ニュースレター

2003年12月01日

 

「働き方から変えていく」 - 人材派遣会社グレイス

Keywords:  ニュースレター 

 

JFS ニュースレター No.15 (2003年11月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第7回
http://www.grace-e.co.jp/

雇用形態・働き方の変化と人材派遣の成長

今、日本人の雇用形態と働き方は変貌を遂げつつあります。企業のアウトソーシングが進む中、労働市場ではパートやアルバイトなど非正社員の割合が急増(2001年総務省調査によると全労働人口の4人に1人が非正社員)し、また派遣社員数も同様に拡大。実に、一般派遣社員数は、95年の54万人から2000年の125万人へと、5年間で約2.3倍(厚生労働省調査)に増加しています。

この変化の根底には、ご存知のように過去10年の不況の間に大企業の終身雇用制度が崩壊し人材が流動化したという外部的変化があります。しかしそれ以上に、人々が自らの働き方を変えようという内部的変化が影響していることも見逃すことはできません。例えば若い人の間で企業依存度が薄れ、フリーエージェントとして会社を働くインフラの一つとみる傾向が広くみられます。さらに、元気な団塊の世代が数年のうちに定年退職を迎えるなか、雇用形態と働き方はますます多様化することが予測されています。

環境をキーワードにした人材派遣を提唱するグレイス

1995年に誕生した株式会社グレイスは、このような人材派遣業の成長のなかで、環境をキーワードに人材派遣・育成を行いつつ、新しい働き方を提唱している日本企業です。同業他社に比べ圧倒的に多くの環境関連の有資格者、研究者、専門家を含む約5000名の派遣登録者を抱え、18名の従業員で2003年3月期には約10億円の売上を上げています。

設立の1995年当時、環境系の人材派遣を提唱してはいましたが、実際にそのような需要は限られていました。しかし96年に研究開発職の人材派遣が解禁され環境に関連した研究開発職の人材派遣が増えた他、企業が消極的に環境規制に対応する「環境対応」から、積極的に環境を事業機会として取組み情報発信する「環境戦略」へと移っていくなかで、環境系の人材派遣需要は99年から2000年頃に大きく伸び始めました。

この時期の企業活動を具体的に見てみると、そうした需要の伸びを理解することができます。企業のISO14001の登録件数は、140件(96年)から、1000件(98件)、5075件(2000年)、さらに10952件(2002年)と急増していきます。また、活動のコミュニケーションとして環境報告書を発行する企業数も、100以下(98年)から、400超(2000年)、さらに700弱(2002年)へと急増加しています。そしてこの流れと期を一にして、グレイスの環境系派遣社員への需要は増加し、99年には一般系事務職の需要を上回り、03年には980件の派遣件数の内、7割弱を環境系が占めるようになりました。

その環境系の内訳もときとともに変化しています。当初はほとんどを環境分析関連業務(環境計量士、環境測定士など)が占めていましたが、今は研究開発そのものに携わる食品・医薬品の分析技術者、バイオ研究者が主流になってきています。また環境系には理系出身者が圧倒的に多かったのが、現在は環境マネジメント、環境の知識が必要とされる翻訳業務、環境知識の求められる営業、環境ISO審査員などに広がりを見せています。

登録スタッフとともに環境に取り組む

グレイスは、99年に人材派遣先のISO14001取得企業と接しつつ、自らも勉強を深める中で、人材派遣業界にとっての環境への取組み・マネジメントについて深く問うていくことになりました。ただ紙・ゴミ・電気の使用量を減らすだけでは効果は知れています。人材派遣業が持続可能な社会に向けてできることは何なのか。もし当時3,000名以上いた登録スタッフを啓発することができれば、大企業の環境経営と同じだけの効果を生み出すことができるのではないか。そう考えた同社は、1999年に人材派遣業者として始めてISO14001を取得し、環境への取組みにさらに本腰を入れることになります。

それではグレイスでは、実際の業務でこの啓発をどのように行っているのでしょう。まずは、派遣先での仕事において積極的に環境に取り組むよう、登録者に同社の環境方針を説明すること。そして次に、登録者に、文系・理系の垣根を越える継続的な学習・スキルアップの場を提供することです。

よく人材が陥りがちなパターンとして、環境分析ができても職場での環境マネジメントやビジネスに対し視野が狭い、或いは、文系で環境マインドはあるが化学的知識やスキルが十分でないケースがあります。そこで、「エコナレッジセミナー」と称して、研究者や技術者の理系登録者にはEMSやビジネスを、編集者やコンサルタントの文系登録者には化学の知識・スキルを学んでもらう機会を提供しています。これまでに、大学の医学部と協働による「環境と医学・健康の講座」や「環境・ビジネススキルアップ講座」を開催しました。またこうした活動の報告をまとめたニュースレターを、毎月の給与明細の送付時に合わせて送っています。

安井悦子代表は、これから求められる人材像について、「環境人材派遣とグリーン雇用」と題する自らのレポートにこう記しています。「環境に先進的な企業では、社内に環境室や環境本部を据えて全社、全グループ的な環境戦略を行っており、その中で環境報告書、環境会計、ステークホルダー対応などを行っているが、現在の環境問題のひろがりは、そうした専門部署だけが環境対応を行っていればそれで事足りるわけではない。」

営業から人事、経理、企画など、あらゆる分野で環境問題のエッセンスに対する理解が求められており、「企業の環境対応には、規制への対応をはじめ、エコ商品の開発、環境ソリューション技術の開発など専門性の高い領域から、グリーン購入やゴミの減量、ステークホルダーへの対応など、現場レベルで行わなくてはならないことも多数存在している。取引先の環境対応をチェックするにも最低限の環境に対する知識が必要である。」

実際、同社専務取締役の小川二美代氏と、企業と人材をマッチさせる役割を担うマッチング・ディレクターの青木和哉氏は、今市場でそのような人材が求められていることを現場で感じていると言います。例えば、広報と環境の両方を知っている人材。または、商品開発ができ、物質の人体への影響も理解できる人材。或いは、環境分析ができるだけでなく、商品開発、営業、そしてコピーライティングもできる人材。或いは、シックハウス症候群などの生物学的知識を備えたハウジングアドバイザーなどです。

持続可能な社会の働き方へ‐グリーン雇用の挑戦

同社は2003年から「グリーン雇用」という概念を提唱しています。ここには「環境」以外の要素も入っており、あえて定義するなら「持続可能な社会に向けて活き活きと楽しく働く雇用・働き方」ということになります。人も企業も元気になり、社会も持続可能になるような働き方のことです。考えてみれば、持続可能な社会は、技術や社会システムがつくる以上に、人がつくり、支え、発展させるものです。人材派遣業におけるグレイスの先進的な取組みは、私たちの働き方こそ持続可能な社会に則したものにすることの重要さを教えてくれるのです。

(スタッフライター 小林一紀)

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