ニュースレター

2011年11月22日

 

どんぐりを預金して森と人をつなぎ直す どんぐり銀行の活動と広がり

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JFS ニュースレター No.110 (2011年10月号)


香川県は19年前から、どんぐりを通じて森と人をつなぎ直す活動に取り組んできました。「どんぐり銀行」と名付けられた活動は、どんぐりをお金に見立てて預金すると半年後に苗木で払い戻されるというしくみです。預金者数は2010年に延べ20,000人を超え、払い戻された苗木は41,500本あまり。預けられたどんぐりは、公共事業の緑化に「融資」もされています。このユニークな活動と広がりについてご紹介しましょう。

どんぐり銀行のはじまり

どんぐり銀行は、円やドルなどのお金ではなく森のどんぐりを扱う銀行です。1992年10月3日、香川県高松市の中央公園で開催された「ウッディフェスティバル」という木材の需要拡大を推進するイベントの中で誕生し、1993年に同県の「県民参加の森林づくり」事業に発展しました。

どんぐり銀行が誕生した背景には、香川県の深刻な森林事情がありました。瀬戸内海に面し大きな河川のない同県は、高温で雨が少ないために過去数百年にわたって、乾燥に強い天然のアカマツ林や成長の早いクロマツ林など、里山林の植生のほとんどがマツ林でした。ところが1975年ごろから松食い虫(マツノザイセンチュウ病)による被害が蔓延し、県内のほとんどのマツが枯れ始めていったのです。

拍車をかけるように、枯れかけたマツ林は開発業者が安く買い叩き、良質な山砂を産出する「採土・採石場」として乱開発していきました。表土を失い穴があいた土地に産業廃棄物を不法投棄して埋め、そこを整地して農地や宅地として転売するという悪質なケースも発生しました。

このような悪循環を絶つために、森と人が再びつながるしくみが模索されていた中で誕生したのが「どんぐり銀行」という発想です。

JFS参考記事:香川県の「ドングリ銀行」
http://www.japanfs.org/ja/pages/022847.html


どんぐり銀行のシステム

どんぐり銀行は、毎年10月の第1日曜日から12月の第1金曜日までのどんぐりが拾える2ヶ月間だけオープンしています。参加者はまずこの期間に香川県内の森や里山、神社などに出向き、クヌギ、コナラ、カシなど、自然に落ちた新鮮できれいなどんぐりを拾い集めて、県内5カ所に設置された窓口に持ち込みます。

どんぐりには2種類の通貨単位が設定されています。「1ドングリ(D)」に換算するのは落葉樹ではコナラ、アラカシ、ウバメガシ、常緑樹では、マテバシイ、スダジイ、ツブラジイなどの小ぶりのどんぐりです。丸くて大きい落葉樹のクヌギ、アベマキは1個で「10ドングリ(D)」と換算します。

口座を開設しどんぐりを預金すると、銀行通帳そっくりのどんぐり預金通帳に金額(D)が記帳されます。発足当時は半年複利で年12%の利子がついていましたが、現在は1月1日に預金者全員に100Dのお年玉が支給されるようになっています。この通帳の有効期限は預け入れた日から2年以内。入金や払い戻し、更新手続きなどをしなければ、自動的に消滅してしまうお金なのです。

2010年度の新規預金者数は470人、有効登録者数は1,996人でした。累計では、これまでに20,431人がどんぐり銀行に口座を開設したことになります。

また、払い戻しはドングリではなく、苗木やポストカード、本などのオリジナルグッズとの交換になります。ドングリの苗木は1本100D,マツ・スギ・ヒノキは1本500D、その他の樹種は時価で、毎年3月の第2日曜日に払い戻されます。

預金として預けられたどんぐりは、払い戻し用の苗木として、県内にあるドングリランドや香川県森林センターで育成されるほか、公共工事現場の緑化に「融資」されたり、クラフトや環境学習の材料に利用されたりしています。2010年度に払い戻された苗木は410本。創設当初から19年間の累計で、41,569本の苗木が払い戻されました。現在も県内のどこかで、森の一翼を担っているはずです。

預金者に送られる年4回発行の「どんぐり通信」には、植林やクラフトづくりなど、森林体験を通じた森づくり活動の情報が掲載されています。このどんぐり銀行認定行事に参加すると、100ドングリ(D)に相当する「どんぐりサンキューカード」が発行されます。


森林ボランティアの成長と自立

どんぐり銀行がスタートして2年目の1993年12月、香川県はどんぐり銀行活動を応援するボランティアスタッフ募集と、財政面で支えるための会員募集を開始しました。小学生や高校生を含むさまざまな職種の66名がどんぐりスタッフとして登録され、1994年4月1日には「どんぐりボランティアネットワーク」という任意団体が発足しました。

この団体はその後、自主性を持った森林ボランティア組織へと変身していき、1999年8月24日には、NPO法人どんぐりネットワークが発足しています。どんぐり銀行の運営を支える強力なパートナーとして、今後も森と子どもたちをつなぐ役割が期待されています。

NPO法人どんぐりネットワーク
http://www.donguri-net.com/footprint.html


どんぐり銀行のひろがり

活動開始から20年近くを経た現在、香川県発のどんぐり銀行の考え方は、日本各地で芽吹きはじめています。神戸では1995年1月の阪神淡路大震災から4ヶ月後の5月15日、誰でも参加できる街の緑化活動のシステムとして、「ドングリ銀行神戸」が、前述のどんぐりボランティアネットワークの支援を受けて発足しました。

1996年には高知県大川村で「どんぐり銀行大川村」も誕生しました。その2年前の12月、四国の水源といわれる早明浦ダムの源流域にあたる同村と、香川県のどんぐり銀行スタッフは、同年夏の異常渇水をきっかけに「交流の森」づくりの協定書を交わし、どんぐり銀行早明浦交流プロジェクトをスタートさせていました。

上流と下流の交流を通して、水源の森を育てようというこのプロジェクトは、企業の賛同も得て、全国約40カ所の「どんぐり共和国」にある銀行出張所から預かったどんぐりを、「大川村本店」に届けています。ここで苗木に育てられた後、払い戻し用の苗木として再び全国に戻っていくのです。

今年も10月2日にどんぐり銀行がオープンしました。一粒のどんぐりが芽吹いて根を張るように、どんぐりを拾い、どんぐり銀行に預金することをきっかけに、楽しみながら森の役割を学び、森とつながる子どもや大人が増えていくことを願っています。

(参考)香川県:どんぐり銀行ウェブサイト
http://www.pref.kagawa.jp/midoriseibi/donguri/index.htm


(スタッフライター 八木和美)

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