ニュースレター

2004年03月01日

 

「人と自然と響きあう」 - サントリー

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JFS ニュースレター No.18 (2004年2月号)
シリーズ:持続可能な社会を目指して - 日本企業の挑戦 第9回
日本語 http://www.suntory.co.jp/
英語 http://www.suntory.com/

サントリーの利益三分主義

サントリー株式会社は、1899年に創業した総合酒類・飲料メーカーです。同社の製品には「ウーロン茶」や「南アルプス天然水」といった清涼飲料水のほか、ビール・ワイン、ウィスキー、健康食品などがあります。同社は創業以来その社会・文化活動への熱心さで知られていますが、その根底にあるのは、創業者鳥井信治郎氏が掲げた「利益三分主義」。事業による利益はすべて企業のものではなく、3分の1は社会に還元し、3分の1は顧客へのサービス、そして残りの3分の1を事業拡大への資金にするという信念です。

同社は、この信念に基づき着実に事業を成長させてきました。事業面においては、2002年度にはグループ連結では従業員21,653人で、売上高13,839億円、経常利益は690億円、サントリー単体では従業員数4,625名で、売上高8,160億円、経常利益361億円を上げています。国内販売が8-9割を占めている一方で、中国(上海)ではビールのシェア44%を占めるなど、現在ヨーロッパ、南北アメリカ、アジアでの市場展開も進めています。

環境面においても、同社は製品のほとんどが大麦、ホップ、茶葉、コーヒー豆といった農作物や水などの自然の恵みで成り立っていることを認識し、いち早く取組みを進めてきました。同社の環境に対するコミットメントは、まだ企業の環境への取組みが稀だった1973年から、「Today Birds, Tomorrow Man.(今日、鳥たちの身に起きていることは、明日は人間の問題になる)」のスローガンのもと鳥と保護活動を行ってきたことからもみてとることができます。

今月のニュースレターでは、このような信念をもつサントリーが持続可能な社会に向けて進めている活動を、工場、容器、そして水の保全に焦点をあててご紹介します。


工場から出る副産物・廃棄物を100%再資源化

まず、飲料を生産する工場における取組みです。同社では、省エネ、温暖化ガス削減の活動とともに、副産物・廃棄物の発生量の抑止と再資源化の取組みを進めてきました。2000年についに100%再資源化を達成。2002年の時点では、工場で発生する廃棄物は、1990年と比較して総排出量で30%、原単位で70%減少させ、発生した約13万トン(90年19万トン)の廃棄物をすべて再資源化しています。

廃棄物で最も多いのが、製品の原料である農作物の粕、つまり植物性残さです。これに関しては、麦芽の糖化粕は家畜の飼料として販売し、またウーロン茶やコーヒー豆の粕は有機肥料の原材料として利用します。次に多い排水処理の汚泥は、嫌気性の処理設備で汚泥発生量を抑え、発生したものをすべて有機肥料にします。その肥料を使って作った高原野菜の一部は、サントリーグループ会社のレストランで料理され、お客様へ提供されています。また、この処理の過程で発生するメタンガスは、燃料として活用され、現在では場内使用量の6%を占めるに至っています。

またこのほか、そもそも汚泥が発生しない「工場排水の脱色システム」の導入を進めるなど工夫を重ねています。今後は容器の散乱ゴミも含めて、同社から出るすべての物質が資源として循環する仕組みづくりに挑戦していきます。
http://www.japanfs.org/db/419-j


業界全体のリサイクルシステムを整える

次に、一般の消費者にとっておそらく最も気になる容器はどうでしょうか。同社ではまず、容器を軽量化し、資源使用量の削減や輸送の負荷低減する取組みを進めています。例えば消費数量の多い容器に500mlペットボトルがありますが、2002年には従来の32gから26.5gへと17%の軽量化に成功。これにより、ペットボトル原料が年間で約2,400トン(180Lドラム缶約1万本分)を削減しました。

回収・リサイクルに関しては、効率的なリサイクルシステムの構築に業界全体で取り組んでいます。1997年にガラスびん、ペットボトル、紙製容器など包装容器のリサイクルを義務化する容器包装リサイクル法が施行されてから、容器の回収量・回収率は着実に向上しています。2001年からガラスびん、スチール缶、アルミ缶 の回収率は80%を超え、ペットボトルは、2003年には45%(容リ法で)となっています(2004年の回収率目標は50%)。この率は世界的にも高いものですが、ペットボトルで回収されていない約半分については、そのままお客様が容器をリユーズしている場合もあれば、あるいは散乱ゴミになっていたり、中国などの外国に流れていたりすることが考えられます。同社環境部部長の公文正人氏は、回収したペットボトルを分子構造まで戻してペット樹脂原料をつくりまたボトルにするボトルtoボトル技術に充分な量の回収ペットボトルを供給し仕組みとしてまわしていくためにも、消費者への協力を呼びかけながら、回収率を上げていくことが次なる挑戦だと述べています。
http://www.japanfs.org/db/555-j

同時に、現在約41万台あるサントリーの清涼飲料自動販売機に関しても、より省エネ度の高いエコベンダーへの取替えを進めています。


森を守ることは、水を守ること

それでは最後に、同社の製品の最も欠かすことのできない資源である水はどうでしょうか?同社では「森を守ることは、水を守ること」という考えのもと、涵養林を育てる活動を積極的に行っています。涵養林というのは、水を養い蓄える森林のこと。雨や雪を、木の葉や木の根、また地表の腐葉土でゆっくり地中に染み込ませ、不純物を取り除きミネラルを含んだおいしい水をつくるのです。そこで同社は、水源地周辺の土地を確保し、森林の維持管理、環境調査、再生活動を行なっていますが、実に、保有する工場敷地面積の約2分の1(280万m2)を緑地にしています。

さらに同社では、2003年に竣工した九州熊本工場の水源地である南阿蘇外輪山の国有林約100haを、サントリー「天然水の森」と名づけて、水源涵養機能の高い森林として整備する活動を始めています。森林内には歩道やベンチなどを設置して人々の憩いの場として、また、同社従業員の新入社員教育や子どもの森林体験プログラムの場としても活用していく計画です。
http://www.japanfs.org/db/404-j

しかし公文氏は、森を守る活動は一企業だけでできるものでなく、その土地に住む住民、自治体、他企業との連携が必要であることを指摘します。実際に神奈川県の丹沢の水源地は、多くの他業種とともに、キリン、アサヒ、サントリー各社でも協力しあって整備活動を進めています。今後は、自治体や地域住民ともより密接に協力しあっていくことが必要なのです。

同社では、CO2排出量を2008-2012年平均で1990年比7%の総量削減をするという目標にチャレンジしています。同社では原単位では48%減少(90年比)したものの、食品部門の生産量増大や、出荷数量の伸びのため総排出量の削減はなりませんでした。その目標の実現に向けても、さらなる挑戦は続きます。創業の精神である「利益三分主義」を脈々と受け継ぐ同社は、「目先の利益にとらわれることなく、時間がかかることをコツコツと行なう(公文氏)」でしょう。「人と自然と響きあう」持続可能な社会に向かって。


(スタッフライター 小林一紀)

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