ニュースレター

2017年05月15日

 

日本の再生可能エネルギーの現況

Keywords:  ニュースレター  再生可能エネルギー 

 

JFS ニュースレター No.176 (2017年4月号)

写真:吉野ヶ里メガソーラー発電所
イメージ画像: Photo by Pekachu Some Rights Reserved.

大学倉阪研究室と認定NPO法人環境エネルギー政策研究所が2017年3月に出した「永続地帯2016年度版報告書」から、日本の再エネの現況をお伝えしましょう。日本全体の再エネ状況[1]、電力会社のエリア別の状況[2]、そして、地方自治体レベルの状況です。

日本全体の再生可能エネルギーの動向

この10年間急成長を続けている再エネ市場の中でも、成長の著しいのが太陽光発電と風力発電です。日本は、風力発電はまだ"離陸"していませんが、太陽光発電の伸びには著しいものがあります。世界の「太陽光発電大国」は中国ですが、日本は、2016年の年間導入量が860万kWで、累積導入量が約4200万kWに達し、約4100万kWのドイツを超えて世界第2位となったとみられています。ただし、年間導入量ではアメリカの1300万kWのほうが多いため、日本は世界第3位です。

図:太陽光発電累積導入量
図1:太陽光発電累積導入量

これまでを振り返ると、日本国内の再生可能エネルギーの割合は2010年度までは約10%で推移していました。2012年からスタートした固定価格買取(FIT)制度によって、太陽光を中心に導入が進んだ結果、2015年度の国内の全発電量(自家発電を含む)に占める再生可能エネルギー(大規模水力を含む)の割合は14.5%程度となっています。

図:発電量比率
図2:発電量比率

2015年度末の再生可能エネルギー(大規模な1万kW超の水力発電は除く)による発電設備の累積設備容量の推計は約4370万kWと、前年度比で約30%増加しました。この急成長では、先述したように、太陽光発電が大きな役割を果たしています。FIT 制度が始まる以前の2010年度と比較すると、再生可能エネルギー全体(大規模な水力発電を除く)の設備容量が約3.3倍に増加しているのに対し、太陽光発電は8.5倍の増加です。風力発電は1.3倍、バイオマスが1.2倍、地熱と小水力は横ばいの状況です。

風力発電は、2015年度末の累積設備容量は317万kWです。FIT制度がスタートした2012年度以降も、法的な環境アセスメント手続きの長期化や電力系統の制約などで本格的な導入にはなお時間がかかる状況となっています。

地熱発電は2000年以降の新規設備導入がない状況が続いていましたが、FIT制度の開始に伴い、2015年度には前年度に続いて約5000kWの地熱発電設備が導入されました。全国で多くの地熱の資源調査や開発計画がスタートしており、自然公園内での規制緩和や温泉事業者との合意形成などの課題解決が進められています。

小水力発電(出力1万kW以下)については、1990年度以降の新規導入設備が少ない状況が続いていましたが、出力3万kW未満の規模の中小水力発電設備がFIT制度の対象となったことから、全国各地で調査や事業の開発が始まっています。FIT制度による中小水力発電の2015年度の年間導入量は約7万kWですがが、そのうち1000kW未満の小水力発電の2015年度の導入量は約1.2万kWで、92か所程度の発電所が運転を開始しています。

バイオマス発電については、FIT制度開始以前は一般廃棄物や産業廃棄物を中心とした廃棄物発電の普及により設備容量が増えていましたが、FIT制度開始以降は、国内の森林資源を活用する木質バイオマス発電の設備が増え始めています。特にFIT制度で高い買取価格の対象となる間伐材などの「未利用木材」については、これまでその多くがコスト面で利用が困難でしたが、原料調達のためのサプライチェーンの構築と共に、全国各地で出力5MWを超える比較的大型のバイオマス発電の導入が始まっています。

しかし、実際には現状では未利用木材の調達はコストの面から難しいケースも多くあり、海外からの木材などの「一般木材」を燃料とするバイオマス発電設備の設備認定が増加しているのが現状です。2015年度は未利用木材を原料とするバイオマス発電設備が新たに13.8万kW(15施設)導入され、前年度の2.5倍程度の年間導入量となりました。一般木材についても9.6万kW(4施設)と前年度から3.6倍の増加です。その他、2015年度には一般廃棄物を処理するバイオマス発電設備が4.7万kW(17施設)導入されたほか、バイオガス発電設備が7400kW(20施設)導入されています。

電力会社エリア毎の電力需給にみる再生可能エネルギーの割合

日本には電力会社が10社あり、北は北海道から、南は沖縄まで10のエリアごとに電力会社が1つずつあります。電力会社エリア毎の電力需給の実績データ(電源種別、1時間値)によると、2016年度の前期(4月~9月)の日本全体の電力需要に対する再生可能エネルギーの割合の平均値は15.7%でした。月単位で見ると、2016年5月には20%以上に達していました。さらに、1時間値での最大値では2016年5月4日に46%に達し、「この1時間は日本のすべての電力の半分近くを賄える量が再エネで発電された!」状況でした。この5月4日は、1日間の平均でも27.5%に達しています。

