ニュースレター

2016年06月13日

 

持続可能な社会経済を目指して ~ グリーン購入ネットワーク設立20周年

Keywords:  ニュースレター  エコ・ソーシャルビジネス 

 

JFS ニュースレター No.165 (2016年5月号)

写真: グリーン購入大賞表彰式
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グリーン購入・調達を進める企業や行政、消費者団体などが集まって結成された「グリーン購入ネットワーク(GPN)」が、先ごろ設立20周年を迎えました。今月号のニュースレターでは、グリーン購入をとおして持続可能な社会経済を目指す、GPNの取り組みについてお伝えします。

グリーン購入ネットワーク設立

「グリーン購入」は、GPNの設立構想時に生まれた言葉です。環境負荷の低い、持続可能な消費と生産を進めるにあたって、「グリーン調達」や「グリーンコンシューマー」等の言葉を使うことを検討。しかし、「グリーン調達」は企業や行政の調達に限定される印象があること、「グリーンコンシューマー」は個人消費者の印象が強いことから採用されませんでした。

そこで、消費者、行政、企業のあらゆる購入者が汎用的に使用でき、覚えやすい言葉を創ることを目指して検討が重ねられ、最終的に「グリーン購入」という言葉が誕生したのです。

グリーン購入とは、購入の必要性を十分に考慮し、品質や価格だけでなく環境のことを考え、環境負荷ができるだけ小さい製品やサービスを、環境負荷の低減に務める事業者から優先して購入することです。

環境に配慮した製品が社会に浸透するような仕掛けの必要性が高まっていた1996年2月、企業、行政機関、民間団体が対等な関係でネットワークを形成し、グリーン購入運動を広げるという趣旨を掲げ、発起人会員73団体によりGPNが発足しました。会員数は、2016年4月26日現在1,917団体(企業1,570、行政154、民間団体193)になっています。

グリーン購入基本原則

GPNは1996年11月7日、活動の趣旨に基づき、グリーン購入基本原則を制定しました。大きくは、4つのポイントから成っています。

  1. 購入する前に必要性を十分に考えること
  2. 資源採取から廃棄までの製品ライフサイクルにおける多様な環境負荷を考慮して購入すること
  3. 環境負荷の低減に努める事業者から製品やサービスを優先して購入すること
  4. 製品・サービスや事業者に関する環境情報を積極的に入手・活用して購入すること

グリーン購入基本原則にもとづいて、商品やサービスの分野ごとの購入指針「グリーン購入ガイドライン」が策定されています。策定にあたっては、会員のメーカー企業、購入側企業、消費者団体、環境NGO、自治体などが参加し、合意形成重視のアプローチで議論を重ねます。オフィスで使う製品から家電製品、自動車、サービスまで幅広く対象にしています。

ウェブサイト「エコ商品ねっと」では、グリーン購入ガイドラインに沿って商品を環境面から比較選択できるよう、各メーカーが提供する商品の環境情報を一覧表形式で公開しています。グリーン購入ガイドラインをまだ策定していない商品分野で環境に配慮した商品も含め、63分野、約15,000商品が掲載されています。

GPNは、グリーン購入基本原則に基づいて、製品・サービスを提供する事業者の環境に配慮した取り組みを評価する観点をリストアップした「GPN事業者評価チェックリスト」も策定しています。「エコ商品ねっと」では、商品登録事業者が、チェックリストに沿って自らの取り組み状況を公開しています。

写真:全国フォーラム・ワークショップ
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ネットワーク構築

2000年5月、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」が制定されました。これは、国等の公的機関が率先して環境負荷低減に資する製品・サービスの調達を推進するとともに、環境物品等に関する適切な情報提供を促進することにより、需要の転換を図り、持続的発展が可能な社会の構築を推進する法律です。

グリーン購入法では、地方自治体に関し努力義務という位置づけになっていますが、地方自治体は、国等の機関の3倍以上の規模の経済活動を行っており、市場に対して大きな影響力をもっています。このため、地方自治体がグリーン購入に積極的に取り組むことにより、それぞれの地域、さらには国内市場全体における環境配慮型商品への需要転換が進むことが期待されます。

