、12日(金)には外国人向けブースツアー(英語)、13日には一般向けのテーマ別ブースツアー&シンポジウムの開催を予定しております。詳しくは追ってお知らせいたします。ご期待下さい! 【今月の主な更新】
環境マンガ ハイムーン・ギャラリーに "Oh! That one really looks perfect on you" を追加しました。(2003/10/21)
http://www.japanfs.org/ja/cartoon/index.html
Toward a Century of Japanese Value(英語)を更新しました。 10月は「古代から続く日本の伝統養蜂」についてと、「新しいモノづくりの可能性」についてです。
http://www.japanfs.org/en/column/a03.html
http://www.japanfs.org/en/column/a02.html
●JFSを支援くださる法人会員の皆様からの情報のページを随時更新中です。
http://www.japanfs.org/ja/supporters/corporate.html
では、英語版ニュースレターの和訳をお届けします。
◆◇◆ このニュースレターの主な内容 ◆◇◆
○経済効率重視から本当の幸せを求めて:スローライフの広がり
○環境、産業、生活の調和 〜地元に学ぶ「地元学」
○<シリーズ:持続可能な社会を目指して − 日本企業の挑戦 >
第5回 「エコタックス―規制を先取りする"市場改革"」〜西友
第6回 「私たちのサービスの本質: ファンヒーターでなく、暖かさ」
〜日本海ガス
○経済効率重視から本当の幸せを求めて:スローライフの広がり
岩手県の県庁職員の名刺の裏に、「何かしていなければ落ち着かない。つねにが んばっていないと不安になる。そんなの変だぜ、現代人諸君」と書いてあって、 びっくりしたことがあります。
岩手県は、経済効率重視の価値観を転換しようと、2001年に「がんばらない宣言」 を出しました。以下のようにその意味を説明しています。
より人間的に、よりナチュラルに、素顔のままで新世紀を歩き始めましょう。そ れが岩手の理想とする「がんばらない」姿勢です。例えば、深い森を伐って最先 端デザインのビルを建てるのではなく、濃厚な森羅万象に調和した木造りの民家 を守ってこそ岩手らしいんじゃないか……そんな「共生」の意識こそが、岩手流 「がんばらない」なのです。
「がんばる」「がんばれ」は日本では非常によく使われることばです。岩手県の 増田知事は、「『がんばる』という言葉は、日本の経済成長一辺倒の象徴です。 『岩手はがんばりません』と宣言するということは、そのまま素直に言葉だけ取 ると怠け者みたいに感じるけれど、じつはそうではなくい。むしろ自然体に生き て行こうという意識の象徴なのです」と説明しています。
これまでのように「効率」や「スピード」一辺倒ではなく、「ゆとり」や「生活 の質」を求めようという自治体は、岩手県だけではありません。この1〜2年、 「スローライフ」を行政の理念として掲げたり、「スローライフ月間」などのイ ベントを開催したりして、住民の意識変革を促進するとともに、自らの価値観を 転換しようとしている自治体が増えています。
その先駆的自治体のひとつ、静岡県掛川市の取り組みについては、JFSの記事で も取り上げたことがあります。
掛川市、「スローライフシティ」宣言
掛川市は1979年に全国の自治体で始めての「生涯学習都市宣言」を行い、生涯学 習を柱にした人づくりや街づくりを積極的に推進してきました。20数年にわたる 生涯学習の取り組みの集大成として、「スローライフ」を新たな理念として打ち 出しています。掛川市の新村市長は前回の選挙時に「スローライフ」をアピール の中心に据え、再選を果たしています。
「スローライフ宣言in掛川」をご紹介しましょう。
「スローライフ宣言in掛川」20世紀後半の日本は、「早く、安く、便利、効率」 を追求し、経済的に繁栄しましたが、人間性喪失や地域の荒廃、環境汚染をもた らしました。
