JFSイベント
| エリザベス・スターチェンさん(エンバロメンタル・ディフェンスのプロジェクト・マネージャー)を囲む会 |
2003年11月18日開催
開催主旨
Environmental Defense は1967年に設立された環境NGOで、30万人以上の会員がいます。ニューヨークを本拠地に気候変動や生態系保護などの分野で、活動的な運動を展開しています。調査研究を政治家や一般の人々への働きかけにつなげていく活動が特徴のひとつです。
このNGOのプロジェクト・マネージャーのエリザベスさんから、来日している機会に「情報・意見交換をしたい」とコンタクトがありました。このため、広くみなさまと情報交換をする機会として以下の場を設け、日本ではあまり知られていないこのNGOの活動や戦略、日本とのコラボレーションの可能性などをお聞きしました。
日 時:11月18日 18:00〜20:30
場 所:環境パートナーシッププラザ会議室(表参道)
主 催:JFS
議事内容
まず、ご招待してくださりました枝廣淳子さんに御礼の言葉を述べたいと思います。こちらがプレゼンテーションの概要です。最初に少し自己紹介をさせていただきたいと思います。次に、エンバイロメンタル・ディフェンスのこれまでの活動を紹介し、私が主導したプロジェクトについてお話ししたいと思います。
なかでも、現在運営しているフェデラル・エクスプレス社とのプロジェクトについて少し詳しくご説明させていただきます。そして、私が日本に二ヶ月滞在した目的を述べる予定です。最後に質疑応答を行いますが、何か疑問がございましたらプレゼンテーションの途中でもどうぞお気軽にご質問ください。
では、まず自己紹介ですが、私はエンバイロメンタル・ディフェンスのプロジェクト・マネージャーです。大学院修了後にエンバイロメンタル・ディフェンスのスタッフになり、6年になります。民間企業に勤めた経験もありますが、自分のキャリアを見つめなおすためハーバードのケネディー・スクールに入学しました。
次にエンバイロメンタル・ディフェンスについてご説明させていただきます。このNPOはDDTの使用禁止運動をきっかけとし、今からおよそ35年前に設立されました。私たちは「科学、経済、法律を結びつけることによって、環境問題に対し、革新的、公正、そしてコスト効率の良い解決方法を提供する環境NPO」です。
これまでの業績としては、酸性雨削減のためのコスト効率の高い取引システムの確立、また、絶滅危惧種の生息地確保を目的とした民間の土地所有者に対する保護奨励策を挙げることができます。
初期に用いられた手法の多くは「訴訟」や「規制」といったものが多く、スローガンは、ちょっと言葉が乱暴で恐縮ですが、「悪いやつらを訴えろ!」でした。しかし、最近は「協力」や「市場的インセンティブ」というものが主流となり、スローガンも「効果的手法の模索」に変わりました。
私の所属部署は、企業とのパートナーシップ・プロジェクトを担当しています。この部署は1994年にエンバイロメンタル・ディフェンスとアメリカの主要財団との共同プロジェクトという形で発足しました。
ここでのミッションは「企業の環境に対する考え方を変える」というものです。私たちは主要企業との提携を通じ、次の三つの目的を達成できるプロジェクトを実現しています。一つは環境に対して利益をもたらすこと、二つ目は企業においてビジネス価値を生み出すこと、そして三つ目は業界全体に変化をもたらすことです。
次に企業パートナーシップモデルについてご説明させていただきます。まず、パートナーシップは意義のある環境利益をもたらされなければなりません。また、コスト削減や競争優位性などを作り出すことにより、パートナー企業の業績を向上させることも重要です。また、より広い視点では、企業文化に変化をもたらすことも大切だと思っています。
さらに、このプロジェクトが成功した場合は、企業の購買力を梃子にサプライチェーンの行動にも変化をもたらします。そして最終的には、本パートナーシップが企業にとって好ましい成果をもたらすものであれば、他の企業の追随を後押しすることにもなるのです。
次に、プロジェクトの特徴について手短にお話ししたいと思いますが、これを通して私の仕事が少しお分かりいただけるかと思います。プロジェクトにおいて重要なのは結果です。環境に対する利益、そして企業の利益双方において明確な結果を生み出すということです。
そのためには提携企業のコミットメントは不可欠ですが、なかでも役員レベルのコミットメントは重要です。また、双方の信頼関係も重要ですので、文書による機密保持協定を結んでいます。さらに次の点はことさら重要ですが、私たちは企業側から資金の提供を一切受けず、自らの費用は全て自己負担しています。これは、この組織の独立性そして信頼性を維持するために不可欠です。
