ニュースレター

2007年01月01日

 

割り箸を捨てずに活かす、減らす----いのちの循環への回帰

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JFS ニュースレター No.52 (2006年12月号)

私たち日本人は、食事の時に箸を使います。日本で使っている箸の大部分は、木から作られます。世界で箸を使うのは、日本のほか、韓国、北朝鮮、中国、ベトナムなどで、東南アジアでは、めん類を食べるときだけ箸を使うところが多いようです。

日本の食文化に箸はかかせないものですが、ふだん自宅ではだいたい「自分の塗り箸」が決まっていて、食器と同様、洗って使います。しかし、外食やお弁当を買うときにはだいたい、使い捨ての割り箸が添えられ、一度使って、捨てられています。

この日本独自といわれる使い切りの割り箸は、約300-400年前の江戸時代に、蕎麦屋が衛生上優れているとして使い始めたそうです。今では1年間に約250億膳の割り箸が使われており、人口1人あたり1年におよそ200膳を使っている計算になります。

「割り箸は、森林破壊であり、使い捨て文化の象徴だ!」と、日本の割り箸への批判も多い一方で、日本の中でも割り箸をめぐるさまざまな動きが出てきています。ひとつは、割り箸の原材料に着目して、森林を破壊するのではなく、森林を守るために役立つ割り箸を作ろう、という取り組みです。もうひとつは、使い終わった割り箸を捨てないで、紙やパーティクルボードにリサイクルする動きです。

そして最後に、外出の際にも自分の箸を携帯し、外食も割り箸を使わない「マイ箸運動」の広がりです。

国産の間伐材からつくられた割り箸

日本で現在使われている割り箸の約96%は、外国産です。80年代後半から輸入が急増して、国産の割り箸の生産量は激減しました。輸入割り箸のうち、98%が中国、そのほかはインドネシアなどの東南アジアや南米のチリなどからです。

国産の割り箸は、主に丸太から柱を作るときに出る端材を使います。これは、木を「最後まで使い切る」もったいない精神で作られており、廃棄物となる端材を活かす取り組みです。また、日本では、外材に押されて国産材が売れないため、手入れされずに荒れたままの森が増えています。そのため洪水や土砂崩れが以前より多く起こるようになり、山の保水力や国土を守る力が弱まっていることが心配されています。端材以外の割り箸の原料として間伐材を使うことは、日本の山を守ることにつながります。

このような背景から、外食レストランなどでも国産の割り箸を採用するところが出てきました。国産間伐材の割り箸に古くから取り組んでいるのが、大学生協の連合体が呼びかけてつくったNPO「樹恩ネットワーク」です。徳島県の「セルプ箸蔵」と埼玉県の「江南愛の家」という知的障害者施設で地元の間伐材から作った割り箸を、各大学の食堂や生協で使用しているのです。樹恩ネットワークには70近くの大学生協が参加し、2005年は750万膳の間伐材割り箸を使用しました。中国産の割り箸に比べて値段が高くなりますが、それでも、「日本の森を守る」「障害者の仕事をつくる」という趣旨に賛同して、この割り箸を利用する大学生協が増えています。

使用済みの割り箸をリサイクルする

全国の自治体や商店街、商工会議所などで割り箸を回収して、製紙原料としてリサイクルしてくれる製紙工場へ送る取り組みがあちこちに広がっています。讃岐うどんで有名な香川県でも、割りばしリサイクルをすすめようと、子ども割りばしサミットが開催されました。このサミットの「入場料」は、割り箸6本と、ユニークです。

香川県で子ども割りばしサミット開催
http://www.japanfs.org/db/1560-j

日本で初めて1992年に「使用済みの割り箸を紙の原料にする」取り組みを始めたのは王子製紙米子工場です。原料である木材チップに混ぜて、回収したり送られてきた使用済み割り箸を紙の原料として使っています。

