ニュースレター

2010年08月10日

 

食料問題に取り組み世界を健康に ~ TABLE FOR TWO

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JFS ニュースレター No.92 (2010年4月号)
シリーズ:ユニークな日本のNGO 第12回
http://www.tablefor2.org/


「TABLE FOR TWO」という日本発のユニークな社会貢献活動があるのをご存じですか? 今回はこの活動に取り組んでいるNPO法人「TABLE FOR TWO International(以下TFT)」をご紹介しましょう。

TFTによると、今、開発途上国で10億人が食事や栄養を十分に取れない飢餓にある一方で、先進国では10億人が肥満など食に起因する生活習慣病に苦しんでいます。この食の不均等を是正しようと、2007年の秋にTFTは設立されました。

開発途上国の飢餓と先進国の肥満や生活習慣病に同時に取り組むTFTの仕組み

TFTは、社員食堂を持つ企業や団体と提携して、通常より低カロリーで栄養バランスの取れたヘルシーな食事を社員に提供します。その際、寄付金として20円をその価格に上乗せしてもらい、その寄付金はTFTを通じてアフリカの子どもたちの学校給食に使われます。20円というのは、開発途上国の給食1食分の金額で、先進国で1食とるごとに開発途上国に1食が贈られるという仕組みです。

また、参加者に世界の飢餓問題に関心を持ってもらうために、対象となる食事には「20円が開発途上国の給食として寄付される」ことを表示するようにしています。

TABLE FOR TWOという名称は、先進国の人々と開発途上国の子どもたちが、時間と空間を越え食事を分かち合うというコンセプトからくるもので、TFTはこの取り組みに参加することによって得られる地球人としての一体感と思いやりの心が、現在の世界にとって不可欠だと考えています。


日本発の社会貢献事業

「世界を変えるインパクトのある社会事業を日本から起こそう」と、TFTは誕生しました。日本発にTFTがこだわった点についてTFT事務局の安東迪子(みちこ)さんは、「これまで社会貢献の世界では、欧米で始まり日本に支部設立、という流れが多かったため、その逆に日本から世界へ打ち出していきたかった」と説明してくれました。

設立された2007年末のTFT参加団体数は11団体でした。日本ではこの翌年の2008年4月より、40歳以上74歳未満を対象にメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)などの生活習慣病について高いリスクを持つ人々を健診で抽出し、保健指導をするよう企業などに義務つけた制度「特定健康診査・特定保健指導(通称メタボ健診)」がスタートしました。

この制度も後押しとなり、メタボ健診がスタートすると、従業員が無理なく参加できる健康対策プログラムを探してTFTにたどりついたという福利厚生担当者からの問い合わせが増加しました。参加企業の伸び率が一気に上がり、2008年末時点で98団体、2009年末時点で212団体と増え、2010年3月現在は241団体がTFTのプログラムを取り入れています。

TFTのメリットは、「誰でも気軽に参加できること」「社会貢献とメタボ対策(社会貢献と健康増進両方を同時に実現)」「負担が少なく継続が容易(導入コストは告知ポスター等の実費1万円のみなので、コストのかからない社会貢献活動)」「日本でスタートした活動だということ(日本人が考えた仕組みということで共感してくれる人も多いそうです)」「20円で1食の分かりやすさ」などがあります。参加者からは「毎日の生活の中で、食堂に行ってメニューを選ぶだけで貢献できるというのが、肩ひじをはらず気軽に参加できていい」という感想も寄せられているそうです。


TFTの学校給食支援

現在TFTは、東アフリカに位置するウガンダ、ルワンダ、マラウィの3か国で、他の団体と協力して学校給食を届ける支援を行っています。

たとえば、ウガンダでは、国連「ミレニアムビレッジ」プロジェクト(※)と提携して給食の提供を行っています。TFTは、寄付金のうち事務局活動費を除いた金額を2008年4月より四半期ごとに、国連「ミレニアムビレッジ」プロジェクトの窓口である米国NPO法人ミレニアム・プロミスやその他の提携団体に送金し、学校給食の費用に充てています。2010年2月時点で245万食以上の給食を贈りました。