GPNは、地域でのグリーン購入を広げるために、各地での地域ネットワークの設立を支援しています。1999年の「滋賀グリーン購入ネットワーク」を皮切りに、2003年「みえ・グリーン購入倶楽部」、2004年3月「みやぎグリーン購入ネットワーク」、2004年10月「京都グリーン購入ネットワーク」、2007年「埼玉グリーン購入ネットワーク」、2008年「北海道グリーン購入ネットワーク」、2009年「横浜グリーン購入ネットワーク」、2012年「大阪グリーン購入ネットワーク」が設立されました。地域ネットワークの総会員数は600団体を超え、更に全国各地でネットワーク作りを推進しています。

GPNはまた、2005年4月に世界各国の関係者とともに設立した国際グリーン購入ネットワーク(IGPN)の中核として、事務局を担っています。IGPNを通じて、国際会議やワークショップの開催、普及ツールの作成、グローバルな活動のデータベース化などを進め、現在はアジア各国にネットワークが拡大しています。

写真: グリーン購入大賞表彰式
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グリーン購入大賞

1998年からほぼ毎年開催されているのが、グリーン購入の普及・拡大に取り組む団体を表彰する、グリーン購入大賞です。グリーン購入の普及に関する先進事例を表彰し、一層の取り組みを奨励するとともに、先進事例の紹介を通じてグリーン購入の普及と質的向上を図ることが目的です。

環境大臣賞では、自らのグリーン購入活動、もしくは環境教育や環境コミュニケーション等を通じた一般消費者等へのグリーン購入の普及活動が特に優れた団体を表彰します。他にも、環境配慮製品・サービスを通じてグリーン購入の市場を拡大する活動が特に優れた団体を表彰する経済産業大臣賞、国内農林水産業の発展に資するグリーン購入活動もしくは一般消費者等へのグリーン購入の普及活動が特に優れた団体を表彰する農林水産大臣賞をはじめ、優れた取り組みを行っている団体に賞が贈られます。

2016年度については、グリーン購入の普及と質的向上に向けた表彰制度としてさらなる充実を目指した検討を進めるため、グリーン大賞を休止することが発表されました。GPNは、中止の理由を次のように説明しています。

2015年12月の気候変動枠組条約・パリ協定を受け、国際社会はゼロ炭素社会に向けて大きく舵を切っています。また、2015年9月には国連が持続可能な開発目標「SDGs」を採択し、企業活動における社会的責任や持続可能性の重要性が増しており、グリーン購入の取り組み領域はますます拡大しています。

グリーン購入大賞では、これまで環境配慮型製品・サービスの選択・購入や製造・販売の促進によるグリーン市場拡大への貢献に焦点を当て評価を行ってきましたが、こうした国際動向等を踏まえ、2016年度は制度の枠組みや評価基準・方法の見直し、検討を行う期間に位置づけました。

GPNがさまざまな取り組みにより、力強くグリーン購入を促進していることで、日本ではグリーン購入が広がり、定着し、グリーン購入法も実行的に機能しています。法において取り組みが義務づけられている国等の機関については、重点的に調達を推進する特定調達品目が設定されており、判断基準に適合した物品等の調達率が95%を超える品目は、2004年以降、90%を上回る高い水準を維持しています。

写真:持続可能なパーム油のガイダンスCopyright グリーン購入ネットワーク
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地方自治体の取り組みも確実に広がっていて、2015年度の調査では「組織的にグリーン購入に取り組んでいる」自治体は68.4%(都道府県・政令市:100%、市区:83.8%、町村:52.5%)で、2005年度調査の33.8%(都道府県・政令市:96.7%、市区:53.1%、町村:15.2%)から大幅に増加しています。

GPNは、20年の実践で培ったネットワーク全体で共有する知見・経験、そして人や組織のつながりを活かしながら、新たな商品分野の情報提供・啓発活動として、電力とパーム油に取り組んでいます。電力は、電力のグリーン購入を促すために、CO2排出係数や再生可能エネルギー導入率等を情報提供しています。パーム油では、持続可能なパーム油に取り組むための教科書の位置づけとなる「持続可能なパーム油のガイダンス」を作成するとともに、事業者向けワークショップを開催し、取り組みを促しています。

GPNが市民、企業、行政の連携と継続的な活動のプラットフォームとして、今後どのような新たな活動を展開していくのか、注目です。

スタッフライター 田辺伸広

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