ニュースレター

2016年02月29日

 

住民が作り守ってきた水路の水と住民の出資で小水力発電を!

Keywords:  ニュースレター  お金の流れ  再生可能エネルギー  市民社会・地域 

 

JFS ニュースレター No.162 (2016年2月号)

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岐阜県郡上市の、福井県にほど近い場所にある石徹白(いとしろ)地区。縄文時代から人が住み、昭和30年代までは人口1,200人ほどの集落でしたが、その後50年間に4分の1に減り、現在100世帯250人が暮らしています。

標高700メートルに位置し、夏は涼しいものの、冬は数メートルの雪が積もり、厳しい暮らしです。だからこそ、みんなで手をさしのべ合って力をあわせて暮らしと集落を支えてきました。白山信仰の里でもあり、平安時代から鎌倉時代にかけての、白山信仰が盛んだった時代には、「上り千人、下り千人、泊り千人」と言われるほど各地から参詣客や修験者が集まったといいます。地方でありながら、外に開けた集落であったためでしょうか、互いに干渉することもなく、見知らぬ人も温かく迎え入れる雰囲気があって、移住者はとても暮らしやすいと言います。

かつては、集落に川の水が流れていなかったため、焼き畑でヒエやアワを栽培していましたが、明治時代に集落の人たちが手掘りで川から3キロメートルの水路を引き、田んぼができるようになりました。春の田んぼ作業を始める前と秋の稲刈り後に、井普請といって、集落総出で農業用水の掃除をし、自分たちで水路を維持管理してきました。大正時代から昭和30年まで、集落には電気利用組合があり、谷からの水路で引いた水で水車を回して、昼間は製材所の動力源、夜は集落の電力源としていました。夜、電球が暗くなってくると、誰かが水車のゴミを取りに行き、するとまた明るくなったそうです。このように、自分たちで水路を作り、維持管理し、田んぼの水も電気も自分たちでまかなっていたのです。

2007年、岐阜出身の20代の若者たちが作ったまちづくりのNPOが、「かつては地域で完結していたお金の流れが、外からモノを買うようになって、外に出ていくようになっている。その大きなものがエネルギー。農山村の価値を取り戻すとともに、グローバルな環境・エネルギー問題に資することができないか」と、郡上市の上流の集落をあちこち回って、小水力発電をやらないかと呼びかけ、意気投合したのがこの石徹白でした。集落の人々は、エネルギーに関心があったというより、「このままでは集落がなくなってしまう」という危機感があったとのこと。

2007年夏に、石徹白に3つの小さな水力発電用の水車が設置されましたが、ほとんど使えないものだったため、実用的なものを求めてアドバイスを得にいったり、研究をしたりしました。その成果として、2009年6月には、田んぼの脇を流れる水路の1つに流れ込み式のらせん水車が設置され、1軒分の電気の発電を始めました。発電した電力は、道をはさんで向こうに建つNPO「やすらぎの里いとしろ」の事務所兼自宅に送られます。落差たった50センチメートルでこれだけの発電が出来るのですから、水の力はすごいのですね。

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2011年6月には、電気代がかさむこともあって休眠状態だった食品加工場横に、3メートルの落差を利用し、2.2キロワットの発電をする水車が設置されました。1年の半分ほど4人が働ける場が生まれ、地元の名産である甘いトウモロコシを使った食品などの加工を行っています。

「こういった地元の食材を使うカフェを、地元の女性たちが運営しています。週末だけの営業ですが、最近は、小水力発電の見学者も増え、お昼を食べるところがないので、予約制で平日のランチも提供しています。春だと、予約が入るとみんなで山に山菜を取りに行くそうです! エネルギーだけだと地域の共感は得にくいけれど、関心ややりたいことにつながれば、理解や協力が大きくなるのです」と2007年から石徹白に関わり、2011年に住民となって、地域の取り組みの原動力となっている平野彰秀さん。

うれしいことに移住者も増えているそうです。250人の集落への移住者が、10世帯25人もいて、今年は4人も子どもが生まれる予定とか。「ベビーラッシュです」とにっこり。「石徹白には現在、このような独立型(売電用でなく、自家消費用)の小水力発電が2つあります。いずれも、工事は地元の土建業者にやってもらい、電気制御も地元の詳しい人が手作りで制御盤を作ってくれました。『地元で出来ることは地元で』が合言葉です。そうしておけば、壊れても自分たちで直すことができますから」

なお、この2つの発電設備は、平野さんの所属するNPO法人地域再生機構が所有し、地元のNPO法人やすらぎの里いとしろが管理を請け負う形で役割分担をしています。

岐阜県は「清流の国」と謳っているだけあって、水に恵まれた県です。「この石徹白の農業用水を使って小水力発電をしたい」と県庁が言ってきたそうです。地元では、元々発電にそれほど熱心ではなかったのですが、話を聞いてみると、「国・県・市が100%出資するので、売電益は100%行政に入る」とのこと。明治以来、地元で管理してきた水路を使って発電しても、地元のプラスにならないならやめてしまえ、という議論も出たようですが、最後には、「地元もリスクを負い、出資することで、利益の還元も得よう」という話になりました。

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そこで、農業用水から分水して、2つの水路を作って、2カ所で小水力発電をすることになりました。1つは県が主体で行うもので、80軒分の電力を発電します。2015年6月1日に通電式が行われました。

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そしてもう1つは、石徹白の地域の小水力発電です。建設費用は2億4000万円、補助金などを差し引くと地元の負担は6000万円です。この費用をどうしたらよいか?

自治会長をはじめ、17人が発起人となって半年間話し合いを重ね、地域の住民から出資を募ることにしました。「用水も、その時代の人々が子孫のためと創ってくれた。今自分たちで発電所をやることも子孫のためなのだ」と100世帯に説明をした結果、ほぼ全世帯が出資をし、負担金を集めることが出来ました。その受け皿として、2014年4月には農業用水農業協同組合を設立しました。

発電設備は2016年6月に操業開始予定。年間2000万円ほどの売電益が出る見込みですが、出資者への配当に充当するのではなく、農業研修や食品加工場の支援、新商品の開発など、地域の農業振興に使うことになっています。

平野さんはこう話します。「らせん水車などの小規模な発電設備は、その場で電気をつくってその場で使うという自立型として頼りになるし、見えるという点で環境学習にも向いています。しかし、お金の循環を地域に取り戻すという点から言えば、もっと大きな規模で発電し、売電して地域に還元したい、そういう思いで、今回の発電設備は売電用、事業型にしました。この事業型があるために、水路のゴミ取りなどの維持管理のお金もまかなえます。そうすることで、水流が安定し、農業にもプラスになる上、独立型の小水力発電にもプラスになります。石徹白は水に恵まれ、また高低差が大きな地域なので、独立型の小水力発電はあちこちでできるでしょう」

地域の人々がお金を出し合い、地域でずっと維持管理してきた水路の水を使って小水力発電をし、その利益を地域の農業振興に使っていくという、素晴らしい好循環が生まれることになります。また、この事業型の水力発電のおかげで、地域の人々が自分の家や自分たちの仕事場などで自家消費するための独立型の小水力発電もやりやすくなる。これまたステキな好循環が回り出しそうです!

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枝廣淳子

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