ニュースレター

2010年07月13日

 

持続可能なスキー場を目指すHAKUBAの挑戦

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JFS ニュースレター No.91 (2010年3月号)


カナダ・バンクーバーで開催された冬季オリンピックは、私たちにさまざまな夢と感動を与えてくれました。オリンピックは、世界中の人々が人種や国境を越えて一つになれる、素晴らしい祭典です。しかし、私たちは同時に、地球がもたらすかけがえのない恩恵によって、スポーツの楽しみを享受している、という事実も忘れてはなりません。

雪と氷がなければ、冬季オリンピックは開催できない――ウィンタースポーツの選手たちにとって、気候変動は切実な問題です。世界各地で深刻な雪不足に見舞われ、スキーなどの競技大会が相次いで中止された年もありました。ここ日本でも、降雪量は年々減少傾向にあり、雪不足で営業できないスキー場も出てきています。


目指せ! エコスキー場

こうした中、ウィンタースポーツの現場こそ、環境に配慮した行動を実践するべきと、対策に乗り出したスキー場があります。2008年10月、長野県白馬村では、村内にある7つのスキー場(白馬さのさかスキー場、白馬五竜スキー場、Hakuba47ウィンタースポーツパーク、白馬八方尾根スキー場、白馬岩岳スキー場、白馬みねかたスキー場、白馬ハイランドスノーパーク(現在は休業中))が、揃って「白馬エコスキー場宣言!」を発表しました。

北アルプスの麓に広がる日本屈指のスキーリゾート、長野県白馬村。上質な雪とダイナミックな景観が魅力で、国内はもちろん、世界中からスキーヤー、スノーボーダーたちが訪れることで知られます。1998年の長野オリンピックの際には、アルペンスキーやジャンプ、クロスカントリーなど、スキー競技の主要会場となりました。ウィンタースポーツの聖地ともいえるこの村で、環境への取り組みが始まったのは、今から6年前のことです。

白馬村は、人口約9,200人のうち9割が、スキー場の索道事業や観光事業に従事しており、スキー場を核とした観光産業が村の基幹産業となっています。しかし近年、レジャーの多様化や少子化の影響でスキー人口は低迷し、暖冬による雪不足も村の経済に深刻な打撃を与えています。

JFS/A Village's Challenge -- Hakuba as a Sustainable Ski Resort Copyright 株式会社五竜

低迷するスキー産業を「エコロジー」の視点から盛り上げたい――そんな思いを抱いた地元の有志4~5名が、2004年6月、「白馬環境教育推進協議会(通称:白馬エコネット)」を結成し、環境問題の勉強会や調査研究活動を開始しました。この草の根の組織が、「エコスキー場」の実現に向けて、地域の理解と協力の輪を少しずつ広げていったのです。

参考URL:白馬環境教育推進協議会
http://www.tagayasu.com/econet/index.html

白馬エコネットの取り組みは2008年9月、長野県地球温暖化防止活動推進センターが実施する「さわやか信州エコグランプリ」で、最優秀賞に選ばれました。そして、「ストップ温暖化『一村一品』大作戦 全国大会2009」に長野県代表として出場し、審査委員特別賞(エコツーリズム賞)を受賞しています。

参考URL:ストップ温暖化『一村一品』大作戦2009 審査委員特別賞
http://www.jccca.org/daisakusen/area3/nagano/index.html

それでは、エコスキー場で実際にどのような取り組みが行われているのか、いくつか紹介していきましょう。

その1 廃食油の回収とBDF化

エコスキー場宣言をした、すべてのスキー場が共通で取り組んでいるのが、廃食油の回収です。ゲレンデ内のレストランや周辺施設から排出される廃食油を白馬エコネットが回収し、隣接する大町市のNPO「地域づくり工房」でバイオディーゼル燃料(BDF)に精製リサイクルしています。2005年12月から2008年5月までの3シーズンで4,400リットルの廃食油を回収し、3,552リットルのBDFに転換しました。精製したBDFは、同NPOの会員向けに販売されていますが、将来的には、各スキー場が運行しているシャトルバスの燃料に利用することも検討されています。