一方で企業側には説明責任を義務付けていますので、プロジェクト結果は全て公表されます。そして最後になりましたが、可能な限り広範に環境に対する利益を生み出すために、プロジェクトで学んだことをより多くの企業に広めていきます。
提携プロジェクトの第一弾は、もう10年以上も前に行われたマクドナルドとのプロジェクトでした。これは、環境団体がプロジェクトという形で企業と直接提携した最初の例でした。マクドナルドはみなさんもご存知の通り、ファーストフード業界のリーダー企業で、いたるところに店舗があります。それゆえ、その莫大な購買力は環境面での取組みに変化を起こす力があるのです。
当時、アメリカの環境団体のなかにはその廃棄物を大量に作り出す事業形態に対して抗議行動を起こすものもいましたが、私たちは直接マクドナルドに働きかけ、協力し、共に変化を模索する道を選択しました。包装の無駄を見直す目的でプロジェクト・チームが結成され、環境に大きな利益をもたらす包装を実現すると同時に、マクドナルド側も大きなコスト削減を達成しました。そのうえPR面でも効果があり、実際に悪化した企業イメージの回復に寄与しました。
マクドナルドのこの成功によりファーストフード業界では簡易包装化の流れが生まれ、他の企業も追随するという動きが生まれたのです。このプロジェクト・モデルが私の仕事の土台となっています。
エンバイロメンタル・ディフェンスの他の提携プロジェクトの例を申し上げますと、まず、シティ・グループと共同でコピー用紙の使用そして環境への負荷削減プロジェクトを行いました。
またUPS(アメリカユナイテッド・パーセル・サービス)とは小包の包装の見直し、またアメリカの某カタログ販売会社とは廃棄されるカタログの削減に取り組み、同時にカタログに使用される紙質をより環境に優しいものに変更しました。
現在関わっているフェデラル・エクスプレスとのプロジェクトはまた後ほど詳しく説明させていただきますが、配送用トラックの開発プロジェクトです。また、スターバックスとはコーヒーカップのゴミの削減に取り組みました。少し遡りますが、マクドナルドの次に着手したプロジェクトはS.C.ジョンソンとの環境配慮型製品の開発プロジェクトでした。同様のプロジェクトはブリストル・マイヤーズ・スクイッブとも行っています。
まず始めに、私が担当したUPSとのプロジェクトについてお話したいと思います。特にその利益、すなわちパートナーシップの成果についてお話いたします。UPSが宅配便用パッケージを改良することで、様々な環境上の利益が生じました。
業界初の再利用可能な封筒の開発、リサイクル原料混合率の増加、漂白紙の使用中止、パッケージの軽量化などがその成果です。これは企業側にもコスト削減、市場占有率の増加、企業ブランドイメージの増加などの利益がもたらしました。
皆様はこのパートナーシップ及びプロジェクトを成功させたものが何であるか、興味を抱かれるのでないでしょうか。まず、明確なプロジェクト目標があることです。また、エンバイロメンタル・ディフェンスとUPS双方から組織横断型のチームを組織したこと、そして革新的解決策を求め、積極的に行動したことです。
エンバイロメンタル・ディフェンス側は環境問題に関する知識を提供し、UPS側は梱包材に関する知識を提供しました。企業側の関与が大変重要でした。また、梱包材業者がプロジェクトに積極的に関与したことも挙げられます。これが、プロジェクトを成功に導いた理由です。
それでは、次に現在私が担当しているフェデックス・エクスプレスとのプロジェクトについてお話させていただきます。エンバイロメンタル・ディフェンスはフェデックスに対し、配送用トラックについて共同で取り組もうと持ちかけました。
このプロジェクトにはエンバイロメンタル・ディフェンスのビジネスパートナーシップにおける専門知識と、大気汚染問題についての専門知識を使用いたしました。このパートナーシップはフェデックスの購買力を梃子にしています。というのは、フェデックスは全米だけで3万台以上の輸送用トラックを保有しているからです。フェデックスは環境配慮型の車両が欲しいといえば、それを実現するだけの力があります。
次にプロジェクトの進展についてお話させていただきます。エンバイロメンタル・ディフェンスとフェデックスは共同でプロジェクト目標を設定し、法的な合意事項を交渉によって取り決めました。その結果、世界最大の総合貨物輸送企業であるフェデックスとパートナーシップを組み、次世代の配送トラックを開発することになりました。このようなトラックです。
