ニュースレター

2013年08月06日

 

JFS「地域の経済と幸せプロジェクト」のめざすもの

Keywords:  ニュースレター  NGO・市民  幸せ  政策・制度 

 

JFS ニュースレター No.131-1 (2013年7月号)


問題意識

世界中で、「持続可能性」が声高に叫ばれています。いうまでもなく、今の世界や社会が持続可能ではないからです。エコロジカル・フットプリントのデータを見ると、現在の人間活動を支えるために1.5個の地球が必要になっています。これは、世界の人口が増え続けていること、そして私たち一人ひとりの、もっと欲しい、もっと使いたいという欲望のせいでもありますが、それだけではありません。

問題は、今の経済・社会には、拡大へ向かう構造が埋め込まれているということです。その1つが「指標」です。「GDPという経済規模の指標だけを重視してきたことが、今日の問題状況の根底にある原因の1つである」ことを多くの人々が理解し始め、GDP以外の指標(幸福度指標や真の豊かさ指標など)をつくる動きが日本でも世界でも、国際レベルでも国レベルでも、地域や自治体のレベルでも盛んになりつつあります。

JFSの2013年度の「地域の経済の幸せ」プロジェクトでは、日立環境財団の助成を得て、持続可能性の要である地域レベルに焦点をあて、内外の自治体の新しい指標づくりのプロジェクトを取り上げ、地域の持続可能性にとって不可欠である経済の視点がどのように盛り込まれているかを調査するとともに、内外の有識者から「21世紀の持続可能性に向けて地域が持つべき必須の視点」に関する知見を集め、自治体の幸福度指標・豊かさ指標づくりを真に有意義なものにするための枠組みを提供します。

特に「日本の世界への貢献」の観点から、次の2つの視点を重視しています。

1つは「東日本大震災を経験した日本」です。3.11は私たちに多くの教訓を残しました。私たちの暮らしも経済も社会も、目先の経済効率を求めるがゆえに、中長期的なレジリエンス(何かあってもしなやかに立ち直る力)を失っていたということも、大事な教訓の1つでした。経済効率が重視される現在の社会・経済で、レジリエンスも重視するにはどうしたらよいのでしょうか? 地域や組織を考えるうえでの指標にもレジリエンスの考え方を反映するにはどうしたらよいのでしょうか?

もう1つの視点は、「人口減少社会としての日本」の持続可能性のビジョンです。日本は、2004年に人口がピークに達してから、人口減少時代に突入しています。また、1990年代初めのバブル崩壊後、経済は20年ほど停滞しており、「失われた20年」と呼ばれています。

これは、経済成長至上主義から見れば問題かもしれませんが、来るべき「定常型経済」の姿を先取りしているのではないかと私たちは考えています。日本が世界に先駆けて、「人口が増えつづけ、経済規模もどんどん大きくなるという右肩上がり時代」から決別し、都市づくり・まちづくりも、経済や社会の在り方も、人口減少をベースに考えていくにはどうしたらよいのでしょうか? こういったことも考察しながら、本プロジェクトを進めていきたいと思っています。

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具体的な内容

JFSがプロジェクトパートナーとして実施した幸せ経済社会研究所の調査によると、少なくとも22の自治体が「幸福度指標」の作成に取り組んでおり、JFSからの世界への発信も開始しています。

〈参考〉
JFSニュースレター幸せな地域へ!少なくとも22の自治体が「幸福度指標」を作成
自治体の施策推進の原動力としての「さっぽろ"えがお"指標」

こういった日本の自治体や地域の動きを収集、分析、発信していきます。また、「レジリエンス」「人口減少時代の定常型経済」への取り組みも意識しつつ、以下の活動を展開していく予定です。

  1. 内外自治体の幸福度指標・豊かさ指標を調査し、時に経済的な視点がどのように組み込まれているか、組み込むことが有効かを調査・考察する
  2. 内外の有識者から「21世紀の持続可能性を考えたときに、地域が持つべき必須の視点」に関する知見を集め、とりまとめる
  3. 主に国内自治体で幸福度指標・豊かさ指標を策定し、地域づくりに活用し始めているところの担当者を招聘し、シンポジウムを開催することで、国内の実践例や学びを共有し、これからそのような取り組みを始める自治体などと  も共有することで、よりよい取り組みを加速する
  4. 上記の調査・考察、とりまとめ、シンポジウムの内容などを、世界184カ国に情報発信をしているJFSのネットワークを活用して、世界にも発信し、フィードバックをやりとりすることで、内外の知見や事例を結集し、その結果をふたたび発信していく


ぜひ力を貸して下さい

今回のプロジェクトで「地域の経済」という視点を強く意識しているのは、地域の幸せやそこに住んでいる人々の幸せを考える上で、健全で持続可能な地域経済が必要不可欠の基盤となると考えているためです。

経済というと、多くの人々は「貨幣経済」をイメージするかもしれません。しかし、経済には「自給経済」や「バーター経済(交換経済)」もあります。地域の中でどのように食べ物やエネルギー、仕事やお金などが回っているのか? 外から入ってくるものが多く、また、外に出て行くものが多いのか? それとも、地域の中で循環している割合が高いのか? それは地域の幸せにどのように関連しているのか? 経済という側面を意識して地域の幸せを高めていくためには、どのような考え方の枠組み、具体的な取り組みがあるのか、またはありえるのか?

このような問題意識で、JFSは「地域の経済と幸せプロジェクト」を進めていきます。ぜひみなさんのお考えやご存じの取り組みなどを教えて下さい。このプロジェクトの中でぜひ日本の人々や地域にも紹介し、情報・意見交換をしながら進めていけたら、と願っています。よろしくお願いいたします。


(枝廣淳子)

English  

 


 

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