そこで21世紀は、大量生産・大量消費の急ぐ社会から、ものと心を大切に、急が ない社会に移行し、「ゆっくり、ゆったり、ゆたかな心で」という「スローライ フ」をキーワードにしたいと考えました。人間は、平均寿命80歳とすると、時間 にして70万800時間、生きています。このうち勤務労働時間は、40数年働いたと して7万時間、あとの63万時間は、睡眠の23万時間のほかに食事や勉強や余暇で 過ごします。いままでは、7万時間の労働を中心に、会社人間的に生活してきま したが、これからは63万時間を、いろいろなスロー主義で暮らし、真の安心と幸 せを得ていきたいのです。
このスローライフの実践運動は、次の8つのテーマ・区分によって展開されます。
「スローペース」という歩行文化で、健康増進し、交通事故をなくします。
「スローウエア」という伝統織物、染め物、和服、浴衣など美しい衣服を大事にします。(衣)
「スローフード」で、和食や茶道など食文化と地域の安心な食材を楽しみます。(食)
「スローハウス」という、100年・200年もつ木と竹と紙の家を尊び、物を長持ちさせ、自然環境を守ります。(住)
「スローインダストリー」という農林業で、森林を大切に、手間ひまかけて循環型農業を営み、市民農園やグリーンツーリズムを普及します。
「スローエデュケーション」で、学歴社会をやめ、一生涯、芸術文化や趣味・スポーツに親しみ、子どもに温かく声かけする社会をつくります。
「スローエイジング」で美しく加齢し、一世紀一週間人生の終生自立をめざします。
「スローライフ」で、上記1から7のことを総合した生活哲学により、省資源、省エネを図り、自然や四季と共に暮らします。
また、日本全国の市や町で「スローライフ」を行政の理念として掲げている20自 治体が集まり、8月24日に岐阜市で「スローライフサミット」を開催。"人生を ていねいに味わうことのできるまちを目指そう"と「スローライフまちづくり 岐阜宣言」を採択しました。
このサミットでは、スローライフの先進的な取り組みを紹介し、昼食は伝統食材 を使った弁当「岐阜弁」を囲んで食談議を楽しんだそうです。スローライフサミッ トは、今後各地持ち回りで継続していく予定で、来年度は金沢市で開催される予 定です。
イタリアから始まったスローフード運動は、高度経済成長の後遺症や長引く不況 から「本当に大切なものは何なのか?」という問い直しが広がっている日本では、 競争や効率やスピードより、じっくりゆっくり本当に幸せな暮らしを送りたい、 という「スローライフ」の盛り上がりにつながっています。環境省が出している 「環境白書」にも今年版にはじめて、「スローライフ」についての記述が登場し ています。
これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄の時代から、循環型で「足るを知る」 持続可能な社会へ転換していく、ひとつの動きだと考えています。「あの経済大 国、あの経済効率至上主義の日本が?」と思われるかもしれません。「スローラ イフ」や「がんばらない」の日本での今後の展開と広がりに、ぜひご注目くださ い。
○環境、産業、生活の調和 〜地元に学ぶ「地元学」
足元を見直すことで地域づくりに役立てようという「地元再発見」の動きが、こ こ数年全国的に広がりをみせています。地元の人が主体となって、自分たちの住 む地域について調べて学ぶ「地元学」を通じて、地域独自の生活文化を自覚する ことにより、地域外からの変化に対応しながら、住み良い地域づくりにつなげよ うという試みです。
「地元学」発祥の地の熊本県水俣市では、この再発見の成果を環境モデル都市づ くりの施策に活かしてきました。水俣市は、世界に例のない産業公害である水俣 病という負の遺産を、どのようにして新しいまちづくりのエネルギーへと変えて いったのでしょうか。そのひとつの糸口が「地元学」です。
「地元学」とは?