では、プロジェクトの目標についてお話します。それは、以下の要素を備えた配送用車両の開発です。まず排出を90%削減し、燃費効率を50%向上させること。その一方で既存車両の機能性は保持、あるいは更に強化すること。そして企業にとって重要なのは、車両の耐用年数全体を通じて、コスト面で優位に立つことです。ここで注意していただきたいのは、この目標がパフォーマンス面での目標であり、特定技術の開発・導入を目標とはしていないということです。
次はプロジェクトの戦略です。第一段階としては2001年1月にパフォーマンスに基づいた購入車両の仕様を作成いたしました。第二段階は、2002年9月に配送用トラックの試作車が納車され、試験走行を行う、というものでした。第三段階では、いわゆる「本格生産前の車両」を20台購入する予定で、2004年前半に実施されます。最終段階は車両の本格的生産開始と、車両の購入です。2005年中に開始したいと考えています。
プロジェクトの実行についてお話させていただきます。全世界から20社以上のメーカーがこの提案に応じました。昨年、2002年9月にトラック製造チーム2チームがディーゼル・ハイブリッド型電気自動車を納車しました。そのなかからイートン・コーポレーション率いるチームが試作車20台の製造業者として選定されました。これらの試作車は2004年に米国の4都市での稼動が予定されています。
朗報だったのは、フェデックスが自社の配送用車両を全米及びカナダで、随時この新開発車両に転換していくと明言したことです。これはこのプロジェクトの成果発表をうけて5月にニューヨーク・タイムズに掲載された記事です。そしてまた、こちらはビジネス・ウィークに掲載された別の記事です。ご興味のある方のために、あちらのテーブルにご用意いたしました。これがトラックの写真です。とてもわくわくしています。
では、プロジェクトがもたらした利益について簡単にお話します。もちろん、きれいな汚染の少ない空気がそのひとつです。また、このトラックは配送用トラックにとどまらず、他のタイプのトラックにも影響力を持つのではないかと考えています。フェデックスは一般の人の目に留まる機会が非常に多い企業ですので、メディアに取り上げられる機会も多いというわけです。ですから、市場を変革するチャンスも多くあり、環境面でのメッセージを伝えることができるのです。
また、特に現ブッシュ政権下では非常に重要なことですが、このプロジェクトは積極的な規制を支援していきます。そして、このプロジェクトは新しい汚染の少ない技術の発展を促進する上での触媒の役目を果たしたと考えています。そしてコストの削減にも寄与する可能性があります……この新配送用車両は一般的な、広く普及している燃料を使用しますので、新しいインフラを整備する必要がありません。ですから市場に変化を作り出すチャンスが更に大きくなります。こちらはもう一枚、トラックの別の写真です。
次は来日の目的についてお話したいと思います。私はニューヨークのジャパン・ソサイエティから公共政策フェローシップをいただきました。このフェローシップは日本に2ヶ月間滞在し研究をするための助成金を支給するというものです。来日は9月19日でしたので、11月21日)には帰国します。
研究の対象は「環境への取組みの変化は日本でどのように生み出されてきたのか」というものです。もちろん研究テーマについて学ぶことが主な目的ではありますが、日本での生活を体験し、帰国後の仕事で活用できるアイデアを得、そして私のアイデアを皆さんと共有することも目的です。
具体的には、私の研究対象は、環境配慮型の行動はどのように生み出され、どういう展開をたどってゆくのか、そして環境と企業の接点は何かということです。さらに環境配慮の点で一歩進んでいる企業がそのような姿勢をとるに至った経緯も研究対象の一つです。また、日本は環境に関するある分野では主導的役割を果たしていますが、そうでない分野もあり、その理由にも興味があります。そして最後に、環境NPOの社会的位置づけについても知りたいと思っています。
これらのテーマを研究すべく、この2ヶ月間、私は環境面で進んだ取り組みを展開している企業、日本を拠点としている環境NPO、ジャーナリスト、研究者、そして政府関係者と意見交換をしてきました。日本滞在中には実に多くのことを学びましたが、その詳細につきましては次の質疑応答という双方向の形で共有したいと思います。ありがとうございました。
※今回のプレゼン資料や参考資料(すべて英語)をご希望の方には、実費でお送りすることができます。JFS事務局へお問い合わせ・お申し込み下さい。
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