※国連「ミレニアムビレッジ」プロジェクト
http://millenniumpromise.jp/about/about_village.html

支援先の一つであるウガンダのルヒイラ村では、給食を始めてから生徒数が大幅に増え、手洗いや食器洗いの習慣をつけることで、感染症も減少したそうです。もう一つの支援先、マラウィのムワンダマ地域では、給食プログラム開始時には450名だった生徒が、2009年1月には700名程度に増加し、村内就学率が70%まで高まりました。そして、卒業生50名のうち、42名が高等教育への進学テストに合格しました。

また、TFTでは、給食事業を運営するための資金提供と教育支援を行い、軌道に乗り定着した後は、現地の人たちが自分たちの力で給食事業を続けていくことを目指しています。そのため寄付金は、給食の原材料費に加えて、両親への給食運営の指導トレーニングを行う管理者の人件費、給食を作るのに必要な調理器具の購入や運搬にかかる費用など、給食事業を運営するために必要となる経費にも使用しています。

寄付により提供される学校給食は、子どもたちの空腹を満たすだけではなく、就学率や学業成績の向上、子どもたちの基礎体力向上と病気予防の強化、学校と親とのコミュニティ形成などの効果が期待されており、貧困解決のために重要な役割を担っているのです。


広がるTFTの活動

TFTの活動は、企業や団体の社員食堂でTFTの食堂プログラムを提供することからスタートしましたが、2009年2月には、主に大学学生食堂へのTFT導入を目指し、全国の大学へTFTの活動の輪を広げようと活動している大学生の団体、TFT-University Association(TFT大学連合)も誕生しました。

また、企業や団体に属さない個人でも気軽にTFTの活動に参加できるよう、レストランチェーンやホテルと提携してTFTのメニューを提供したり、コンビニエンスストアやインターネットでTFTメニューやTFTのロゴの入った商品を販売するなど、活動を拡大しています。

TFT事務局の安東さんによると、最近こうした社会貢献の寄附つき商品が売れる傾向にあり、TFTマーク付きの商品についても、同じような価格帯の同系統の商品と比べて売上が伸びているというデータがあるそうです。TFTブランドの商品を提供している企業側の方々からも、「入社以来、初めて子どもに自慢できる仕事ができた」「お客様から『いいことをされていますね』とお声がけいただけた」などの喜びの声が寄せられているそうです。TFTは、このような一般消費者が参加できる場を増やすため、今後もスーパーやコンビニなどの流通、食品・飲料メーカー、外食産業や中食産業との協働に力を入れていくそうです。

そして、この日本発の取り組みは海外にも広がりをみせつつあります。2008年にニューヨークで支部を開設し、2009年より活動がスタート。今はアリゾナのサンダーバード大学のカフェテリアのみで実施していますが、企業や大学からの問い合わせが増えており、近々拡大していくと期待されています。また、現在イタリアに支部開設を検討しており、安東さんは「スローフード発祥の地にTFTを広げたい」と思いを語ってくださいました。

TFTの特徴は、支援する側とされる側の双方にメリットがあることです。開発途上国の子どもたちと、先進国の人々が、同時に健康になれる仕組みなのです。

それだけでなく、企業にとっては社会貢献による社会的評価の向上や売り上げのアップにつながる事も期待されます。TFTメニューを購入した人はアフリカの子どもたちの笑顔を思いうかべて、ほっこりした気持ちになるかもしれません。アフリカでは子どもたちの学習意欲が向上し、高等教育を受けることで貧困から抜け出すことができるでしょう。

TFTのプログラムは、参加している人々に健康だけでなく、さまざまな幸せをもたらしてくれる仕組みなのです。日本で生まれた健康と幸せを作る仕組みが、どんどん世界中に広がっていくことを願っています。


(スタッフライター 米田由利子)

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