ニュースレター

2010年06月22日

 

「地球満足」をアピールし、選りすぐりの商品と情報を提供し続ける ~ カタログハウス

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JFS ニュースレター No.90 (2010年2月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第88回
http://www.cataloghouse.co.jp/


インターネットによる通信販売が一般的となった現代。でも、やはり商品カタログをじっくり手に取って選びたい―カタログハウスが発行する「通販生活」は、そんな多くの読者に支えられています。カタログ「通販生活」は1冊180円と有料であるにもかかわらず、定期購読者数は約100万人、書店販売も含めると140万部という商品カタログとしては日本一の発行部数を誇っています

1976年に創業した同社は、室内ランニング器の通信販売からスタートし、現在は家電、衣類、雑貨、化粧品、食品などの商品を取り扱っています。2006年にオープンしたネットショッピングの利用者も増えていますが、年3回発行の「通販生活」も、依然として多くの読者を引き付けています。商品説明のほか、社会、環境問題の記事も多く、ずっしりと手ごたえのある読み物としての魅力も人気の理由でしょう。

例えば2010年1月に発行された春号では、「徴農制の導入について」「北朝鮮の核の脅威と憲法九条改定の是非」「民主党の政策で日本の子どもの貧困はなくなるか」「後悔しない『終の住処』について」などの特集を組んでいます。

同社の環境活動は、2001年から次のような「商品憲法」としてまとめられています。

第1条 できるだけ、「地球と生物に迷惑をかけない商品」を販売していく。
第2条 できるだけ、「永持ちする商品」「いつでも修理できる商品」を販売していく。
第3条 できるだけ、商品を永く使用してもらうために、「使用しなくなった商品」は第二次使用者にバトンタッチしていただく。
第4条 できるだけ、「寿命がつきた商品」は回収して再資源化していく。 
第5条 できるだけ、「ゴミとCO2を出さない会社」にしていく。
第6条 できるだけ、「メイド・イン・ジャパン」の販売を増やしていく。
第9条 できるだけ、核ミサイル、原子力潜水艦、戦闘機、戦車、大砲、銃器のたぐいは販売しない。 
http://www.cataloghouse.co.jp/company/constitution/index.html

「通信販売という形態では、お客さまにどうやって関心を持っていただけるか、よりわかりやすく伝えることをつねに考えています」と話す広報室マネージャーの倉林豊さんに、今回はこの憲法の第5条と第6条を中心にお話を伺いました。


CO2排出削減のためにグリーン電力の利用を

第5条の「できるだけCO2を出さない会社」を目指す取り組みのひとつとして、同社では「グリーン電力購入」の仕組みを利用して、全社(本社、各店舗、物流センター)で消費した電力から発生したCO2を相殺(オフセット)しています。「グリーン電力購入」とは風力、水力、太陽光、地熱、バイオマスなどの自然エネルギーで発電したグリーン電力の環境価値を「グリーン電力証書」として購入するというものです。2009年には、全社で消費した電力202万3,415kWh相当のグリーン電力を、バイオマス発電を行っている兵庫パルプ工業株式会社谷川工場発電所、九重地熱発電所、秋田未来エネルギー市民風力発電所の3カ所から購入しました。それによって、約860トンのCO2削減となりました。

一方、このグリーン電力証書の仕組みを消費者にも広げていこうと、同社が販売している家電商品に適用し、2009年に以下の実験を行いました。ヒーター、除湿機、炊飯器など、年間の電気消費量が100kWhを超える家電商品10点を対象に、消費者が購入後に使う電力の100kWh分をグリーン電力に変える証書を同社が購入するというシステムです。購入先は、ニワトリの糞から電気をつくるというユニークな取り組みを行っている、鹿児島県の南九州バイオマス宮之城発電所。県内各地の養鶏場から集められた鶏糞で年間最大1544万kWh(2008年現在)の電気を発電しています。処分の方法に苦慮していた鶏糞で、これほどの電気が起こせたというわけです。

