JFS ニュースレター No.85 (2009年9月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第83回
http://www.sompo-japan.co.jp/
気候変動や生物多様性の危機など、地球が抱えるさまざまな環境問題に対し、保険・金融業には本業を生かした新しい役割が期待されています。エコファンドや、気候変動のリスクに適応するためのCSR金融などが、その代表例でしょう。
「リスクと資産形成に関する総合サービスグループ」を事業像として掲げる株式会社損害保険ジャパン(損保ジャパン)は、創業120年という歴史の中で企業価値を高め、同社の前身である旧安田火災海上保険株式会社の後藤康男社長(当時)が1992年の地球サミットに参加して以来、地球環境問題に強くコミットしてきました。
2008年11月には、環境保全への取り組みを環境大臣に対して約束する「エコ・ファースト企業」の認定を受けました。その中で、「CSR金融」による社会的課題の解決、「持続可能な発展のための教育(ESD=Education for SustainableDevelopment)」の実践による人づくり、低炭素社会へ向けた省エネ活動、グリーン購入の推進、地域における協働という5つの約束を掲げています。
※ JFS関連記事:環境省と企業 環境への取り組みを約束「エコ・ファースト制度」
http://www.japanfs.org/ja/pages/028504.html
損保ジャパン 国内保険業界初 代理店の全国組織でグリーン購入推進システムを構築
http://www.japanfs.org/ja/pages/028792.html
中でも注目されるのは、気候変動に対応する「天候インデックス保険」など、CSR金融の開発を通して本業の強みを生かすこと。そして、これまでNPOと協働で培ってきた環境教育によって、地球環境問題への取り組みを社会全体にいっそう根付かせることが重視されています。
天候インデックス保険の開発
近年、地球規模の気候変動によって、巨大ハリケーンや大洪水など、異常気象による大規模災害が増加しています。同社にとって、この気候変動に対していかに適切な適応と緩和に取り組むかが、重要な経営課題のひとつです。
特に適応については、既に現れている気候変動の影響に、どのように賢く対応していくのかが注目されます。中でも、インフラ整備などが遅れているため気象災害に脆弱な開発途上国にとって、その被害は深刻です。
そこで、同社では適応策のための新しいリスクファイナンス手法について国際協力銀行などと研究を行ってきました。さらに、この研究結果をふまえたパイロットプロジェクトとして、現在、タイ東北部の農業従事者向けの天候インデックス保険を、2010年に商品化すべく準備を進めています。天候インデックス保険とは、気温、風速、降水量、積雪量などのインデックス(指標)が一定の条件を満たしたときに、あらかじめ約定した金額の支払いを受けられる保険商品で、農作物の生育に必要な量の雨が降らなかった場合などに、農家が保険の適用を受けられるというものです。
コーポレートコミュニケーション企画部CSR・環境推進室課長の福渡潔さんは、「天候インデックス保険について、国際協力銀行と共同で研究会を発足させたのは2007年です。アジアの各国を調査した結果、ある程度経済的に安定していて農業従事者が多いタイを選んだのです」と商品開発の背景を説明しています。
プロジェクトを実施するのはコーンケン県という地域で、対象となる作物は米。現地のタイ農業協同組合銀行と共同で話を進めることによって、従来保険に馴染みのなかった農家に保険の加入機会を提供できるようになりました。農家は、銀行から稲作のために必要な融資を受けているため、そのローンに天候インデックス保険を付帯するという方法を取ったのです。

タイでの現地農業従事者への説明会の様子
Copyright 株式会社損害保険ジャパン
2008年6月と2009年8月の2回、現地調査に訪れた企業商品業務部リスクソリューショングループの廣岡智さんは、「農家の人たちにインタビューをしてきましたが、天候リスクを回避する手段があるのはありがたいと、いい評価をいただきました」と手ごたえを感じています。
現在は、現地の気象観測所を通して信頼性の高い気象データを把握し、タイ政府の保険委員会事務所との認可申請交渉を進めながら、商品化への準備を行っています。