電力会社エリア別に見てみましょう。2016年度4月~9月の平均値での、電力需要に対する再生可能エネルギー比率は、北陸電力が32%、北海道電力も32%近くに達していました。3分の1近くの電力を再エネ発電しているのです。もっとも、北陸電力は水力発電の割合が高いため、太陽光や風力などの変動する再生可能エネルギーが占める割合は3%程度と低くなります。一方、四国電力や九州電力では、変動する再生可能エネルギーの割合が平均で9%以上に達しています。1割近い電力を変動する再エネで発電できているのです。

図:電力需給の自然エネルギー比率
図3:電力需給の自然エネルギー比率

最も条件のよかったピーク時(1時間値)を見ると、四国電力の再生可能エネルギー比率は最大で79%、九州電力でも最大77%に達していました。東日本でも、北海道電力エリアで71%近くに達し、東北電力も62%近い再エネ比率でした。

それでも停電や問題は起きていません。これまでは、「太陽光や風力発電は発電量が変動する。他方、電力は瞬間瞬間に需要と供給を一致させないと周波数や電圧が乱れ、停電などの問題を起こす。常時変動している電力需要に変動する再エネの供給を合わせるのは難しいから、再エネはある程度以上には増やせない」と言われていることが多かった日本なのですが、なぜこれほど高い再エネ率が実現しているのでしょうか?

それは気象予測に基づく電力需要予測と再エネ出力予測を精緻化し、不足分は天然ガス火力を追従運転することなどで、変動する需要に供給を合わせる技術の進化のおかげです。先進的なスペインやドイツではその予測誤差は3~5%以下と言われており、日本の電力会社も積極的に気象予測に基づく予測能力を向上させ、大きな割合の再エネ電力を活用することができるようになってきています。

日本の公式目標は「2030年に再エネ電力を22~24%に」というものですが、すでにほぼ毎日それを超えている電力会社もあり、日本全体でも2030年を待たずして目標を達成できることでしょう。そう、日本もようやく「ベースロード電源の上に再エネがちらちらしている」状態から「再エネが主力で、その変動にあわせて火力を炊く」状況になってきたのです!

市町村区レベルの現状

千葉大学倉阪研究室と認定NPO法人環境エネルギー政策研究所が2007年から発表している「永続地帯」レポートは、日本国内の市区町村別の再生可能エネルギーの供給実態、食糧自給率などを計算し、「100%エネルギー永続地帯」「永続地帯」の自治体を発表しているものです。2016年度版レポートでは、2016年3月末時点で稼働している再生可能エネルギー設備を把握し、その設備が年間にわたって稼働した場合のエネルギー供給量を試算しました。

ちなみに、「エネルギー永続地帯」は、その区域における再生可能エネルギーのみによって、その区域におけるエネルギー需要のすべてを賄うことができる区域です。この区域におけるエネルギー需要としては、民生用需要と農林水産業用需要を足し合わせたものとしています。これは、これらのエネルギー需要は、高温高圧のプロセスを要せず再生可能エネルギーで供給可能であると考えられることと、地方自治体によってコントロール可能であると考えられることによります。なお、輸送用エネルギー需要はどの自治体に帰属させるかを判定することが難しいため除外しています。

対象となる再生可能エネルギーは、太陽光発電(一般家庭、業務用、事業用)、事業用風力発電、地熱発電、小水力発電(1万kW以下の水路式、RPS・FIT制度の対象設備に限るが、調整池を含む)、バイオマス発電(バイオマス比率が50%以上で定まっているもの。コジェネを含む。原則として廃棄物発電および製紙用などの産業用バイオマスボイラーは除く)、バイオマス熱(木質バイオマスに限る。コジェネを含む)、太陽熱利用(一般家庭、業務用)、地熱利用(浴用および他目的の温泉熱、および地中熱)となっています。

結果をみてみましょう。再エネの導入が進んだことから、域内の民生・農水用エネルギー需要を上回る量の再生可能エネルギーを生み出している市区町村(100%エネルギー永続地帯)は、2011年度の50団体から、2012年度に55団体、2013年度に60団体、2014年度に62団体、2015年度に71団体と、順調に増加しています。

電力に絞ってみると、域内の民生・農水用電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市区町村(100%電力永続地帯)も、2011年度に84団体、2012年度に88団体、2013年度は94団体、2014年度に97団体、2015年度に111団体と増えています。

日本には47都道府県ありますが、再生可能エネルギー供給が域内の民生+農水用エネルギー需要の10%を超えている都道府県がはじめて半分を超えました。2011年度8、2013年度14、2014年度21、2015年度25です。ちなみに、都道府県別の自給率トップ3は(1)大分県32.2%(2)鹿児島県24.9%(3)秋田県22.5%です。

食料自給率を見てみましょう。食料自給率が100%を超えた市町村は568市町村と、前年度の571市町村からの微減となりました。なお、100%エネルギー永続地帯である71市町村のうち、39市町村が食料自給率でも100%を超えています。これらの市町村は、まさに「永続地帯」であると言えます。

枝廣淳子

〈出典〉
[1]『永続地帯2016年度版報告書』第7章 7.1.
「国内外の再生可能エネルギーの動向」(執筆 松原弘直氏)

[2]『永続地帯2016年度版報告書』第7章 7.2.
「電力会社エリア毎の電力需給にみる再生可能エネルギーの割合」(執筆 松原弘直氏)

〈参考〉
永続地帯ウェブサイト
プレスリリース:「永続地帯2016年度版報告書」の公表について(2017年3月31日)
「自然エネルギー白書2016」

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