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●エコプロダクツ2006同時開催セミナー
あなたの選ぶ「サステナブルな未来」
〜スウェーデン、ブータン、日本のビジョンから〜
2006年12月16日 開催

持続可能性への取り組みで常に世界をリードするスウェーデンと、GDPに代わるGNH(国民総幸福量)の考え方で話題のブータン、そして日本の持続可能性指標に取り組むJFS―それぞれどのようなサステナビリティのビジョンを描いているのでしょうか。そしてその実現に向け、私たちにはどのような「モノサシ」が必要なのでしょうか。

スピーカーにお招きしたのは、スウェーデン大使館科学技術部で環境分野をご担当している田中いずみさん、JICA専門家であり、NPO GNH研究所代表の平山修一さん、JFSに長らくボランティアとしてかかわり、現在持続可能性指標チームのプロジェクトリーダーを務める山野下仁文さんのお三方。それぞれから各国のビジョンや戦略について情報提供いただき、100名近い参加者とともにサステナブルな未来のあり方を考えました。

■日時:2006年12月16日(土) 13:30 〜 15:30
■会場:東京ビッグサイト会議棟6F 610号室
■主催:ジャパン・フォー・サステナビリティ





プレゼンテーション要旨

●環境先進国スウェーデンの持続可能性戦略

田中いずみ氏 (スウェーデン大使館科学技術部 科学技術参事官補)

配布資料(あなたと選ぶ「サステナブルな未来」) (PDF 約6.91MB)

スウェーデンといえば、充実した福祉国家ということに加え、広大な森林、澄んだ空気といった豊かな自然環境をイメージする人が多いのではないでしょうか。実際、自然環境はスウェーデンの文化において、非常に重要な役割を担っています。公有地でも私有地でも、自由に歩き回り、旅をできる権利が「自然を楽しむ権利」によって保護されている国なのです。

持続可能性への取り組みでも先進的なイメージどおり、1998年には早くも「2021年のスウェーデン」という持続可能な国のビジョンが発表されています。これは、農業、家庭、交通システムといった9つの分野ごとに2021年のあるべき姿をビジョンに描いたものです。

その後、2002年には「持続可能な発展に向けた戦略」が発表されました。これは環境のみならず、経済や社会という、いわゆるトリプルボトムラインを包含し、持続可能な発展を戦略的に推進する政府通達で、「持続可能な地域社会の構築」「対等な健康づくりの推進」「人口統計学的な課題の達成」「持続的な成長の促進」という、4つの戦略的な課題を設定しています。

こうした課題の進捗をどのように測っているのでしょうか。2005年の最新版では6つのカテゴリーと12のヘッドライン指標からなる持続可能性指標をつくって進捗を見ています。6つのカテゴリーとは、「健康」「持続可能な生産と消費」「経済発展」「社会の一体性」「環境と気候」「グローバルの発展」です。この分野を測る指標として、たとえば健康なら平均寿命と暴力、環境と気候なら地球温暖化ガスと危険物質という具合です。

指標の選定にあたっては、持続可能発展省が統計局に依頼し、既存のデータを活用すると同時に、NGOを含めた有識者によるレファレンスグループもかかわっています。この指標は、数値目標は設定せずに国全体としてのトレンドを見ようとしている点が特徴ですが、今後2009年までの間に、地方・地域単位の傾向をとらえるべきだとしています。

ただし、昨年10月に新内閣が発足し、この戦略を含め、持続可能性に関連する政策にも変化が現れる可能性が出てきました。環境先進国として、スウェーデンがどのような戦略に出るのか、今後の動向に注目したいところです。




●1人ひとりが幸せを感じられる社会を目指すブータンのGNH

平山修一氏 (NPO GNH研究所 代表幹事

近ごろにわかに脚光を浴びているGNH=Gross National Happiness (国民総幸福量)ですが、初めてこの言葉が使われるようになったのは1976年。インドを外遊していたブータン国王が、地元の新聞記者に聞かれて答えたのが最初だとされています。

ヒマラヤ山中に位置するブータンは、国土の72%は森に覆われ、一見すると自然が豊かに見えますが、岩盤の上に薄い地表層があるだけの土地で、草木の根っこは浅く、一度壊れたらなかなか回復できない環境のため、開発には不向きです。そこで、開発を急ぎすぎず、まずは身近な「衣医食職住」(衣食住と、十分な医療、満足できる仕事)の充足をいちばんに考え、物質的な豊かさより精神的な豊かさを目指そうという考え方がGNHの背景にあります。

では具体的に、GNH とはどういうことでしょうか。個人の幸せだけを指しているのではありません。大切なのは、「個人が幸せを感じることができる環境づくり」だといいます。個人が幸福を感じるために必要なものは、安全、安心、安定という社会基盤の整備です。これが整ってはじめて、他者との関係や文化、コミュニティについて考える余裕が生まれるのではないでしょうか。

幸福という相対的なものの定量化・一般化は大変難しいことですが、ブータン総合研究所とUNDP(国連開発計画)は共同で、今年3月までを目標にGNHの数値化に関する研究・開発を進めています。「経済成長と開発」「環境保全と持続可能な発展」「文化遺産の保全とその振興」「グッドガバナンス」という4つの考え方を基本に、GNHを測る指標としては、「文化多様性」「精神衛生」「時間の使い方」など9つの項目があがっています。

