ニュースレター

2010年04月27日

 

「省エネ、創エネ、蓄エネ」で、家まるごとCO2ゼロの暮らしへ ~ パナソニック  

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JFS ニュースレター No.88 (2009年12月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第86回
http://panasonic.co.jp/


環境問題への対応が急加速している現代、エコロジーとエコノミーを同時に追求する政策が世界各国で進められ、家電業界も大きな転換期を迎えています。国内では、2009年5月から政府による「エコポイント制度」が導入され、エアコン、冷蔵庫、テレビなど省エネ家電への注目が高まっています。2009年秋、パナソニックではこれまでの省エネ家電からさらに進化した、センサーによってエコ運転を実行する「エコナビ搭載家電」の発売を始め、家電量販店の店頭をにぎわせています。

総合エレクトロニクスメーカーである同社は、創業90周年を迎えた2008年、松下電器産業株式会社からパナソニック株式会社へと社名を変更しましたが、「事業を通じて社会に貢献する」という経営理念は、一貫して変わらないものです。今日では「地球環境問題解決への貢献」を最大のテーマとし、2007年度から3年間の中期経営計画では、「収益を伴った着実な成長」とともに「すべての事業活動で環境負荷を削減」することを車の両輪として加速を図ってきました。中でも、地球温暖化対策の加速と環境経営のグローバル推進に焦点を当てた「エコアイディア戦略」を、「商品」「モノづくり」「ひろげる」という3つの切り口で推進しています。

省エネ性能を徹底して追求していく「商品のエコアイディア」、企画、設計から生産、販売、リサイクルに至るプロセス全体で、CO2排出量の削減を進めていく「モノづくりのアイディア」、従業員、家族、地域の人々が、身近なところで環境活動を行う「ひろげるエコアイディア」という3つの切り口で目標を設定。モノづくりの過程では、「すべての生産活動におけるCO2排出量を、2009年度に2006年度比で30万トン削減する」という目標を、既に2008年度に1年前倒しで達成しています。また、「ひろげるエコアイディア」においては、2008年10月に、「エコ活動でパナソニックがひとつにつながろう」という趣旨で、世界39カ国、342事業場が一斉に地域の環境保全活動を行う「パナソニックエコリレー」を実施しました。

さらに、「商品のエコアイディア」を進化させた形として、「省エネ、創エネ、蓄エネ」によって、家全体からのCO2排出をゼロにする暮らしを提案しています。今回は、その暮らしを具体的に提案している同社のモデルハウス「エコアイディアハウス」を通して、最先端の取り組みを見ていきましょう。


エコアイディアハウスとは

2009年4月、東京・有明のショウルーム・パナソニックセンターに、「エコアイディアハウス」が開設されました。ここでは、光や風の自然の恵みをふんだんに採り入れながら、資源やエネルギーを無駄なく利用している様子がうかがえます。「省エネ」は、生活家電、設備機器のエネルギー消費量を大幅に減らしたり、家そのものの断熱効果を高めたりすることで実現。「創エネ」は、燃料電池や太陽光発電から家庭で使うエネルギーを創り出すこと。「蓄エネ」は、発電した電気を家庭用リチウムイオン電池に貯めて、必要なときに使うこと。これらの組み合わせによって、3年から5年後に実現する「家まるごとCO2±0(ゼロ)のくらし」を提案しています。

環境本部・環境企画グループ・コミュニケーションチームの羽島智之さんは「エコアイディアハウスでは、自然の恵みを活用する日本古来の知恵を取り入れながら、現代のテクノロジーを応用して心地よさと省エネの両立をめざす『一歩先のエコ』なくらしをご提案しています」と、話しています。


家電や高断熱建材で徹底した「省エネ」

家庭の省エネを進める上で、最も基本となるのは使用する機器自体の省エネです。センサー機能とプログラム機能を併せ持った「エコナビ」の登場で、これまでの省エネ家電から、さらに進化を遂げています。