地元の人が主体となって、暮らしの中の知恵や経験、資源を調べ、学び、認識す ることです。「地元学」では地元の人を「土の人」、外部の人を「風の人」と呼 んでいます。「土の人」の独りよがりにならないように、「風の人」の視点や助 言を得ながら協働で進めます。「土」に「風」が吹いてはじめて気づく地元の良 さや個性があるのです。地域の風通しがよくなることで、世代で分断されていた 住民の間にコミュニケーションの芽が生まれます。地元でのお年寄りと、若者や こどもとの対話が生まれ、智恵を教わる方だけでなく、教える方も教えることで 「地元」を再発見するというように、双方が生き生きしてきます。
「地元学」では、市町村という行政区域や、風土や歴史、生活領域を一つにする 地域を「地元」としています。また、川の流域、山に囲まれた盆地、島など、地 形的にまとまりのある地域を意味する場合もあります。
「地元学」の基本は、「あるもの探し」です。地域の自然、風土、伝統、歴史、 民族、文化などの暮らしとその移り変わりを調べ、地域の個性を把握します。地 域固有の風土には、地域固有の暮らしがあります。身土不二という思想です。地 域の風土と暮らしの固有性を理解することにより、外からの様々な変化が入って きた場合に、地元としてどう変化を受け止めるかを決める判断材料となるのです。
「公害」から「環境」のまちへ 〜水俣市の取り組み
水俣市は、長年水俣病に苦しんできた土地です。それは1954年ころから猫が狂い 死にするなどの奇病が漁村に発生したことから始まりました。1968年に厚生省が 「チッソの廃水が原因」と断定するまでは、国は漁獲禁止措置をとらず、企業も 汚染源の生産を中止しなかったため被害が拡大し、直接被害を受けた住民だけで も1万人を越える大惨事となりました。発生から40年近くたった現在でも、治療 法は見つかっておらず、胎児性水俣病患者は未だに苦しみを抱えながら生活して います。
世界的にもよく知られた公害病でありながら、水俣市の漁村以外の住民は、水俣 病や被害者のことをよく知りませんでした。行政と被害者たちの対立はもちろん のこと、様々な利害関係により被害者たちと一般市民との間にも長年対立が続き ました。市民はこの問題に正面から取り組むことを避けてきたのです。
当時水俣市役所で水俣振興推進室に勤務していた吉本哲郎さんは、水俣病の犠牲 を無駄にしないため、市民が水俣市で起きたことをきちんと把握して、地域を知 ることが問題解決の糸口になると考えました。それを地域発展のために活かして、 住民が愛着と誇りを持って住めるようなまちづくりを提案しました。こうして 「地元学」が誕生しました。
吉本さんはまず、市内26地区の20〜40代の人たちを10人づつ集め、「寄ろ会」と いう地区活動の世話人会を組織します。「寄ろ会」では、役所に陳情することを やめ、自分たちでできることをやる、をモットーに「あるもの探し」を始めまし た。公害を引き起こした企業、被害者、当時の地域の姿を調べ、水俣病の実態を 知ることで被害者とそれ以外の市民との対話が増え、次第に交流が進んでいきま した。
長年続いた住民同士の対立が、何か新しいものを生み出すエネルギーに変わって きました。対話により互いの違いを認め合い、距離を近づけあって、新しいまち を自分たちの手で創りたい、という思いが住民の間に生まれたのです。
地元住民が最初に取り組んだテーマは水でした。自分たちの飲み水はどこから来 るのかを調査して、分かったことはすべて地図に書き込みました。山芋、ワラビ、 鮎、神社、大木など、地域にあるものなら何でもいいのです。「そんなのでいい なら、いっぱいあるよ」ということで、地域の「資源マップ」が出来上がってい きました。
「地元学」の実践で地域の姿が明らかになってきました。地域が時代の変化をど う受け入れてきたかが分かり、未来に何を残したいか、そしてそのためには何を 変えるかがみえてきました。行き着いたのは、自然環境、産業、生活文化のバラ ンスのとれたまちでした。
1992年に同市は、「環境モデル都市づくり」を宣言します。水俣病の経験と教訓 から、「環境水俣賞」を創設しました。環境に配慮したモノづくりをする生産者 を「環境マイスター」として認定する制度も作りました。現在、無農薬野菜やお 茶、米、ミカンの生産者や無添加の煮干しを生産する漁師、化学薬品を使わない 和紙生産者ら23人が認定されています。
他にも、環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」の家庭版や学校版、 事業所版という「環境ISO」のしくみも立ち上げています。また、水俣市はゴ ミ処理にも力を入れていて、分類は、資源ごみ、埋め立てゴミ、有害ゴミ、粗大 ゴミ、燃やすゴミの5種類21分別に及びます。約3万人の全市民が参加していま す。これは世界でも画期的な取り組みです。水俣市の環境基本計画は平成17年ま での10年計画で、世界一の環境都市になることを最終目標としています。