ただし、数値目標を掲げても、1つの数値がよくなったら、別の数値が悪くなるということもよくあります。ブータンでも、作物の輸送のために道路を整備したことで、村の若者が街に流れやすくなり、首都には夢や生きる意味を失って自暴自棄になる若者が増えた、という例がありました。指標や数値目標は適宜見直していくことが必要です。そうしたとき、常に立ち返るべき基本的な考え方、哲学として、GNHがブータンの未来に果たす役割は今後ますます大きくなりそうです。




●2050年の持続可能な日本を描く、JFS持続可能性指標

山野下仁文氏(JFS持続可能性指標プロジェクト・第2期プロジェクトリーダー)

配布資料(第一セッション(PDF 約732KB) 、 第二セッション(PDF 約196KB))

日本でも各省庁が国単位の長期ビジョンを発表しています。最近では例えば、「日本21世紀ビジョン」(経済財政諮問会議、2005年)、「2030年の日本のあり方」(国土交通省、2005年)、「環境と経済の好循環ビジョン」(環境省、2004年)などがありますが、こうした長期ビジョンには、ほんとうに私たちが望む持続可能な未来が描かれているでしょうか。あるいは、持続可能性にかかわる要件をすべて満たしているでしょうか。市民の声はどこまで反映されているでしょうか。スウェーデンでは政府が、ブータンでは国王が持続可能性への取り組みを主導していますが、あいにく日本にはそうした包括的な国単位の取り組みが見当たりません。そこで、市民で取り組んだのがJFS持続可能性指標です。

JFSでは持続可能性を「人類が他の生命をも含めた多様性を尊重しながら、地球環境の容量の中で、いのち、自然、くらし、文化を次の世代に受け渡し、よりよい社会の建設に意志を持ってつながり、地域間・世代間をまたがる最大多数の最大幸福を希求すること」と定義し、2050年の日本が持続可能な社会をある程度まで実現している姿をビジョンとして描いています。

例えば、地球温暖化・資源の持続性という側面でいえば、温室効果ガスは1人あたり80%減少、食糧やエネルギーは完全に自給できており、ものづくりにおけるエネルギー効率の向上、資源・エネルギーの消費量の低減が進み、廃棄物は一人あたり現状の3分の1程度に削減できている社会を「あるべき姿」としています。

こうしたビジョンを元に、さまざまな取り組みが持続可能性に向かっているかを目に見える形で示し、自分たちを含め人々に気づきをもたらすきっかけにしようと、持続可能性指標をつくりました。環境、経済、社会に、個人の生活の豊かさ・質を加えた4つの軸と、環境・容量、時間的公平性、空間的公平性、多様性、意思とつながりという5つの基本概念を組み合わせ、それぞれに1つずつ、合計20のヘッドライン指標を選定しています。

2005年時点では、1990年比で持続可能性が19%後退したという試算を出しました。現在は、各指標間のつながりを描き、ビジョンと指標の間にぶれがないか、補完するサブ指標の検討も合わせ、精度を深めているところです。こうした中から、持続可能性を目指す上で何がもっとも重要な要素かを浮かび上がらせることができるのはないかと思っています。

今後はさらに、この指標を多くの方とのコミュニケーションツールとして活用し、国や地域の持続可能性へ向けた取り組みを進める推進力としていく予定です。





スピーカープロフィール(登場順)

田中いずみ氏(スウェーデン大使館科学技術部 科学技術参事官補<環境分野担当>)
カリフォルニア大学バークレー校にて環境科学・政策・マネージメントを専攻。卒業後、日本でメーカーの研究所に就職し、環境技術の研究に携わる。現在はスウェーデン・エネルギー庁、環境保護庁、イノベーション・システム庁などと協働で、持続可能性・環境分野における日本の政策動向の分析および日本−スウェーデンの学術交流に努める。

平山修一氏(NPO GNH研究所 代表幹事
早稲田大学大学院アジア・太平洋研究科修士課程修了(国際関係学)。一級建築士、一級土木施工管理技師。1993〜95年に青年海外協力隊として、2002〜04年にはシニア隊員としてブータンに赴任。ブータン王国にゆかりや縁のある仲間と共にGNH研究所を立ち上げ、代表幹事を務める。著書『現代ブータンを知るための60章』(明石書店)。

山野下仁文氏(JFS持続可能性指標プロジェクト・第2期プロジェクトリーダー)
名古屋大学農学部林学科卒。英国サセックス大学文化・開発・環境研究所環境・開発・政策コース修了。環境関連のコンサルティング会社の研究員として、廃棄物処理、散乱ごみ問題、オゾン層保護、国際環境協力、森林保護などの調査・研究に携わる。JFSでは英訳チームとして、国内の環境情報の英訳に長年ボランティアとしてかかわる。

司会進行:多田博之(JFS共同代表)
JFSでは「指標プロジェクト」「ダイワJFS・青少年サステナビリティ・カレッジ」を担当。企業では新規ビジネスの立ち上げ、マーケティングに携わった後、環境に関する戦略立案、環境コミュニケーション、環境報告書の作成等を担当。環境省「企業の環境コミュニケーションが循環社会システムつくりに与える影響に関する検討会」など委員多数を歴任。著書『よくわかる環境会計』(中央経済社)。大阪大学サステナビリティ・サイエンス研究機構特任助教授。



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