ニュースレター

2015年03月17日

 

毎日の買い物を通して地域経済を後押しする――JFSの世論調査から

Keywords:  ニュースレター  市民社会・地域 

 

JFS ニュースレター No.150 (2015年2月号)

写真:八百屋
イメージ画像: Photo by yamauchi Some Rights Reserved.

「2040年までに人口が減少し行政機能が維持できなくなる『消滅可能性都市』は、日本全国に896自治体もある」、そんなショッキングな推計が2014年5月に日本を駆け巡りました。このいわゆる増田レポートに典型的に見られるように、日本の地方自治体は現在厳しい状況におかれています。各自治体はもちろん、政府も「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げ、国をあげてこの問題に取り組んでいます。

2015年2月9日にJFSが主催したシンポジウム『生き残りにつながる地域の取り組みとは――地域経済・地方創生の視点から』も、立ち見の方が出るほどで、この問題への関心の高さが感じられました。

写真:JFSシンポジウム『生き残りにつながる地域の取り組みとは――地域経済・地方創生の視点から』
JFSシンポジウム『生き残りにつながる地域の取り組みとは――地域経済・地方創生の視点から』

毎日の買い物で地域経済を後押しする

その一方で、こうした議論の中で必ず話題になるのが、「どうすれば一般の市民を、議論やプロジェクトに巻き込むことができるのか」です。私たちは、一市民として、どのように地域経済を後押しすることができるでしょうか。

自治体が行っている地域経済支援プロジェクトや説明会などに参加するのも1つの方法ですが、もっと身近な方法があります。それは毎日の買い物です。

たとえば、英国のコーンウォールという地域を対象とした研究では、「旅行者、住民、ビジネスが、それぞれ1%だけ地元のモノやサービスにお金を使うようになれば、地元で使われるお金が毎年5200万ポンド増える」という計算が示されています(New Economic Foundation, 2002, "Plugging the Leaks")。

地元で買い物をしても、地域の外に本社を持つチェーン店なら、お店に支払われた金額のうち、小さくない割合が本社へ、つまり地域外に流出します。一方、個人経営の商店で買い物をすれば、お金は地域内に留まります。地元から仕入れていれば地元の仕入れ先へ、地元の人を雇っていれば給与として地元の従業員へとわたるので、地元のモノや地元の人を活用していればいるほど、そのお金は地域内で何回も使われることになり、何倍もの経済効果を生み出す可能性があります。(こうした考え方については、New Economic Foundationの「漏れバケツ(Plugging the Leaks)」にわかりやすく説明されています )

※漏れバケツの解説を、「JFS地域の経済と幸せプロジェクト」のウェブサイトに掲載しています。
http://www.japanfs.org/ja/files/wbg_131205_02.pdf

このように「誰でも、毎日の買い物を通して、地域経済を豊かにする」一助ができるのです。この考え方を一般の消費者に広めることはとても大切なことだと、私たちは考えています。

地域社会と消費行動に関するアンケート

こうした考えに基づき、パタゴニア日本支社(環境助成金プログラム)からの支援を得て、「地域社会と消費行動に関するアンケート」を行いました。この調査は、2014年12月22~24日、株式会社マクロミルのモニター会員を対象にインターネット調査法を用いて行い、サンプルの構成は20~70歳の1,000人。年代、性別および大都市/中小都市・地方の割合は、国勢調査データの人口比に合わせました。

ここでは、「地元の経済を変える必要があるか」、「野菜をどこで買っているか/どこで買いたいか」、「普段の買い物で気にかけていることは何か」の3点についての結果をご紹介します。

住んでいる地域の経済について、現状を変える必要があるか

自分の住んでいる地域の経済について、現状を変える必要があると考える人は約40%。変える必要はないと考える人(約16%)を大きく上回りました。

グラフ:お住まいの地域の経済について、あなたは現状を変える必要があると思いますか?