広がる「地元学」
現在、この「地元再発見」の動きは、全国100以上の自治体に広がっています。 早くから取り組みを始めた愛知県美浜町では、町全体が竹炭を焼く里となり、炭 の加工品が特産品になりました。岩手県湯田町では、風車やバイオマスによる自 然エネルギー導入が本格的に進められています。また、県レベルでは、岩手県が 1999年に総合発展計画の中で「いわて地元学」の推進を掲げて、10年間かけて地 域資源の再発見に取り組んでいます。同様の取り組みは、群馬、岐阜、高知、宮 崎の各県にも広がっています。
日本には「縁」という素晴らしい言葉があります。山や川といった豊かな自然と の「縁」、伝統や歴史を通じての先人との「縁」、未来を共有する地域の人同士 の「縁」。「地元学」とは、近年薄れてしまった地域の「縁」をつむぎ直す作業 です。
将来からの大切な預かりものである地域資源を、自分たちの責任範囲である「地 元」で着実に管理していく。それは、地域で暮らす人々がそれぞれの自信を取り 戻す一つの方策でもあります。そして、地域規模で考えて、行動することは、ど こかで地球全体につながっています。一つ一つのコミュニティは山を超え、海を 超えて、目には見えない絆で結ばれているのです。
(スタッフライター 高橋彩子)
参考文献:「風に聞け 土に着け 風と土の地元学」(2000)
水俣市役所HP(日本語) http://www.minamatacity.jp/
水俣市役所HP(英語) http://www.minamatacity.jp/eng/index.htm
<シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦
第5回 「エコタックス―規制を先取りする"市場改革"」〜西友>
http://www.seiyu.co.jp
http://www.seiyu.co.jp/eco
古来から私たち人間は、毎日にせよ、週に一回にせよ、生活する上で必要な物資 を得るために市場(いちば)を訪れてきました。現代の市場(いちば)としてスー パーマーケットがありますが、そこでは、生活用品から食材、電化製品まで、生 活に必要なものはたいてい手に入れることができます。しかしその一方で、大量 の商品を大量に売りさばくことによって利益を上げる現在の形態は、市場(しじょ う)全体が抱える消費と環境のバランスの課題、あるいは持続可能な消費という 課題を象徴する存在にもなっています。
生活者にとって最も身近で、最も重要な商品とのインターフェースを担うスーパー マーケットは、持続可能な社会の構築へ向けてどのような役割を担うことができ るのでしょうか? 基本的に考えられるのは、店舗の環境負荷低減、消費者啓蒙、 そして環境配慮型商品の販売といった活動となるでしょう。実際、日本で業界5 位の大手スーパーチェーンの西友も自社の経営資源をこうした環境活動に費やし、 一定の成果を上げてきました。
しかし小売業界でのグローバル競争が激化する中、現代のスーパーチェーンは、 環境活動に個別に取り組むだけでは充分でありません。コスト競争に負けない販 売体制で利益を出すとともに、合理的な経営をし、環境規制を遵守するとともに、 社員の創意工夫を引き出して環境効率を抜本的に改善するという複数の課題が同 時に要求されています。今月号のニュースレターでは、西友が他社にはみられな いユニークな手法「社内エコタックス」の展開を通じてこれら複数の課題に挑ん でいる様子をご紹介したいと思います。
1963年に設立された西友グループは、日本中に400以上の店舗を展開する小売チェー ンです。2002年度の営業収益は1兆円超で、パートタイム8,000名超を含めて約 14,000名の従業員(8時間換算)が働いています。「お客様と最も近くにいる小 売業界」として、同社はトップのコミットメントのもと、環境経営に早くから取 り組んできました。同社は1997年にISO14001のマルチサイト方式一括認証を小売 企業として世界で初めて取得。その後、特に消費者への環境教育と環境配慮型自 社商品ブランドの開発と販売などに力を注いで実績をあげています。
例えば1997年に開始した子供を対象とした環境教育プログラム「エコ・ニコ学習 会」は企業による環境学習の事例として広く認知され、2003年には12,000を超え る数の人が、店舗や教室で西友の環境活動を材料に環境に配慮した生活のあり方 を学んでいます。1992年に立ち上げた独自基準の環境商品ブランド「環境優選」 は、2002年度に96アイテム、売上げ3.73億円に至るまでようになりました。
2002年には財務面での課題を克服すべく2002年度に米国ウォルマート社と業務提 携し出資を受けました。今後は、これまでの個別に突出した環境の取組みの効果 を経営価値としても証明し、また活動全体の効率を抜本的に向上させることが要 求されています。
