ニュースレター

2003年03月01日

 

雨水利用の取り組み

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JFS ニュースレター No.6 (2003年2月号)

日本では都市化が進んでおり、特に、国土のわずか3.5%の面積である東京圏に人口の約26%が集中しています。

人口が集中すれば、それだけ水の使用量が増えます。東京では約150km離れたダムから水を引いて、水需要を賄っています。

一方、都市化が進むと、道路や建物、駐車場等で、地面がアスファルトやコンクリートで固められ、雨が降っても地下に浸透しなくなります。河川もコンクリート三面張りの「海へ水を流す導管」にすぎなくなっています。

このため、集中豪雨のたびに、下水が逆流したり、中小河川が氾濫するなど、全国で都市型洪水が発生するようになりました。地下街に流れ込んだ水で溺死する人が出るなど、大きな問題となっています。

都市に降る雨はそのまま速やかに海に流し、都市で使う水は遠くのダムから引いてくる。豪雨があると都市型洪水が起こる。日本の多くの都市が、雨を使わない、雨に弱い都市になってしまいました。

たとえば、東京都に年間に降る雨は25億トンといわれます。東京都民が1年間に使う水の量は約20億トン。東京には水道で使われるよりはるかに多い雨が降っているのですが、下水道から直ちに海へ流されています。1994年に渇水で大騒ぎだったときに、東京では土砂降りで洪水が起きていたという笑うに笑えない実話もあります。

また、阪神・淡路大震災などをきっかけに、防災の観点からも「水の確保」は注目されるようになりました。

日本では10年ほど前から、水道水の代替水源、都市型洪水防止、震災等の非常時水源などを目的として、雨水利用を進める動きが広がっています。

平成14年度版の「日本の水資源」によると、全国934の施設で、水洗トイレ用水などとして雨水が利用されています。特に地方自治体で、雨水利用を積極的に進めるところが増えています。

たとえば、高知県庁では、2001年に本庁舎で使わなくなった浄化槽や冷房用の蓄熱槽を雨水貯留槽(330トン)として再利用する工事をしました。屋上に降る雨水と近くの湧水を用いることで、1日40トン使う本館の水洗トイレの水はほぼ90%をまかなえるようになりました。工事に約1500万円かかりましたが、水道料金が減ったため、5年で投資回収できます。

日本の雨水利用を進める自治体のネットワーク、「雨水利用自治体担当者連絡会」には、100を超える自治体が参加しており、雨水タンクに助成する自治体は30を超えています。

雨水利用を進める自治体の先陣を切って進めているのが、東京都墨田区です。http://www.city.sumida.lg.jp/sumida_info/kankyou_hozen/amamizu/index.html

墨田区にある両国国技館は、のべ面積35,700平方メートル、地下2階、地上3階の建造物です。この屋根に降った雨は地下の1,000トンのタンクに貯まり、トイレや冷房用の水の大部分をまかなっています。いざというときには、防災用の飲み水として使うことができます。

このほか、墨田区役所をはじめ、区内では26の公共施設に雨水利用システムが入っています。また、3-10トン規模の地下タンクを埋め、手押しポンプで汲みだして、ふだんは草木の水やりに、非常時には消火用水や飲料水に使える、「路地尊」と呼んでいる地域雨水利用システムがこの地域に9基あります。

墨田区では、また、1995年には「墨田区の雨水利用の施策体系」を策定し、今後墨田区の新しい施設は雨水利用の設定を原則とすることにしました。

また、民間でも「ミニダム」を増やそうと、雨水利用設置への助成金制度を作り、小規模貯留槽を中心に、これまで160件以上に助成しています。

2001年には「雨水利用事業者の会」が発足。雨水利用に取り組む建築士などと連携しながら、良質で安価な雨水利用製品の開発に取り組んでいます。

墨田区は1994年に雨水利用東京国際会議を開催し、その後も国際的な活動も広げています。たとえば、2002年3月には、墨田区は、国連環境計画国際環境技術センターと、「雨水利用を進める全国市民の会」と協働で、雨水利用の政策および技術移転に関するブックレットを作りました。国連機関を通じて世界中に配布されています。
http://www.unep.or.jp/ietc/publications/urban/urbanenv-2/12.asp

2001年には、廃校となった小学校の校舎を利用して、世界初の「雨水資料館」を開設しました。墨田区及び雨水利用事業者の会とともに、この開設の原動力となった「雨水利用を進める全国市民の会」では、「雨水資料館」は情報の拠点の第一歩であり、国際雨水センターをめざして取り組みを強化していきたいと考えています。
http://www.skywater.jp/

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