日本のエコファンドの先駆けとして
環境に積極的に配慮した事業活動を行う企業を応援するための投資信託商品「エコファンド」は、欧米で広く普及し、日本でも少しずつですが広がりを見せています。
同社では、1999年に国内2番目のエコファンドである「損保ジャパン・グリーンオープン(愛称:ぶなの森)」を設定しました。以来10年間、地域金融機関を中心に120社(2009年3月末現在)が取り扱うようになり、日本におけるSRI(社会的責任投資)の普及にも貢献してきました。
銘柄の選定にあたっては、株式会社損保ジャパン・リスクマネジメント(SJRM)の環境アナリストチームが、CSRレポートなどのデータ分析とアンケート、ヒアリングをもとに企業の環境経営度を分析します。近年は特に温暖化対策に分析の重点が置かれていますが、生物多様性に関する質問も追加されました。分析結果をフィードバックすることで、各企業の環境への取り組みを加速させる働きもあります。
2009年3月末時点で「ぶなの森」の純資産総額は124億7900万円。世界的な金融不安の中で高いパフォーマンスを示しており、ファンドの格付けを行う株式会社格付投資情報センターによる「R&Iファンド大賞」の投資信託国内SRIファンド部門や確定拠出年金国内株式部門などで優秀ファンド賞または最優秀ファンド賞を、3年連続で獲得しています。
さらにエコファンドを広めるために、福渡さんは「今後は、年金運用に組み入れていく流れを作ることが有効です。『ぶなの森』については、すでに確定拠出年金に取り入れるしくみができ、個人の運用にも理解を深めてもらえれば」としています。
「リフォームローンecoプラン」で生物多様性保全を応援
CSR金融のひとつとして、2009年1月に販売開始をしたユニークな商品が「リフォームローンecoプラン」です。住宅のエコリフォーム資金のローン金利が通常のリフォームローンより0.3%優遇され、さらに融資実行金額の0.3%相当が里山保全活動のために寄付されます。
エコリフォームの対象となるのは、太陽光発電、家庭用ガスのコジェネレーションシステム、燃料電池システム、電気温水器などを設置する場合で、金利の優遇はローンの利用者をサポートするもの。それに対して環境保護活動をサポートするのが、生物多様性保全を後押しする里山保全活動への寄付です。
損保ジャパン・クレジット企画部企画グループ課長の上田展裕さんは、「生物多様性保全を組み込んだ金融商品は前例がないため、環境NPOのエコロジーオンラインに話を持ちかけました。その結果、里山保全活動の応援を目的とする『里山どんぐり募金』が設立され、同基金を通じ、全国で里山保全活動を行う団体を対象に審査の上、ピザ窯を贈呈することとなりました」と、説明します。
雑木林には本来、薪や炭の原木を得る薪炭林としての役割があり、伐採した切り株から芽生え、下草刈り、間伐などの循環によって保たれてきました。しかし、現在では放置や開発により、里山が消滅の危機にあります。里山保全団体にピザ窯を贈呈すれば、野外料理の楽しみが、里山保全活動の参加者を集めたり、雑木林を薪炭林として復活させるきっかけとなるというメリットがあるのです。

Copyright 株式会社損害保険ジャパン
第1回のピザ窯贈呈先は、兵庫県豊岡市で活動をしている「子ども冒険ひろば」。贈呈式に参加した福渡さんは「ここは絶滅したコウノトリを復活させるために官民一体となって保護活動をした地域ということで印象的でした。これからも息長くこういったプロジェクトを続けていきたいですね」と、環境教育へのつながりについても強調しています。
同社では1992年以来、地球環境問題への取り組みの中で、環境教育を最も効果的な方法と位置づけ、「市民のための環境公開講座」や、学生たちが環境NPOで働くインターンシップ制度「損保ジャパンCSOラーニング制度」などを長年継続しています。本業を生かしたCSR金融と幅広い環境教育を結びつけ、今後もさらに持続可能な取り組みが期待されるところです。
※JFS関連記事:「損保ジャパンCSOラーニング制度」今年もはじまる
http://www.japanfs.org/ja/pages/023043.html
(スタッフライター 大野多恵子)
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