つづいて、地域が抱えている問題と、その問題への対応策について自由回答形式で尋ねたところ、「少子高齢化」「産業構造の変化(大学や企業が移転して人口が減っているなど)」といった構造的な問題を指摘する意見がありました。少子高齢化への対策としては、「若者を呼び込むまちづくり」と「高齢者に対応したまちづくり」の両方が挙げられました。

地域のお店については、「チェーン店や大型店舗を誘致することが必要」といった意見がある一方で、「大きなショッピングモールのため、地元商店が壊滅的な影響を受けた」「ショッピングモールは、個性のある店が少ない」といった意見もありました。

地元の産業や商店を守る対策としては、「地域の特色を活かした産業を育成する」といったもののほか、地元での買い物や地元での就職をあげる回答もありました。「市民一人一人が地域経済を後押しすることができる」という考えを持っている人がいることを示しています。

野菜をどこで買っているか/どこで買いたいか

今回の調査では、野菜について「実際にどこで買っているか」「理想的にはどこで買いたいか」を尋ねました。

野菜をどこで買っているかについて、頻度とともに尋ねたところ、大多数にあたる80%以上の人が「週に1度以上スーパーマーケットで野菜を買っている」と回答、2番目はコンビニエンスストア(約25%)でした。八百屋・青果店で週1度以上買い物をしている人は約13%、生協は約12%、直売所は約10%でした。そのお店で野菜を買う理由を尋ねたところ、「近いから」「便利だから」といった回答が多く得られました。

それでは「理想」はどうでしょうか? 複数回答で答えてもらったところ、こちらも1位はスーパーマーケットで、約90%の回答者が「野菜を買いたい」場所としてあげました。2位は直売所の約44%、3位は八百屋・青果店の約40%が続いています。直売所や八百屋・青果店で野菜を買いたいと考えている人が、少なからずいることがわかります。

グラフ:野菜を買う時、どのようなお店で買いたいですか

そのお店で野菜を買いたい理由をたずねたところ、「お店の人と話しながら買い物ができるから」「地産地消を心がけているから」といった回答もありました。他方、スーパーマーケットを支持する意見には、「営業時間が長い」「少量パックがある」「野菜以外のものも買える」などがありました。また「自宅周辺の個人商店は全て店を閉めてしまったから」という回答もありました。

こうした回答傾向から、理想的には八百屋や直売所で野菜を買いたいけれども、自宅の近くにない、夜遅くまで開いていない、少量だけ欲しい、または野菜以外のものも揃うといった理由で、スーパーマーケットで買い物をしている人がいることが伺えます。

普段の買い物で、気にかけていることは何か

最後に、「野菜に限らず普段買い物をする時に、どのようなことを気にかけているのか」の結果をご紹介しましょう。今回の調査では「リユース・リサイクルができるか」「商品が運ばれてきた距離」「地球温暖化への影響」「自然を壊していないか」「生産時の労働環境」「地域経済への貢献度」の6つの項目について、それぞれどの程度気にかけているか尋ねました。

その結果、「いつも気にかけている/時々気にかけている」という回答が多かったのは「リユース・リサイクルができるか」の約39%と「商品が運ばれてきた距離」の約38%です。地域の経済への貢献度については、「自分が支払ったお金が、地域の経済に役立つかどうか」という質問で尋ねましたが、「いつも気にかけている/時々気にかけている」と回答した人は約33%でした。

グラフ:野菜に限らず普段買い物をする時に、 どのようなことを気にかけていますか?

まとめ

今回の調査から、「買い物で支払うお金によって、地域経済を豊かにする手助けができる」という考え方が自由回答の中にも見られるなど、一定数の人々に認識されていることがわかりました。また「地産地消が望ましい」といった回答も数多く見られました。

その一方で、地元の商店で買いたいけれども、「自宅の近くにない」「夜遅くまで開いていない」などの理由から、現実には難しい状況があることもわかります。こうした消費者の意見は、まちづくりの参考にもなるのではないでしょうか。

JFSではこれからも「買い物で支払うお金によって、地域経済を豊かにする手助けができる」という考えを、消費者だけではなく、まちづくりに関わる様々な立場の人々に伝えていくとともに、一般の人々の「買い物を通じての地域経済への意識」を喚起するための方法や、その意識を行動に移すための方策などについても考えていきたいと思っています。

スタッフライター 新津尚子

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