きっかけは、92年に、同工場で環境部門を担当していた向井哲朗さんが工場見学にきていた子どもたちに材料の説明をしたときに、ある子から言われた一言でした----「割り箸も木ですよね。」そのことばに、同じ原料からできているのだから、割り箸を紙の原料にできるはずだ、と向井さんは休日に子どもたちと地域で集めた割り箸を工場に持ち込み始めたのです。チップより長い割り箸をどうリサイクルするか、3年間試行錯誤した結果、割り箸専用のクラッシャー(破砕機)を機械メーカーと共同開発し、1995年11月に地域ぐるみでの回収システムが実現しました。

3ヶ月に1度大型バスで持ち込む鳥取県庁など、学校や会社ぐるみで割り箸の回収に取り組んでいるところも増え、現在は月に約10トンを超える割り箸が米子工場に集まります。当初は米子工場のみの受け入れでしたが、全国各地から送ってくれる人がいることから、少しでも送料の負担を減らそうと、各地に割り箸をチップとして使える工場を増やし、現在では、関連会社も入れて11工場で受け入れています。

紙以外へのリサイクルの取り組みもあります。パーティクルボードを生産している小名浜合板(福島県)では、かつては、東南アジアなどから輸入した木を原料としていました。しかし、現在では原料の100%は、家などを取り壊したときに出る木質系廃棄物や廃材から作られた解体チップです。この会社では割り箸も専用のシュレッダーで細かくして原料として利用しています。割り箸チップを原料に混ぜても製品の品質には問題がないことを確かめ、1998年9月から使用済みの割り箸の受け入れを始めました。現在では約25校の大学や市民グループなどから送られてくる割り箸を原料として活用しています。国産間伐材の割り箸を採用している大学生協のなかにも、食堂で返却された割り箸を回収し、ここに送るところがあります。

お金をかけて、安い外国産ではない、国産間伐材の割り箸を使い、手間と配送費を払って、使用済みの割り箸を届ける大学生協や地域・企業や市民のグループ。そして、その割り箸を材料として受け入れ、ふたたび製品として世の中に役立たせる企業。「意義と思い」のリレーがあってこそ、日本の山を守りつつ、「もったいない」をカタチにする取り組みができるのでしょう。

最後に、自分の箸を携帯し、外食の際でも割り箸を使わない「マイ箸運動」をご紹介しましょう。環境にやさしいことを、できることからという取り組みやすさから、外食の際にも自分の箸を使って、割り箸を断る人が少しずつ増えています。

香川県高松市では2005年10月から、飲食店で通常は無料で提供される割り箸ではなく、自分で持参したマイ箸を使うと、「コーヒーおかわり自由」「一品サービス」などの特典が受けられるしくみが始まっています。

マイ箸持参でお得なサービス
http://www.japanfs.org/db/1244-j

もともと箸には神の力が宿っていると考えられており、食べ終わってその効力を失った箸はもう使わないものだったのだ、という説もあります。昔は、捨ててもそのまま土に還っていたかもしれませんが、今はごみになります。焼却にせよ、埋め立てにせよ、地球へ悪影響を与えてしまいます。しかし、捨てずに活かせば、パーティクルボードや紙として、よみがえります。割り箸3膳ではがき1枚、100膳で週刊誌1冊分の紙に、現在日本で使っている年間250億膳の割り箸をすべて紙にすると、1億8000万箱のティッシュボックスになる計算です。

近い将来、中国からの割り箸の輸入ができなくなりそうだという見通しが出てきています。すでに輸入割り箸の値段は大きく上がり始めています。割り箸をやめて、マイ箸を促進すると同時に、割り箸を使うなら、海外の森林を破壊するのではなく、日本の森林を守る国産間伐材の割り箸を使うこと、そして、使い終わったあとは、ゴミを増やさず、少しでも紙の原料である輸入チップを減らすためにも、製紙の原料などとしてリサイクルいくことが大切です。

今年の9月にイギリスから、JFSへ割りばしリサイクル活動について問い合わせがありました。遠く離れた国でも、日本のひとつの文化ともいえる割り箸をめぐる動きが注目されていることを感じます。


(枝廣淳子、二口芳彗子)

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