幸せ・レジリエンス

2018年01月09日

 

日本学術会議、提言「低炭素・健康なライフスタイルと都市・建築への道筋」を公表

Keywords:  幸せ  ワークライフバランス  交通・モビリティ  地球温暖化  省エネ 

 

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日本学術会議は2017年8月24日、低炭素・健康社会の実現への道筋を取りまとめる、分科会の審議結果を公表しました。この提言の、作成背景から現状及び問題点を含め、内容をお伝えします。

20世紀における日本の大都市では、人口流入時に鉄道が整備され土地利用とCO2排出の面で、国内総生産(GDP)を効率よく増大させることに貢献してきました。しかし、到来しつつある超高齢社会では、健康で質の高い生活(クオリティオブライフ:QOL)を目指し、低炭素で環境性能の高い都市・建築を実現する方策の提言が求められています。

提言の内容は以下の4つに分かれています。

(1)低炭素で健康的な新しいライフスタイルと行動変容の動機づけ

  • 低炭素社会の構築のための、行動変容を促すモチベーションと関連要因の研究を推進すべき。
  • 日本の伝統的な生活を尊重しつつ、高齢化に対応した健康社会を構築すべき。
  • 多様なライフスタイルを統合していく思考を促す教育・啓発活動を展開すべき。

(2)成熟社会のための低炭素で健康な都市・交通デザイン

  • 財政的健全性、低炭素性を維持し、高いQOLを保障するコンパクトな都市のかたちと建物・街区ストックを形成し継承すべき。
  • 高齢者等移動困難者には、移動なしで物品を入手できる物流システムを整備すべき。
  • 生活空間の熱的環境制御と、市民の意識改革を推進すべき。
    (ヒートアイランド緩和、空調の技術革新、建物内と外の生活空間の一体的設計)
  • 土地・建物税、環境負荷に応じた課金等の制度を再設計すべき。

(3)住宅・建築の低炭素・健康対策と創エネの加速化

  • 建物スケールで、ゼロ・エネルギー建築・住宅を越えたライフサイクルでの低炭素化、創エネを行うべき。
  • 既存建築の省エネルギー化、再生可能エネルギー利用の普及、エネルギーマネジメントを総動員した住宅・建築低炭素化の統合戦略を策定実施すべき。
  • 都市、街区スケールで、高効率化と人々のQOL向上の両面からスマートコミュニティを構築すべき。
  • 低炭素化が高齢者の健康性・快適性、子どもの体力健康向上を図る方策として多様なコベネフィットをもたらすことを評価し、統合戦略に組み込むべき。

(4)日本の都市・建築・交通分野における低炭素技術のアジア展開戦略

  • アジア地域における民生、交通に関わるエネルギー消費のデータベースを構築すべき。
    (蒸暑地域の室内環境制御、鉄道と道路のバランス化による渋滞回避、CO2排出大幅削減のため)
  • 東及び東南アジアの国々では、到来する高齢社会において、日本をはるかに超えたICT、IoTのフル活用を図った革新的戦略を構築すべき。
  • 科学的知見を共有するために人的交流と技術移転を積極的に進めるべき。

温室効果ガス排出量を実質的にゼロにすることを目指す「パリ協定」の採択をきっかけに作成された今回の提言が、これからの超高齢社会に向けて、低炭素で環境性能の高い都市・建築を実現するために有効利用されることを願っています。

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