結果として、年間で商品は10点合計で3万4192個売れ、341万9200kWh分のグリーン電力購入となりました。「お客さまにとっては、このシステムから、なかなかメリットを感じてもらいにくかったのですが、確かにCO2削減効果はありました。今後は個人でも利用できるようにしたいのですが、現在のところ、仲介者である『自然エネルギー・コム』では1,000kWh以上のグリーン電力証書でなければ購入できないなど、必ずしも個人のお客さま向けとはいえません。たとえば当社で何かのイベント時にグリーン電力を使うということなども考えていきたいです」と倉林さんは話しています。
http://www.cataloghouse.co.jp/company/constitution/results.html


7割の商品が「メイド・イン・ジャパン」

同社でここ数年重視しているのが、第6条の「できるだけ、『メイド・イン・ジャパン』の販売を増やしていく」という項目です。2009年度に掲載した商品では、延べ782点中、547商品(69.9%)が国産品でした。

2009年から「通販生活」の題字にも、新たに「メイド・イン・ジャパンの買い物で失業率を減らしたい」という一文が登場しました。ただ「安い」という理由で消費者が買い物をすると、小売業は少しでも安い製品を作るために人件費の安い新興国、途上国に製造を依頼し、雇用の現場を移してしまいます。その結果、国内での失業者をつくってしまうわけです。総務省の「事業所統計調査」によると、日本の製造業はピーク時の1991年には33万7578社ありましたが、2006年には25万8648社にまで落ち込んでいます。

同社が扱う全商品の中でも、特に食品は多くの国産品を扱っています。ここ数年、日本では食品の安全にかかわる問題が多発し、消費者にとっても産地に対する関心が高まっているといます。「できるだけ、『地球と生物に迷惑をかけない商品』を販売していく」としている商品憲法第1条に則って、2009年度から、食品、化粧品、洗剤はジャンルごとにルールをまとめ、別冊「ソロー」として発行しています。食品の原材料について、通常は第一次または第二次原材料までしか表示されませんが、ここには第三次原材料までを掲載することによって、消費者は詳細な情報を得ることができます。


「満腹社会」での通信販売

少品目だけを扱うという同社の企業理念は、小売の側がきちんと商品検査を行い、選び抜いたものだけを紹介するということ。消費者は多品目の商品で迷う必要がなくなり、安心して買い物ができるというわけです。さらに、商品憲法の第2条から第4条に記されているように、商品を長期間使ってもらうために、修理部門- 元のメッセージを隠す -「もったいない課」で修理をし、不要になったものはネットショップの「温故知品」が買い取り再販するリユースを行い、最終的に寿命が尽きた商品に関しては、回収、再生をするというように、徹底してモノとのかかわりを大切にしています。

同社では、このような考えや環境問題に早い時期から着目してきましたが、今はどの企業でも「地球環境とビジネスとの共生」という難問に取り組んでいる時代と言えるでしょう。倉林さんは、「小売業というのは、商品への思い入れ、なぜその商品を売るのかということを伝え、そこにお客さまとの信頼関係が生まれます。大規模店舗の進出などで個人商店が消えつつある中、そうした信頼関係が生まれにくい状況ではないでしょうか。カタログハウスは通販という形ではありますが、まさにそういった個人商店と同じ。バブル期と違ってモノを欲しがらない人が増えた今だからこそ、これからの小売の課題について考えていかなければなりませんね」と話しています。

企業理念の中には「満腹社会下での通信販売」という言葉も登場します。必要なモノが満たされてしまった「満腹社会」で、「これ以上消費を増やしていいものだろうか」という問題意識を投げかけながら、カタログハウスでは、消費者の指針となる「地球満足」をアピールしたいと考えています。あふれるモノや情報の中から、私たち消費者が何を選び取っていくかで、小売業も社会全体も変わっていくとしたら、こうした的確なアピールこそ、今後ますます求められていくのではないでしょうか。


(スタッフライター 大野多恵子)

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