ニュースレター

2017年03月24日

 

投資によって被災地を支援 ~「被災地応援ファンド」の取り組み

Keywords:  ニュースレター  お金の流れ  震災復興 

 

JFS ニュースレター No.174 (2017年2月号)

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イメージ画像: Photo by Daisuke FUJII Some Rights Reserved.

「震災などの被災地を支援する」と聞くと、皆さんはどのような方法を思い浮かべるでしょうか? 被災地にボランティアに行くこと? 寄付をすること? あるいは被災地で生産された製品や野菜を買ったり、現地に旅行に行ったりすること? どのやり方でも被災地を支援することができます。

今月号のJFSニュースレターでご紹介するのは、投資によって被災地を応援する「被災地応援ファンド」、あるいは「復興応援ファンド」と呼ばれている方法です。投資と聞くと、お金儲けの手段であるとか、お金のある人たちのできることと考えている人も多いかもしれません。被災地応援ファンドではどのように、「投資」と「被災地支援」を結びつけているのでしょうか。

被災地応援ファンドが注目を集めたのは、2011年3月11日の東日本大震災後のことでした。実は、一口に「被災地応援ファンド」といっても、いくつかの種類があります。例えば、被災地の事業に対して投資する方式、被災地の自治体が発行する債券に投資する方式、投資の際の手数料の一部を被災地の復興支援金として寄付する方式などです。今回は、マイクロ(少額)投資のプラットフォーム「セキュリテ」による、自分が応援したい事業に少額を投資する「被災地応援ファンド」をご紹介しましょう。

セキュリテの被災地応援ファンド
http://oen.securite.jp/

セキュリテの被災地応援ファンド

セキュリテの東日本大震災の被災地応援ファンドは、応援したい事業を投資者が選び、その事業に対して「半分寄付、半分投資」という形で支援するものです。出資金は1口10,500円と少額で、参加しやすい金額設定になっています。手数料の500円を除いた10,000円のうち5,000円は応援金として事業に寄付され、残りの5,000円が出資金として投資されます。

セキュリテの被災地応援ファンド ウェブサイト
セキュリテの被災地応援ファンド ウェブサイト

投資されたお金の運用期間は、事業により異なりますが、長いものでは10年にわたります。出資者は、出資額に応じて特典の品や分配金を受け取ることができます(特典や分配比率は事業により異なります)。災害応援ファンドでは、一般的なファンドと同様、元金は保証されていません。つまり投資したお金がすべて返ってくるとは限らないのです。そうしたリスクがあるにも関わらず、2011年4月にファンドが立ち上げられてから、これまでに調達した金額は約10億円、参加者はおよそ3万人と多くの人が投資を行なっています。

震災によってお店や設備などの事業の基盤を失ってしまった被災者にとっては、どんなにがんばっても、通常の投資だけで事業を立て直すのが難しいことが多いのが現状です。だからこそ、「半分寄付、半分投資」という仕組みに大きな意味があるのです。

投資は実際にはどのような手順で行なわれているのでしょうか。まず、セキュリテのウェブサイト上にある「被災地応援ファンド」のコーナーに行くと、酒屋、鮮魚店、水産加工業、農園、造船所など、様々な東日本大震災の被災地の事業が写真入りで紹介されています。

これらは皆、投資を募集している事業や、資金を運用中の事業です(2017年2月現在、すべての事業は運用中であり、投資を募集している企業はありません)。各事業をクリックすると、事業の概要や出資者へのメッセージ、出資者への特典や分配金についての情報をみることができます。こうした情報を元に、出資者は投資したい事業を探します。

投資後の見守る仕組み

また、投資をした後も、出資者は特典の品物や分配金を受け取るだけではなく、様々な形で事業や被災地を見守る仕組みが用意されています。例えば、各事業の特典として、出資金で作られた新たな施設の見学会や、イチゴ狩り、田植え体験など、現地を訪れる機会を提供するものがたくさん設定されています。