まずは、家庭のCO2排出量の約25%を占めるエアコン。最新型の「エアロボXシリーズ」では、壁や家具などを検知する「間取りセンサー」、人の居場所と動きを検地する「ひとセンサー」、日差しの強さを検知する「日射センサー」によって省エネ運転を行い、この組み合わせで、暖房時には、同社の従来製品から最大約70%の省エネとなるのです。冷蔵庫には、「照度センサー」と「開閉センサー」の機能が付いています。例えば、冷蔵庫の周囲の灯りが消えると、家族が眠って冷蔵庫を使わないと判断して、エコナビ運転に変わります。毎日のドア開閉も検知して、生活パターンを記憶、分析し、留守中などはエコナビ運転になるという仕組みです。これらによって、従来製品から冬には約15%の省エネ、夏には約12%の省エネとなります。

照明設計では、「適所適光」「適時適照」の考えを提案し、「エコアイディアハウス」では、すべてのあかりをLED照明にしています。2009年10月に発売されたLED照明なら、60形の一般白熱電球に比べて、ほぼ同じ明るさで電気代が8分の1。長寿命で軽量、光色も選べるという特長があります。

ほかにも省エネを図る方法として、夏は涼しく、冬は暖かい床下の空気を室内に取り込み、エアコンの負荷を軽減できる換気システム、空気の熱を利用したヒートポンプ技術、断熱材などが挙げられます。同社のオリジナル真空断熱材「U-Vacua」は、ガラス繊維をラミネートフィルムで覆った非常に薄いもので、ジャーポット、浴槽、冷蔵庫から建材までと幅広く使われ、特に家全体を包み込むように断熱効果を発揮することで、大きな省エネにつながります。


最新技術による「創エネ」と「蓄エネ」

省エネ技術でCO2を徹底的に削減し、それでも必要なエネルギーは、燃料電池、太陽光発電、蓄電池による「創エネ」「蓄エネ」で、まかないます。

2009年5月から、同社が世界で初めて一般販売を開始した燃料電池。都市ガスに含まれるメタンから取り出した水素と、空気中の酸素を反応させることで発電します。発電時に出る熱で同時にお湯をわかし、シャワーや床暖房に使える創エネシステムです。季節や天候、時間帯に影響されず、安定して発電できる特長があり、将来のエネルギー機器として注目されています。

太陽光発電は、季節、天候、時間帯の影響は受けるものの、発電時にCO2を全く排出しないことが最大のメリットです。同社は今後、戦略事業分野としてエナジー関連事業を一気に展開、加速するとしています。

さらに、必要な時にいつでも取り出せるように電気を蓄えておく蓄電池の実用化を目指しています。リチウムイオン電池を採用し、燃料電池と太陽光発電でつくり出した電気を貯めておきます。朝夕のピーク時や雨天時など、創エネ機器だけでは供給が足りない場合に安定したエネルギー供給ができ、今後必要不可欠な装置となっていくことでしょう。


ホームネットワークでつながる

ここまで見てきた機器など、住宅内の複数の家電機器や給湯機器を、IT技術で自動制御するHEMS(ホームエネルギーマネージメントシステム)でつなぎ、見える化すると、家全体のエネルギー使用量が一目で分かるようになります。AV機器、家電、燃料電池、太陽光発電など、ほぼすべての機器をつなぐことが可能になり、家全体のCO2排出量の削減に貢献します。そして、通常では見えにくいこのような情報を家庭内のテレビに表示することができ、誰でも簡単に確認できるようになります。

「これまでの3年間のエコアイディア戦略では、温暖化対策に焦点を当て、大きな成果を生むことができたと考えています。今後もさらに環境経営を進化させていきます」と、羽島さん。10月に発表された新中期計画において大坪文雄社長は、「創業100周年となる2018年には、エレクトロニクスで世界ナンバーワンの『環境革新企業』になるということに目標を置いています。そのために2010年度から2012年度の新中期計画は、その基盤づくりを果たす3カ年と位置づけ、『国内中心』から『徹底的なグローバル志向』、『既存事業偏重』から『エナジーなど新領域』、『単品志向』から『ソリューション・システム志向』など、グループ全体として大胆なパラダイム転換を進めていきます」と、力強く明確なビジョンを伝えています。

JFS参考記事:「開発する全製品をグリーンに」 - 松下電器グループ
http://www.japanfs.org/ja/join/newsletter/pages/027243.html


(スタッフライター 大野多恵子)

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