その2 生ごみの堆肥化

JFS/A Village's Challenge -- Hakuba as a Sustainable Ski Resort
Copyright 株式会社大糸

白馬五竜スキー場(いいもりゲレンデ)では、廃車になったトレーラーの荷台に木箱を並べ、ゲレンデのレストハウスなどから出る生ごみを入れて堆肥化しています。これは、箱の中に生ごみ、もみ殻、そば殻を層にして重ね、微生物の力で発酵させる仕組みで、3カ月から半年後には堆肥になります。1シーズンで約7,000リットルの生ごみが排出されていましたが、堆肥化によって焼却ごみが減り、焼却に使う燃料も大幅に削減されました。


この堆肥は、ちょうど雪解け後の4月から5月に出来上がるため、野菜の種まきをする農家や希望者に無料で提供されています。堆肥のおかげで土が硬くならないと、農家の間でも好評です。また、スキー場の従業員もこの堆肥を利用して、夏場にトウモロコシやじゃがいも、枝豆、ミニトマトなどの野菜を栽培しています。収穫した野菜は、夏合宿にやってくる競技選手や学生たちに提供されています。

その3 エネルギーの有効利用

白馬五竜スキー場(とおみ・アルプス平ゲレンデ)では、施設全体で使用する電力の5割(夏場は8割)を自家発電で賄うと同時に、その際に発生する余熱を温水として利用する、コジェネレーションシステムを導入しています。具体的には、軽油の一種であるA重油を燃料として、重油エンジンで自家発電を行い、スキーセンター内の電力、および山麓から山頂までの全長2,013メートルを結ぶゴンドラリフトの運転に利用すると同時に、発電の際に発生する余熱を施設内の給湯や暖房、融雪などに利用しています。これにより、暖房・給湯用のボイラーを使用する必要がなくなり、二酸化炭素の排出量も大幅に削減されました。

その4 間伐材・廃材の有効利用

JFS/A Village's Challenge -- Hakuba as a Sustainable Ski Resort Copyright 株式会社五竜

白馬五竜スキー場(いいもりゲレンデ)では、廃棄処分されるはずの木材を、独自に加工して有効利用しています。夏場にゲレンデ周辺で伐採されたカラマツやスギなどの木材は、幹が細く建材としての商品価値がないため、通常は廃棄物として処理されます。そこで、いいもりゲレンデでは、これらの廃材を利用し、自分たちの手でリフト乗り場の建物やスキー立て、テーブル、ベンチなどを作ることにしました。春になると、廃材で作ったプランターに色とりどりの花を寄せ植えし、レストハウスの周りに飾っているそうです。

その5 森林保全活動

白馬五竜スキー場(とおみ・アルプス平ゲレンデ)には、どんぐり銀行の出張所が開設されています。どんぐり銀行とは、山で拾ってきたドングリを貯めることができる銀行です。通貨の単位はD(ドングリ)で、コナラなどの小さなドングリは1D、クヌギなどの大きなドングリは10Dとして預金通帳に記載されます。

出張所で預かったドングリは、どんぐり銀行本店のある高知県大川村に送られ、大切に育てられて苗木になります。払い戻しは苗木で行われ、100Dでクヌギやコナラの苗木と交換できます。払い戻された苗木は、自宅の庭や学校、公園などに植えられるほか、大川村で開催される植樹祭で植えることも可能です。同スキー場のどんぐり銀行出張所には、約360名が口座を開設し、ドングリを預けに訪れているそうです。

森林保全は、スキー場に訪れる人が、ぜひとも取り組まなければならない大切な課題です。森林は、人々に余暇の楽しみを提供しているだけでなく、貴重な動植物の生息地であるほか、水源かん養や災害の防止、二酸化炭素の吸収など、多くの重要な役割を果たしています。できるだけ多くのスキーヤー、スノーボーダーが、森林の大切さに目を向け、植林活動など持続可能な社会づくりに参加していく必要があります。

参考URL:高知県大川村 どんぐり銀行
http://www.donguribank.com/


そしてエコビレッジへ

白馬村のエコスキー場の取り組みには、持続可能なリゾートを目指すためのさまざまなヒントが隠されています。「エコスキー場というテーマは、白馬エコネットにとって、あくまでも通過点にすぎません。白馬村全体を環境に優しい村、つまりエコビレッジにすることこそ、最終到達点と位置付けています」と、白馬エコネット事務局長の尾川耕さんは話します。50年先、100年先もウィンタースポーツの聖地であり続けたい――白馬村に住むすべての人の思いが一つになれば、エコビレッジを実現する日はそう遠くないはずです。

JFS/A Village's Challenge -- Hakuba as a Sustainable Ski Resort
Copyright 株式会社五竜


(スタッフライター 角田一恵)

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