ニュースレター

2009年04月21日

 

JFSからAFSをめざして - 中国の環境問題への取り組み Part.2

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JFS ニュースレター No.76(2008年12月号)

JFSは日本の環境への取り組みを世界に発信することで、日本と世界を持続可能な方向に推進したいと活動を続けてきました。ゆくゆくは、JFS(Japan forSustainability)をAFS(Asia for Sustainability)、そしてWFS(World forSustainability)へと進化させていきたいと考えています。

まずはJFSのプラットフォームを通じて、アジアの環境への取り組みや、さまざまな考え方を少しずつ発信していきたいと考えています。前号に続いて、今回はその第2回となります。

2008年10月27日、国務院発展研究センターの社会発展研究部副部長の林家彬(LIN JIABIN)氏に1時間半の面談時間をいただき、中国の温暖化を中心とする環境政策について話をお聞きしました。以下は林先生との対談の後編になります。

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《枝廣》
中国は人口が多いため、一人当たりにすれば、CO2排出量にしても、エネルギー消費量にしても、大変低い値になりますが、一方、北京など先進都市では、先進国と同等またはそれ以上に裕福な生活をしている人たちがたくさんいます。ここ北京でも、とても途上国とは思えない発展ぶりです。大きな中国という途上国の中に、日本と同じくらいの規模の先進国があると考えられるのではないでしょうか。そういう中国では、貧しい途上国の中国に対する施策と、豊かな先進国の中国に対する施策の二本立てでいく必要があるのではないでしょうか?

《林先生》
ええ、そのように認識しています。すでに高いレベルの消費をしている人たちが増えつつあるため、発展途上国でありながら、無駄の多い階層が存在しているのはその通りです。

しかし一方、貧しかったころの習慣が、まだ多々残っており、たとえばレストランへ行っても、多めに注文して残すことが一つの習慣として続いています。私はこれを「貧乏な消費文化」と呼んでいます。消費行動を変えるためには、電気代や水道代などの公共料金について階段状料金システムを導入し、つまり消費量が多い人たちほど多く払う仕組みにすることも考えています。また現在、相続税や不動産税が個人にはかかっていないため、これからそのような税金を導入し、所得の再配分を行うことで、格差の是正を図っていく考えです。

《枝廣》
中国の環境政策にとっての今後の大きな課題は何でしょうか?

《林先生》
今後の課題は、大きく2つあると認識しています。1つは大衆の意識転換をどのように図るかということです。有力な方法の1つは環境教育でしょう。現在でも、学校教育で環境教育を取り入れつつありますが、これからもその促進を図っていく必要があります。うちの子どももそういった環境教育を受けた世代ですが、家でもこまめに電気を消すなど、環境への行動は、明らかに上の世代とは異なるものとなっています。

もう1つは資源価格のメカニズムを改革することです。現在の資源価格は、言ってみれば価格統制によって低く抑えられています。それが無駄の多い使い方につながっていますから、資源の消費量を減らすために、どのように価格メカニズムを変えていくか、ということも重要なポイントです。

《枝廣》
中国の環境NGOはどのような活動を行っているのでしょうか?

《林先生》
中国のNGOは登録制です。所管の官庁に登録をする仕組みですが、所管の官庁は、自分の所管するNGOで問題が出てきたときには責任を取らなくてはなりませんから、政府にとって都合の悪い活動をするNGOは登録されないということになります。

そのような登録NGOの中でも、環境活動に携わっている所は数多くあります。全国的な規模で活動しているのは、「自然之友」「地球村」「北京延慶県緑十字生態文化普及センター(緑十字)」などのNGOです。政府からの資金援助などはありませんから、中国のNGOのほとんどは、外国のNGOや外国の企業からの資金援助で支えられているようです。

「自然之友」は、雲南省で危機に瀕している金糸サル(キンシコウ)の保護を大きくPRする活動で知られています。「地球村」は、環境保護の映画を制作したり普及するなど、環境教育・啓発活動を進めています。また「緑十字」は、中国青年トヨタ環境保護賞という賞をもらってトヨタの支援を得ているようです。

《枝廣》
企業の環境への意識や取り組みはどうでしょうか?

《林先生》
中国でも、立派な企業がCSRの理念を取り入れて取り組みを始めています。アメリカの「世界環境センター」というNGOと中国企業連合会が、今年から環境に取り組む中国国内の模範的企業の表彰を行うことになっているのですが、金賞を受賞する見込みの会社、中国国際コンテナについて紹介しましょう。

90年代から、中国国際コンテナは日本や韓国を抜いて世界第一の規模となりました。この中国国際コンテナの社長は、「低価格競争ではたかが知れている。立派な企業になるには別のところに取り組むべきだ」として、環境技術の開発とさまざまな取り組みを進めています。

たとえばコンテナに使う板も、もともとは熱帯雨林の木材でしたが、これを持続可能な森林や竹を材料にするようにしました。多くの熱帯雨林の伐採を防ぐことになっています。また、全社的な節電キャンペーンを行い、工程改善などで30%も電力消費を減らしました。もちろんこれは企業の収支上もプラスになっています。また、コンテナに塗るペンキも、揮発性物質を含まないペンキを開発して使用しています。

《枝廣》
今後、日本の協力に期待していることは何でしょうか?

《林先生》
中国にとっては、先進国の中でも特に日本の経験から学べることが非常に役に立つと考えています。欧米は150年をかけて工業化の過程を進めてきました。日本はその半分ぐらいの期間で進めてきたと言えるでしょう。そして中国は、さらにその半分ほどの期間で進めつつあります。つまり、ほかの国では何十年かの間に段階的に発生してきた問題が、中国では「圧縮型、複合型」環境問題として出てきているのです。日本は比較的短期間に高度成長しましたから、日本の対応や技術は、中国にとっても参考にする価値があります。

《枝廣》
今後の発展研究センターや先生の研究テーマとしてお考えのことは何でしょうか?

《林先生》
生産サイドの研究はよくやっていると思いますが、消費サイドの研究はまだまだ行われていません。そういった意味で、今後、持続可能な消費など、消費者への取り組みや活動が大事だと思っています。どのようにすれば、「環境に取り組むことはカッコいいことだ」と人々が認識し、行動するようになるかなど、共に研究や活動ができれば、お互いにとって実りあるのではないかと思っています。

(枝廣淳子)

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