またサイトには、「被災地からのレポート」として、事業者からのレポートや関連イベントの情報などが掲載されています。この中には、東日本大震災から5年経った段階での、被災地の37社の事業者に現状と課題などを聞いたレポートも含まれています。出資者はウェブサイトを訪れることで被災地の現状や事業の進み具合などを確認することができるのです。

その他、説明会や現地へのツアーも開催され、実際に事業者の話を聞いたり、現地を訪れたりする機会も用意されています。また説明会やツアーの様子はウェブにもアップされています。こうしたセキュリテの取り組みは、東日本大震災後に注目を集め、多くのメディアによって紹介されました。

なお、現在セキュリテでは、2016年4月の熊本地震を受けて立ち上げられた「セキュリテ熊本地震被災地応援ファンド」による事業の支援を行なっています。このファンドの第1号の事業の受付は2016年11月に始まったばかりです。出資金は1口10,800円で、東日本大震災の応援ファンドと同様、手数料の800円を引いた10,000円のうち5,000円は応援金として事業に寄付され、残りの5,000円が出資金として事業に投資される仕組みです。

被災地応援ファンドの意義

こうした特定の事業への投資による被災地支援と、寄付による支援とは、どのような点が異なるのでしょうか? 一番大きな違いは時間軸の長さです。被災地応援ファンドのサイトにも「長期的に関わり復興を見届ける」と書かれているように、投資の場合、出資者と事業者との関係が、特典や分配金の受け取りを通じて長期にわたります。そのため出資者にとっては、事業者のことを気にかける期間がずっと続くことになります。これは寄付との大きな違いです。また「出資者」という責任感が生まれることも、見守り方に影響を与えるでしょう。

第二に、元金が保証されていないとはいえ、特典があったり、分配金が戻ってきたりする仕組みのため、出資者にとっては参加意欲が増す取り組みであると言うことができます。例えば、5万円を寄付することには抵抗がある人でも、「特典や分配金というリターンがあるならば、支援をしてもよい」と考える人もいるでしょう。

似たような事例として、JFSニュースレター2016年8月号でご紹介した「ふるさと納税」があります。ふるさと納税は、自分が暮らす自治体に税金を納める代わりに、ふるさとなどに寄付をすることができる仕組みとして、大変な人気を集めています。ふるさと納税が多くの人びとを惹きつけている理由の一つは、お礼として送られる返礼品です。被災地応援ファンドでは、特典や分配金が、ふるさと納税の返礼品と同じような役割を果たしていると言うことができます。

JFS ニュースレター No.168(2016年8月号)
ふるさと納税制度:どこに暮らしていても「ふるさと」を支援する仕組み
http://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035640.html

被災地応援ファンドでは、特典や分配金があることによって、これまで寄付にはあまり関心を持たなかった人びとが、被災地支援に関心を持つ可能性があります。また、これまで投資には関心がなかった人や、投資をお金儲けの手段としてしか考えなかった人も、被災地応援ファンドを通して、「投資によって社会に貢献する」という考え方に親しみを持つかもしれません。被災地応援ファンドは、特定の事業を応援するというわかりやすい仕組みなので、投資の社会的な意味について、人びとの理解を後押しする可能性は大きいのではないでしょうか。

投資の社会的な意味という点では、現在、「自分が投資するお金に注目することによって、社会を変えよう」という動きが世界に広がっています。例えば、倫理的に問題があると思われる企業の株や投資信託を手放す「ダイベストメント」の動きはその代表例です。欧米では、大学や企業が、化石燃料産業への投資をやめるような動きが広がっています。

また、経済的なパフォーマンスだけではなく、環境、社会などにも配慮して投資を行なうサステナブル投資(ESG投資)も、世界的には10兆ドルを超える市場規模になっています。ただし、日本ではダイメストメントやサステナブル投資は、少しずつ注目を集めはじめているものの、まだ一般には広がっていないのが現状です。

JFSニュースレターNo. 170(2016年10月号)
成長に向けて大きく変化、日本のサステナブル投資市場
http://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035680.html

被災地応援ファンドを通して、被災地の支援を行なうのはもちろんのこと、「投資を通して社会に貢献する」という考え方が広がる可能性にも注目していきたいと考えています。

スタッフライター 新津尚子

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