政策・制度・技術

2017年12月10日

 

AIの活用により、持続可能な日本の未来に向けた政策を提言

Keywords:  政策・制度  レジリエンス 

 

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イメージ画像:Photo by nguyentuanhung.

国立大学法人京都大学こころの未来研究センター(京都大学)広井教授らは、2017年9月5日、日立未来課題探索共同研究部門(日立京大ラボ)で開発された人工知能(AI)技術と融合させ、持続可能な日本の未来にはどのような政策が必要か提言しました。文理融合共同研究の一環としてのAI技術の活用と、社会要因とその時期を特定し提言した内容をお伝えします。

京都大学は、AI技術を持続可能な日本の未来に向けた政策提言プロセスの一部に活用し、提言しました。日本では、少子高齢化や産業構造変化に伴って成長・拡大時代からポスト成長(非成長・非拡大)時代へのパラダイム・シフトが起こりつつあり、(1)人口や出生率、(2)財政や社会保障、(3)都市や地域、(4)環境や資源、などの持続可能性や、(5)雇用の維持、(6)格差の解消、およびそこで生きる人間の(7)幸福、(8)健康の維持・増進が大きな社会課題となっています。これらの課題に対処するためには時機を捉えた戦略的な政策の立案と実行が求められますが、有識者が思い描ける未来シナリオの数には限りがありました。

そこで今回の政策提言では、まず上記(1)~(8)の観点から149個の社会要因についての因果関係モデルを構築。その後、AIを用いたシミュレーションにより2018年から2052年までの35年間で約2万通りの未来シナリオ予測を行い、23個の代表的なシナリオのグループに分類しました。

シナリオで傾向が2分されたため、シナリオ間の分岐の発生順序と時期を明らかにして、分岐の要因を特定します。これらの結果を元に、有識者が持続可能な未来に向けて、以下の3つを提言しました。

  1. 2050年に向けた未来シナリオとして主に都市集中型と地方分散型のグループがある。
    都市集中型では、都市の企業が主導する技術革新によって、人口の都市への一極集中が進行し、地方は衰退します。一方で、地方分散型では、地方へ人口分散が起こり、出生率が持ち直して格差が縮小し、個人の健康寿命や幸福感も増大します。

  2. 8~10年後までに都市集中型か地方分散型かを選択して必要な政策を実行すべき。
    今から8~10年後に、都市集中シナリオと地方分散シナリオとの分岐が発生し、以降は両シナリオが再び交わることはないため、持続可能性の観点から地方分散シナリオへの分岐を実現するには、社会保障などの政策が有効です。

  3. 持続可能な地方分散シナリオの実現には、約17~20年後まで継続的な政策実行が必要。
    持続不能シナリオへの分岐は17~20年後までに発生するため、地方税収、地域内エネルギー自給率、地方雇用などについて経済循環を高める政策を継続的に実行する必要があります。

京都大学は、今後、大学内外の研究機関や公共機関と連携することで、人々が幸福かつ健康でいられる未来に向けて取り組むべき指針として、本提言を社会的な意思決定に活用することを目指すとしています。

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