この課題に直面して同社が考案したのが、社内エコタックスの制度です。これは、 西友本社がいわば政府のような役割を果たし、各部門から環境影響に応じた「企 業内環境税」を徴収することで、全従業員一人ひとりの環境意識の向上と創意工 夫を促し、環境負荷をスピードをもって効果的に減らしていくことを目指すもの です。
その仕組みは、次のようになっています。電気・水道・ガスなどのエネルギー使 用や廃棄物の発生など、環境への負荷は課税対象に、環境商品の販売や容器の回 収量増加、エコ・ニコ学習会を始めとする環境学習会の開催など、環境への貢献 は免税ポイントとして、店舗ごとに税を徴収します。徴収した税の一部は、戦略 的な環境投資や、地域貢献など、さらなる環境活動へと還元していきます。
具体的に個々の項目はCO2排出量相当に換算して計算されます。それぞれ異なる 種類の活動に対する換算係数は、外部アドバイザーの助言を得ながら設定されま した。例えば、エコ・ニコ学習会のCO2換算係数は、次のように計算されます。 環境省が推進する「一人ひとりの地球温暖化対策」の10項目を実施すると、一家 族あたり約766/年のCO2削減効果があります。エコ・ニコ学習会に参加した子供 たち(一回平均20名)のうち半数のご家族が省エネの取組みを行い、約1/2が成 果をあげたものと想定して計算すると、年間3,800kg CO2の削減効果が期待でき ます。
一人ひとりの地球温暖化対策 【-766 kg CO2/家族】
X
参加人数 (家族)【20家族】
X
実施割合(メニュー)【1/2】
X
実施割合(家族)【1/2】
=
3,800 kg CO2
そして、課税対象CO2量から控除対象CO2量を差し引いたものが、各店舗のエコタッ クスの徴収対象CO2量となり、トンあたり5,000円がここに課されます。この額が 利益から引かれて本部により自動的に徴収され、それは環境活動も含めた経営資 源としても再投資されるわけです。
このような仕組みがあれば、個々の店舗レベルでは徴税額を最小にすべく、様々 な創意工夫により環境活動効果を最大化するインセンティブが働きます。2002年 度には算定システムを整え計算をシュミレーションした結果、仮に徴収を行って いれば総額は約17億円となりました。2004年度からいよいよ完全実施が始まり、 2005年度以降には、社外での取引も視野に入れています。
この取組みは、来たる規制を先取りしたものでもあります。京都議定書で定める 温暖化防止を実現するために日本全体での取組みが加速する中、温暖化対策税の 導入が国レベルで検討されている他、東京都も、一定の規模以上の事業者には CO2排出量の上限を設定することも考慮しています。
消費と環境のバランスをとるための来るべき市場全体の改革を先取りして、自社 という市場(いちば)の改革を進める。環境負荷の数値が、営業成績と同じだけ の重みを持つ環境経営に向けて西友の挑戦はまだ続きます。
(スタッフライター 小林一紀)
<シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦
第6回 「私たちのサービスの本質: ファンヒーターでなく、暖かさ」
〜日本海ガス>
http://www.ngas.co.jp/
日本の家庭では、ガスは欠かせないエネルギーの一つになっています。実際、家 の中を見まわせば、様々なところにガスが使われていることに気づきます。調理 用コンロ、給湯器、オーブン、ファンヒーター、温水式床暖房・・・。家庭内で 使われるエネルギーの割合を見ても、この30年間でガスはより多く使われるよう になりました。
| 図:家庭部門におけるエネルギー源別消費割合の推移 |
|
1973 |
1990 |
2000 |
| 電気 |
22.5% |
32.0% |
33.9% |
| ガス |
22.9% |
25.0% |
33.9% |
| LPG |
14.3% |
15.0% |
25.0% |
| 軽油 |
32.8% |
27.0% |
14.1% |
| 石炭 |
5.0% |
0.1% |
0.0% |
(エネルギの状況については5月号ニュースレターに詳しく述べられています。
http://www.japanfs.org/en/newsletter/200305.html)
では、このように便利なガスを提供するのに、環境の視点から重要なことはなん でしょう。一つには、環境負荷の低減という観点から、海外での原料の発掘と処 理、海上輸送、工場での製造、運搬、そして使用時などの各工程でCO2、Nox、 Sox、廃棄物の排出を削減していくことがあります。そしてもう一つの視点が、 環境という切り口からお客様にとってのサービス価値を向上することです。
ガスを提供することの本質的価値はなにか。今月号のニュースレターでは、この 問いを突き詰めて、顧客、会社、そして地球の3者がともに勝者になれるビジネ スモデル開発に挑む日本海ガス株式会社の取組みを紹介いたします。
1942年に設立された同社は、現在北陸地方の富山県を中心に約11万世帯に都市ガ スとLPガス、その他ガス関連サービスを提供している日本企業です。提供範囲は 富山県周辺に限られますが、2003年現在には約250名(グループでは600名)の従 業員で、年間で90億円(グループ連結では210億円)の売上げを上げています。
(ご参考: 都市ガスは、日本全国世帯の約54%が利用するエネルギー形態で、地 下のガス導管を通じて各家庭に供給されています。同社では原料にナフサとLPG を利用していますが、2004-2007年により環境負荷の少ない天然ガスに全面転換 する予定です。また、LPG (液化石油ガス)は、気化・液化が容易なので貯蔵・運 搬がしやすいため主にボンベを通じて家庭に供給され、全国世帯の60%が利用し ています。)
限られた資源を扱う責務を認識する同社は、通常の企業以上に環境に取り組むこ とが重要と考えています。まず、海外から輸入した原料を受け取ったあとのガス 製造時・供給時における省エネルギーや環境負荷軽減、消費段階での省エネといっ た活動を地道に行うこと。そしてその上で、企業レベルで経済と環境の両立を果 たすべく、特に経営面にとってもメリットの大きいコジェネレーションと分散型 発電を進めています。ガスコージェネレーションシステムは、発生する動力と熱 をうまく利用することで省エネルギー化を図り、CO2排出を抑制することが可 能なシステムですが、同社では、工場からのガス送出時にガスエンジンを用い、 その廃熱を冷暖房や給湯等に利用することで、70〜80%の高い総合エネルギー効 率を得ています。
こうした取組みを展開していくなかで、それまでは販売だけだったガス機器の提 供方法を見直すことになります。例えばファンヒーターというガス機器がありま す。これは寒い冬には大変に重宝しますが、暑い夏の間には使えない季節商品で す。また技術向上によるモデルチェンジのたびに利用者が買い替えるということ になれば、それだけ資源使用量と廃棄物増加につながります。つまり利用者にとっ ては保管の問題、環境にとっては資源の問題があるわけです。
そこで同社は、「お客様がほしいのは、ガスファンヒーターではなくて、暖かさ のはずだ」という考えに基き、冬の間だけファンヒーターをレンタルして使って もらうサービスを提供しました。暖かくなって不要になると、ファンヒーターを 引き取り、専門家がメンテナンスを行ったあと、倉庫に保管します。一般家庭に 置いておくよりもメンテナンスが行き届くため長く使えるという仕組みです。
価格は1冬3,000円。サービスを開始した2000年冬には、用意した150台がすぐ予 約で埋まり、追加の要望に応えて合計で230台をレンタルしました。初年度の春、 引き取り時に「次の冬の予約」を取ったところ、多くの顧客が継続予約を希望。 実際2002年には、437台(うち前年よりのリピーターは165人・リピート率71.7%)、 2003年には442台(うち前年よりのリピーターは333人・リピート率76.2%)と、 利用者は増加傾向にあります。
社長の新田八朗さんはこのようなモノからサービスへの展開においては、社員の 意識改革が一つの鍵になると示唆されます。同社の場合でも、このレンタルサー ビスを導入するにあたり社内でも「個別に販売すれば市場では約30,000円の価格 がつくのに、なぜそんなことを。」という反応が強かったそうです。しかし、自 社の提供する「ファンヒーター」とはお客様にとって何なのか、ということを繰 り返し社内で問うていくなかで社員意識は変わっていきました。機器という箱自 体には意味はなく、寒い冬に暖かさを提供するということがサービスの本質的価 値なのだという考え方が浸透したのです。
天然ガスは有限であり、永遠に使えるわけではありません。しかし同社のように サービスの本質的価値に着目するならば、長期的には「暖かさ」を提供するため の一手段に過ぎないという発想をもつことができます。また、これからの水素エ ネルギーの時代においても、現在の資産である天然ガスパイプラインは活用でき るとするとも指摘されています。新田社長は「同社においても環境への取組みは まだ緒についたばかり」だが、「新たなビジネスモデルが社員の一挙手一投足が 環境に配慮したものになっていくなかから生まれる」と、信じています。
(スタッフライター 小林一紀)
今回のニュースレターはいかがでしたでしょうか? ご意見やご感想、リクエス トなど、どうぞお寄せ下さい。
これからもどうぞよろしくご支援のほど、お願いいたします。
皆様のご支援に心より感謝して−−
枝廣淳子
多田博之
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